第1章 特効薬
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甲板に出ると、潮風が肌に刺さるように感じた。夕日の気配が少し残る空を見上げていたかったが、ずんずん進むクロコダイルに必死について行く。
船長室に戻ると、すでにダズがいて、テーブルに広がっていた海図などを片付けていた。
「手伝いますね」
と、ごく自然に手を出そうとして、
「テメェは座ってろ」
怒気をはらんだクロコダイルの声に、肩が震える。
「は、はい……」
けれど、正直ありがたかった。
頭痛もめまいも、時間が経つごとにジワジワと酷くなっている気がする。こんなことは初めてで、それに痛みの質もこれまで経験したことがなく、一体どうしたものかと首をひねる。
そして何やら機嫌の悪いクロコダイルにも、少しばかり疑問だ。
何か、自覚していないところでやらかしてしまっただろうか。今日一日を振り返って見るが、思い当たる節はない。
もう少し考えたいが、痛みで思考回路がうまく回っていない気がして諦めた。
ほどなくしてロッシュが夕食を運んできて、思わず腰を浮かせる。
「バカかテメェは?座ってろっつってんだろ。まっ白い顔しやがって」
向かいのソファから、苛立ちを隠そうともしないクロコダイル。
でも、そうか、とその苛立ちの原因に思い当たる。
「すみません。ありがとうございます」
ほ、と息を吐いた。
やっぱり私が原因だったようだ。体調が良くないことをあっけなく見抜かれていて、しかも気遣ってくれているようで少し驚く。
「確かに顔色が悪いな。医者の見習いが1人いるから食後に呼んでこよう」
ダズが言いながら、テーブルに食事を並べていく。終わるとロッシュはキッチンへ戻っていき、3人で一緒に食べ始める。
3人で食事するのはたった1日ぶりのはずなのに、かなり久しぶりのような気がした。それくらい、ギュッと詰まった二日間だった。
頭痛に耐えながらも、なんとかいつもの半分は食べられたのは、きっと慣れた2人と一緒だったから。
食後に頭痛に効くという薬をもらい、いつもより早めにソファに横になった。
早く治ってくれないと、読書もままならない。ともかく今はゆっくり眠ることにしようと、目を閉じた。