第2章 動き出す
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異常に、恥ずかしかった。これでは告白しているようなものじゃあないか。
なんとかしてこの話は終わらせなければと、家業の話に無理やり戻した。
「にしては、煙草は吸わねェんだな」
ああ、よかった。煙草の話に戻ってくれた。
珈琲を飲み終えてマグカップをテーブルに置いたクロコダイルは、私が珈琲と一緒に持ってきた新聞を広げた。
「そうですね。シガーショップを継ぐってなった時と、新しいのを入荷する時なんかは確認のために吸いましたけど……普段はほとんど吸いません。お誘いがあれば、程度です」
吸いたいと思うものはそれなりに値が張り、1日に何本も吸えるような量を買えるほどの余裕もなかった。
安価なものはそれ相応の味で、吸いたいとも思わなかったし。下手に色々吸った分、舌は肥えてしまったと思う。
にしても、今更急にどうしたのだろう。こんな話、今までだっていくらでもするタイミングはあったのに。
「なぜ急に?ってカオだな」
「っ……はい」
時折こうして、考えていることを見透かされるのにはまだ慣れない。いや、私が、顔に出すぎなのかもしれないけど。
「昨日言ったろう。お前にも働いてもらうと」
そういえば、寝る時に、言われたような。腕枕をされたことに気を取られ過ぎて記憶が曖昧だ。
「働かざるものなんとやら、だ。ウォーターセブンまではせいぜい稼いでもらうぞ。ビジネスでな」
アラバスタでの件を新聞で見た時から海賊らしからぬ人だとは思っていたが、それは今も変わっていないらしい。
「ビジネス……具体的には、何を?」
「まだお前の話を聞いて思いついただけだが……オリジナルブレンドの煙草を作って売るってのはどうだ?」
「オリジナル……」
なにそれ、面白そう。
それが第一印象だった。
今まで考えたこともなかった。仕入れて売る、それがお店の役割だと思っていた。
「興味あり、だな。次の島で詳細を詰めるとしよう」
にやりと、クロコダイルが笑った。今まで見たことがない表情。悪巧みをする、海賊の顔。
鼓動がいつもより早いのは、新しいビジネスへの興味から来る高揚感が原因だと、この時はまだ本気でそう思っていた。