刀×審神者短編集

【告白をされてしまいました。】【薬研→来葉。大学生×喫茶店員、薬研年齢操作あり】

『あんたのことが好きなんだけど』
『はい……?』

ここはとある街中にある喫茶店である。そんな喫茶店に勤めている来葉は人生初めての経験をしていた

目の前には近くにある大学に通う黒髪と藤色の瞳を持つ学生がいた。この喫茶店の常連客である。艶やかな癖のない黒髪と藤色の瞳が印象的だったので、よく覚えていた

しかし今、彼は何を言ったのだろうか。訝しげに目の前の青年を見る。目の前の青年はただ何も言うことなく、その藤色を真っ直ぐとこちらに向けていた。

『…だから、あんたのことが好きって言ってる』

曇りのない瞳は、来葉をその場から動けなくした

一畳ほどのスペースにステンレスとレザーのダイニングテーブルセットを置いた、おひとり様用の席

今ではすっかり彼の特等席となってしまったスペースだ

いつもこの席で眼鏡をかけて参考書を読んでいる姿が様になっている青年。今年で確か二十歳と聞いたような気がする

『…好きとは一体?』

客が少ない時間帯でよかったと思う。忙しい時間帯に呼び止められたら店長に大目玉である

『もちろん恋愛方面でだよ。……初めて見た時から多分、好きだった』

そんなことを言われるとは思っておらず、来葉は水をもってきたステンレス性のトレーをぎゅっと握り締めた。そういえばオーダーを取るのを忘れていた。
とはいえ、彼は決まってブレンドコーヒーのブラックを頼むのだが

『……どうして私を………?』
『わからん。ただ、あんたを見た瞬間から、この人だって……』

所謂直感というものなのだろうか
来葉にもそういったことがないわけではないが、恋愛とそれ以外は別物である。目の前の青年は迷いない瞳で来葉を見つめたままだ

しかしこの青年の言うことは嘘とは思えなかった。照れ臭そうに髪を触りながら目の前の彼女は頬を染めた。可愛いらしいと黒髪の青年

薬研は素直に思った

『……その、私は……』

そんな来葉を目の前にして、薬研はふと微笑んだ

『…明日も来るよ。返事はゆっくりでいい』

そう言って開いていた参考書を綴じる。

テーブルにお勘定を置いて、薬研は来葉の頭にごく自然な流れで手を置いた。

『……ごちそーさまでした。』
意地悪そうな笑顔を浮かべて、青年は店を出ていった
『…ど、どうしよう……』

その後、店長に呼ばれるまで来葉は頬を染めたままだったという。様子を見に来た店長は一言こう言った『若いっていいわねぇ』と。
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