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ちょっと風邪っぽいかも、と、帰る前にメールを入れておいたことは確かだけれど。
メールしてから約1時間後、仕事から帰り着くと、今日休みだった理一さんは甲斐甲斐しく私の看病をする準備を完璧に整えていた。
「そこまでしなくても……」
「ダーメ。風邪は引きはじめが肝心。ばあちゃんも言ってたし」
おばあちゃんの知恵袋は時折話題に上ることがあったが、今回は格別に過保護な方向に発揮されている。
そんなわけで私は帰って早々着替えて布団に寝かされ、氷枕まであてがわれていた。
「今おじや作ってるから。一応体温測っておこうか」
体温計を有無を言わせず受け取らされた。いつも以上に押しが強いので、なにも言わずに脇に挟む。
しばらくしてアラームがなり体温計を見ると、小さなディスプレイには『37.6°』の文字。
確認したちょうどその時、理一さんが部屋に戻って来た。
「なんど?」
「ななてんろく~微熱あった…」
「はーい、諦めて大人しく看病されてくださーい」
少しおどけた言い回しに、はぁーいと間延びした返事をする。
ちょっと恥ずかしいけれど、思う存分甘えさせてもらおう。
……と思ったものの、恥ずかしすぎて逆に熱が上がりそうで、おじやを理一さんに食べさせてもらうのは一口で心折れた。
「あ、あとは自分で食べます…!」
「そう?遠慮しなくていいのに」
ただでさえ微熱のせいでぼんやりした中で、理一さんのあーんの声にすらどきどきしてしまうなんて、末期にもほどがある。
対して理一さんは、私の反応を見て心配はしながらもどこか楽しそうだ。
「理一さん、楽しんでます?」
「うん。でも、楽しいというよりは嬉しいんだ」
自分以外を看病するのなんて何年ぶりだろう。と、ほんの少し、寂しさの混じる笑顔で呟くように言う。
寂しがり屋のくせして、普段は微塵もそんな気配は見せないのに、珍しい。
受け取ったスプーンでおじやを口に運びながら、今日は色々とワガママを言ってみようかな、と言う気になった。
(理一さん、添い寝して、頭撫でて)
(ふふ、喜んで)
20170930
看病されたかっただけ。