ss/OP
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
我が家にクロコダイルがやってきて一週間が経った。死に物狂いで定時で上がり、弁当を2人分買って帰る日々だった。
キングサイズのベッドが今日ようやく届き、引き取りをお願いしたシングルベッドは解体され運び出された後だ。
「さ、さすがにデカイ……」
いや、そりゃあ覚悟はしてましたけどね。ワンルームにキングサイズベッドはなんというか、思っていたより倍ほど大きく感じる。
とはいえ、満足げに寝そべるクロコダイルを目の前にしてはそんな些細なことはどうでもよかった。
「お気に召しましたか、サー」
「あー、悪くねェ」
むくりと起き上がったクロコダイルが軽く伸びをする。
それだけで私は胸がいっぱいだ。私が買ったシャツとチノパンを身に纏ったクロコダイルが伸びをしている…それだけで。
一週間で、クロコダイルはずいぶんこの世界に慣れた。最初の二日間くらいは私のことをかなり警戒していたようだけれど、もうその警戒を表に出してくることはない。信頼されているかどうかは分からないものの、生活するのにギスギスすることはなくなった。
だから、その数日後、突然クロコダイルに手を引かれてベランダに連れ出されたと思ったらそこがよく晴れた海の上だった時には大変驚いたし、驚きすぎてマジで気を失った。
つまりどういうことかというと。
「……ここは、ワンピースの世界?」
「まァ、そういう事になるな」
クロコダイルの隣で怪訝そうにこちらをじっと見てくるダズ・ボーネス氏の視線を感じつつ頭を抱える。
なんで、どうしてこうなった。
ええと。
仕事が終わって帰宅した途端、腕を引っ掴まれてベランダに引っ張り出された、だけのはずが。そこは船の甲板で。照りつける太陽を見上げた瞬間眩暈がしてそのまま記憶がない。
「クハハ……観念しろ、小娘」
「し、しんじゃう……」
こんな、悪魔の実の能力者やら覇気使いやら銃火器を持った兵士なんかがそこらにゴロゴロいる世界で生き残れる気がしない。全く、しない。
だというのに私を引っ張り込んだ張本人であるクロコダイルはとても上機嫌で、くつくつと笑って葉巻に火をつけた。
「死にたくなきゃあ、おれのそばにいるんだな……」
「え、」
勢いよくクロコダイルの方を見ると、間髪入れずに彼が吐き出した煙がぶわりと私を包み込む。それをもろに吸い込んでしまい、盛大に咳き込んだ。
「けふっけむた……」
「ンあ……久々の煙はうめェな」
さっきの、言葉を反芻する。
死にたくなきゃあ、おれのそばにいるんだな。って、それはつまり。
「……そばにいれば守ってくれるって事ですか?」
「さァな……」
「ぇえっ!ねえ、そう言いましたよね!?!?ねえダズ!??」
助けを求めてダズを見上げるも、無言で視線をそらされてしまう。おれに聞くな、と言わんばかりに。
ようやく少し気持ちと思考回路が落ち着いてきた。そう、これはトリップなのだ。逆ハー鰐落ち夢とかだととても嬉しい。強欲か。
「はー…とりあえず…もう仕事しなくていいのか…やったあ」
「働かねェ奴に出す飯はねえぞ」
「え?そんなの、サーがくれるお仕事なら喜んでやりますとも」
社会人になってからそうとう体力は落ちているので、肉体労働は少し堪えるかも知れないが。
「ククッ……なら、死ぬほどこき使ってやろう」
「や、そこは死なない程度におねがいします……」
相変わらず、機嫌の良さそうなクロコダイルに少しばかり不安を覚えていたら。またもや腕を強く引かれて、気づいたら彼の顔が目の前にあった。
葉巻は吸い終わったのか、もう持っていない。芳ばしい葉巻の香りと、彼の香水らしきスパイシーな香りが混ざり合い鼻腔をくすぐる。
気づけばダズは部屋からいなくなっていた。
呆気にとられている私の額に、ほんの少しクロコダイルの唇が触れた。
あの狭いアパートの中ではこんなこと、するような気配全くなかったのに。
なんで。急に。
爆音で脈打つ心臓が痛い。
聞きたいのに、声が出ない。
だから、聞いてなんてやらない。
言わせてみたい。
そんな、ささやかな野望を胸に。
