第4章 報われない恋と幽霊騒ぎ
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なんだ、この状況は。
ここに至る経緯を必死に思い出そうとして、しかし頭と腹部に感じる痛みにずるずるとしゃがみ込む。
この、身に覚えのある鈍痛は。
「あの、こんなこと初対面で頼むのもどうかと思うんですが、私手持ちがなくて」
船の中にもホテルの部屋の中にも、今必要とするものはない。しかもお金も持っていない。
「な、なんだテメー!なんでアタシのホロウが効かねえ!?」
緩いウェーブのかかったピンク色の髪は、腰のあたりまでと長い。黒を基調としたゴシックロリータのワンピースに、とても映える。
「ま、まさかオマエも元からネガティヴのクチか…?」
その表情からは困惑しか見えなくて、きっと悪い子ではない、と思いながらなんとか言葉を発する。
「鷹の目のお連れ様、どうか生理用品を貸してもらえませんか」
名も知らぬ人にこんなことを頼むことになるなんて、いったい誰を恨めばいいのか。
私の言葉が届いたのか、女の子はぐっと黙り込んだ。
「……そこ、オマエの部屋か」
「あ、うん、2人部屋で」
開けろというのでゆっくり立ち上がってカードキーを差し込み、ドアを開ける。
「2人部屋って、もしかしてコイツと2人部屋か!?……こ、恋人なのか?」
「い、いやそういう訳では。部下、かな……」
女の子は話しながら、今しがたコイツと言い放った大男──クロコダイルを部屋に放り込む。
「待て待て。恋人でもない男女が2人部屋?そっちのが問題じゃねえか?」
続いて大きな剣を背負った男──鷹の目のミホークを、これまた部屋に乱暴に引きずり込む。2人ともされるがままどんよりとした顔をしていて、武器を取る気配もない。
「こんなところでやり合おうとするのがいけねえんだからな!」
部屋に向かって女の子が言うと、中からは2人の謝罪の言葉が聞こえてきて耳を疑った。
あのクロコダイルが、謝罪とは。この子はいったい何者なのだろう。
気が済んだのか、彼女はこの部屋のカードキーを彼らに向かって投げつけると、行くぞと私の手をとった。
◇
歩きながら、今度こそこうなった経緯をなんとか整理すると。
このロトンヌ区でおそらく一番有名であろうホテルにやってきてひと部屋確保し、言われるがままクロコダイルに着いてきて。
部屋の前に着いた時、3つ隣の扉から先ほどのピンクの髪の女の子が出てきて。
こちらを、恐らくクロコダイルを見て、彼女はゲッと声を上げて、その声に、部屋の中からなんだと顔を出したのが鷹の目で。
ここからは何が起こったのかよく分からなかったが、とにかく言えることは、鷹の目とクロコダイルは戦おうとしたけれど、今私の手を引いているこの子がそれを止めた、ということだ。
「さっき出てきた部屋は、鷹の目の部屋?」
「そうだ。アタシの部屋は1つ下の階」
エレベーターを待つ間に簡単に自己紹介を済ませる。
「アタシはペローナ。……王下七武海モリア様の部下、だけど、今は鷹の目のとこに居候してる」
エレベーターの中で、彼女はそう教えてくれた。
モリアといえば、頂上戦争で戦死したと報道されていたはずだ。ペローナの横顔は少し険しくて、ほんの少し寂しそうで、それ以上聞くのはやめておくことにした。
彼女の部屋に招き入れられ、ついでにスッキリしちまえとシャワールームに押し込まれて。諸々を終わらせて戻ると、ペローナは暖かい紅茶を入れてくれていた。
「ありがとう。初対面なのにこんな、色々」
「構わねえよ。ほら、薬も」
「え、」
「遠慮すんな。フロントでもらったやつだ」
ペローナは口は悪いがかなり人が良いようで、すぐに打ち解けることができた。