審神者が薬研藤四郎を好きになるお話

『…大将!!!大将!!!いたら返事してくれ!!大将!!』

ここはとある時代のとある寺である

薬研藤四郎はあちこち火の手の上がる屋内を駆け抜けていた

燃える炎と噎せ反る熱

黒煙で肺を焼かれそうになるのを必死に防いで、寺の内部を走る

自分がついていながら、何という失態なのか。時間朔行軍に連れ去られた主である桜の少女の笑顔が脳裏に焼き付いて離れない

あちこちに上がる火と煙のせいで、視界も悪い

前の主がとある男に謀反を行われ、その男が奥の部屋で自刃するまでが正しい歴史ではあるのだが、思ったよりも敵の数が多かった

近くにこちら側の何振りかはいるようだが援軍に来てくれるのにはしばらく時間を要する必要があるだろう

『グォォォオォオ!!!』

人の物ではない雄叫びが薬研の前後から聞こえる

数はおそらくそれなりだ

『邪魔だ!!!』

気配を察知した薬研が抜き身のままの短刀をまずは正面から来た敵を一息の内にその頸動脈を切り裂く

正面の敵は首から血飛沫を上げながら音を立てて倒れ、そのまま霧散した

勢いで低い態勢の着地になってしまったが何ら問題はない

『悪いがこっちにも遊んでいる暇はないもんでなぁ……まとめて相手してやる。……かかってきな!!』

短刀を目の前の敵に突き付ける

しばらく距離を取る所から始まり、仕掛けてきたのはあちら側だった

刃と刃が交わる音が、屋内に響き渡った
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