ss/SW
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ハヤテ、ほら行くよ~」
井戸で寝起きの顔を洗っていると、玄関先からそんな声が聞こえて来た。
家政婦さんだなとすぐにわかって、顔を拭きながらそっと覗き込むと。
すごく嫌そうな顔のハヤテを、じりじりと壁際に追い込む家政婦さんがいた。
「何してるの?」
「はっ……理一さん。ハヤテを病院に連れて行かねばならないんですが」
「ああ、嫌がられて逃げられてるわけか」
「はい」
人も犬も、病院は嫌いらしい。普段はあんなに家政婦さんに懐いているハヤテがあんな顔をするなんて、よほど嫌な思い出でもあるのだろうか。
あまり頻繁に実家に帰ってくるわけではないので、そこのところはよく知らない。そしてよく知らない事が少しだけ申し訳ない。
「おいで~!」
家政婦さんが呼ぶも、完全に警戒されている。
その手にハヤテの好きなおもちゃが握られているが、全く効果を発揮できていないようだ。
「貸して」
おもちゃを受け取ると、さあ遊ぶぞ!とハヤテに笑いかける。
「投げるぞハヤテ!」
僕が病院に連れて行った事はないし、ハヤテはどうやら遊ぶのだと思ってくれたようで。一旦庭の方へ軽くおもちゃを投げてやれば、猛スピードで取ってきて嬉しそうに足元に戻ってきた。
「よーしよし。ハヤテ、もう一回だ!」
再度、おもちゃを咥えて戻ってきたハヤテを、軽々と抱き上げた。
「はいっ、捕獲!」
「こっちにお願いしますっ」
すかさず家政婦さんが、病院に行くときくらいしか使わない犬用キャリーバッグの口を広げて持ってきた。
テンションが急落したハヤテが、為すがままその中で伏せる。
「はは、ごめんなハヤテ」
恨めしそうに見上げてくる視線に笑顔で返せば、そっぽを向かれてしまった。
ああ、ちょっと嫌われちゃったかな。たまにしか会わない遊んでくれる人、から、格下げになったかもしれない。
「ありがとうございます。理一さん」
「どういたしまして」
でもまぁ、家政婦さんの笑顔が見れたから良しとしよう。
ほんわりと柔らかいその笑顔に癒されるなんて言ったら、おっさん扱いされるだろうか。それとも、少しは意識してくれるだろうか。
着替えてきます!と小走りで去っていった家政婦さんを見送ってから、どう思う?とハヤテに聞いてみたけれど。
返ってきたのは、鼻息だけだった。
(り、理一さんのちょっと無邪気な笑顔……)
(家政婦さん、照れた困り顔もよかったけど笑顔可愛いな)
20171227
移転前最後の拍手お礼文。