私は過去を捨て、海に出た。
20190608
続かないといいつつ続きました。
もう続きません。たぶん。
キングサイズのベッドが今日ようやく届き、引き取りをお願いしたシングルベッドは解体され運び出された後だ。
「さ、さすがにデカイ……」
いや、そりゃあ覚悟はしてましたけどね。ワンルームにキングサイズベッドはなんというか、思っていたより倍ほど大きく感じる。
とはいえ、満足げに寝そべるクロコダイルを目の前にしてはそんな些細なことはどうでもよかった。
「お気に召しましたか、サー」
「あー、悪くねェ」
むくりと起き上がったクロコダイルが軽く伸びをする。
それだけで私は胸がいっぱいだ。私が買ったシャツとチノパンを身に纏ったクロコダイルが伸びをしている…それだけで。
一週間で、クロコダイルはずいぶんこの世界に慣れた。最初の二日間くらいは私のことをかなり警戒していたようだけれど、もうその警戒を表に出してくることはない。信頼されているかどうかは分からないものの、生活するのにギスギスすることはなくなった。
だから、その数日後、突然クロコダイルに手を引かれてベランダに連れ出されたと思ったらそこがよく晴れた海の上だった時には大変驚いたし、驚きすぎてマジで気を失った。
つまりどういうことかというと。
「……ここは、ワンピースの世界?」
「まァ、そういう事になるな」
クロコダイルの隣で怪訝そうにこちらをじっと見てくるダズ・ボーネス氏の視線を感じつつ頭を抱える。
なんで、どうしてこうなった。
ええと。
仕事が終わって帰宅した途端、腕を引っ掴まれてベランダに引っ張り出された、だけのはずが。そこは船の甲板で。照りつける太陽を見上げた瞬間眩暈がしてそのまま記憶がない。
「クハハ……観念しろ、小娘」
「し、しんじゃう……」
こんな、悪魔の実の能力者やら覇気使いやら銃火器を持った兵士なんかがそこらにゴロゴロいる世界で生き残れる気がしない。全く、しない。
だというのに私を引っ張り込んだ張本人であるクロコダイルはとても上機嫌で、くつくつと笑って葉巻に火をつけた。
「死にたくなきゃあ、おれのそばにいるんだな……」
「え、」
勢いよくクロコダイルの方を見ると、間髪入れずに彼が吐き出した煙がぶわりと私を包み込む。それをもろに吸い込んでしまい、盛大に咳き込んだ。
「けふっけむた……」
「ンあ……久々の煙はうめェな」
さっきの、言葉を反芻する。
死にたくなきゃあ、おれのそばにいるんだな。って、それはつまり。
「……そばにいれば守ってくれるって事ですか?」
「さァな……」
「ぇえっ!ねえ、そう言いましたよね!?!?ねえダズ!??」
助けを求めてダズを見上げるも、無言で視線をそらされてしまう。おれに聞くな、と言わんばかりに。
ようやく少し気持ちと思考回路が落ち着いてきた。そう、これはトリップなのだ。逆ハー鰐落ち夢とかだととても嬉しい。強欲か。
「はー…とりあえず…もう仕事しなくていいのか…やったあ」
「働かねェ奴に出す飯はねえぞ」
「え?そんなの、サーがくれるお仕事なら喜んでやりますとも」
社会人になってからそうとう体力は落ちているので、肉体労働は少し堪えるかも知れないが。
「ククッ……なら、死ぬほどこき使ってやろう」
「や、そこは死なない程度におねがいします……」
相変わらず、機嫌の良さそうなクロコダイルに少しばかり不安を覚えていたら。またもや腕を強く引かれて、気づいたら彼の顔が目の前にあった。
葉巻は吸い終わったのか、もう持っていない。芳ばしい葉巻の香りと、彼の香水らしきスパイシーな香りが混ざり合い鼻腔をくすぐる。
気づけばダズは部屋からいなくなっていた。
呆気にとられている私の額に、ほんの少しクロコダイルの唇が触れた。
あの狭いアパートの中ではこんなこと、するような気配全くなかったのに。
なんで。急に。
爆音で脈打つ心臓が痛い。
聞きたいのに、声が出ない。
だから、聞いてなんてやらない。
言わせてみたい。
そんな、ささやかな野望を胸に。
私は過去を捨て、海に出た。
20190608
続かないといいつつ続きました。
もう続きません。たぶん。
8/8ページ