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会えない時間が愛を育む、なんて言うけれど。
「寂しいものは寂しいやん」
「そやなー。よしよし」
大好きな友達が慰めてくれても、埋まり切らないその寂しさ。
「言うてみたら良いのに。寂しいーって」
「いや、迷惑かけたないし」
「でも結構歳上やろー?嬉しいと思うけどなぁ」
アスターはええ子やなぁー、なんて、また撫でられる。
良い子、なんかじゃない。勇気がないだけだ。
学食の日替わり定食を食べ終え、私の次の講義は2時間後なので暇になる。
「何して暇潰そう…」
「彼氏に電話してみたらええやん。今日休みって言ってなかった?」
「でも、疲れてるやろし……」
「あほ。あんまウジウジしてたら他の誰かに持ってかれるで」
じゃあ私はすぐ講義あるから、と、トレーを持って立ち上がる彼女を見送って。
うう、と唸り声をあげた。
今の生活に不満なんてない。月に一度は会いに来てくれるし泊まって行ってくれる。
私もなけなしのバイト代を使ってふた月に一度は会いに行く。
だけど、どうしても、寂しい。
好きになって、時たまメールしたりするのがすごく幸せで。
好き同士だと分かって、少しでも会える時間がすごくすごく幸せで。
なのに、もっともっと、と欲張りになるのが怖い。
「はあ……」
盛大にため息をついた直後、タイミングよく握りしめていた携帯電話が震えた。
「あ、わ、りい、ちさん」
相手はお付き合いしている理一さんで、しかもメールではなく電話で。慌てて通話ボタンを押す。
「も、もしもし」
「あ、アスターちゃん?今平気?」
「はい、平気です」
理一さんの予定と同じように私の授業の予定も共有しているから、きっと見てかけてくれたのだろう。そういう小さな優しさが嬉しい。
「暇かなーと思って電話してみた」
びっくりした?なんて、いたずらっぽく言うものだから、さっきまで沈んでいた気持ちは一瞬で浮上する。
なんてことない雑談や、教授の失敗談なんかを話したり。
それだけで本当に、幸せなんだけれど。
「アスターちゃん?」
急に押し黙った私に、心配そうな声。
違う、心配かけたいわけじゃないのに。
浮上したはずの気持ちが、今度は一瞬で降下する。
「なんかなぁ、友達に、あんまウジウジしてたら彼氏他の誰かに取られるでーとか、言われて」
はは、と、とてもうまいとは言えない乾いた笑い声が出た。
どうしようもなく寂しい。
会いたい。
言いたい。
言ってしまいたい。
でも言えば余計に辛い。
距離が憎い。
本当は電話の声を聞くのも嫌だ。
切った後、会いたくなってしまうから。
「ッ……」
「ねぇ。アスターちゃん」
理一さんが、ことさらゆっくりと私の名前を呼んだ。
滲みかけた涙をなんとか堪えて、ん?と返事をする。
「あの、さ」
最近電話でよく、こう言い澱むのを聞く。
けれど続きを聞いたことはなくて、やっぱりなんでもないとか、また今度にするとか、はぐらかされてきた。
好きも可愛いも照れることなくさらりと言う人なのに珍しいなと、可愛いなと思う気持ちと、何か嫌な知らせかなと、不安な気持ちがないまぜで。余計に、寂しいのだ。
けれど、続いた言葉は予想外、だった。
「あのね……そろそろ、こっち来ない?」
「ん……ん?」
「大学院卒業したら、こっちで就職、しなよ。一人暮らししたいって言ってたでしょ。ほら、こっち来るなら家賃浮くし」
どう?と、少し早口でそこまで言って。理一さんは、黙りこんだ。
そんな、そんなの。同棲、だなんて、嬉しくないわけがない。
「ゴメン、やっぱり早まったかな……」
「行く」
「え、」
「絶対行くから」
「う、うん」
「取り消しても遅いで」
「うん、待ってる」
何度も言いかけては辞めたその言葉にどんな葛藤があったのか、私には知る由もない。でも、ちゃんと全部知りたい。
不安はもちろん、あるけれど。
「あ、あと、今週末行ってもいい?」
「え、でも、この前来たばっか…」
「会いたいから」
「ッ……ええ、よ」
一言二言交わして、久しぶりに、悲しい気持ちにならずに電話を切る。
なんだかすごい約束をしてしまった気がする。
どうしよう。
とりあえず、お母さんに報告?
今夜話してみようと考えながら、荷物をまとめて席を立った。
20171125
遠距離恋愛、でした。どうやって知り合ったのか、気になりますね。まぁ聞いたところで、「ちょっと言えないところ」で知り合ったと返されるのでしょう…
スペシャルサンクス!
みずた様。元ネタ提供ありがとうございます。