第3章

ザーフィアスに魔物の襲撃があった翌日、リョウはガウスの店に来ていた
まだ朝靄の深い時間帯だ。
頼んでいた剣を取りに、リョウは裏庭で薪割りをしていたガウスに顔を見せた。

『おはようございます、ガウスさん。剣を取りに来たんですけど』

『おう、来たか。ちょっと待ってろ』

いったん薪割りの手を止めてガウスは肩にかけていたタオルで一度汗を拭ったのち、リョウを裏口から工房に招き入れた

ガウスは工房の壁に掛けていた布に覆われた一振りの剣をリョウに手渡す

『………ほら。お前の分だ。抜いてみろ。気に入るかわかんねーけどな』

ずしりと伝わる剣の重み
ガウスの武器はどれも質がよく、値段はなかなかのものだがそれだけの価値がある

武器は打ったものの魂が宿るという

リョウの剣は、今のところこのガウスという男ともう一人ぐらいしか直せる者はいない

リョウは新しく出来上がった自身の剣を抜いてみた

鞘と刃がこすれる心地よい音とともに出てきたのは刃こぼれひとつない美しい白銀の刃だった。

『おっ!!抜きやすい!抜いたときに聞こえる風切り音!いいねぇ♪』
『当たり前じゃバカタレが。誰が打ったと思ってやがる』
『なはは、すみません』

爆砕拳が飛んでこなかっただけよしとするべきか

ふと、リョウはこの高そうな剣を見つめて口にした

『ガウスさん、打ち直し代にあとどれくらいだせば……』
『…………今回は特別に修繕費をそのまま代金にしといてやるよ』

なんとも心が広い男だろうか。リョウは目頭が熱くなるのを必死に抑え『ありがとうございます』と一言口にした

『まぁお前とはうちの娘たちも長い付き合いだからな。出世払いで頼むかね。これでも期待してんだぜ?おめぇらにはよ。』

ガウスの言い分に、リョウは思わず苦笑を漏らした。

『ええ…これ以上の出世って、フレンじゃあるまいに……でも、本当にありがとうございます。』

『クククッ……フレン蹴り落とすレベルにはなりやがれっての。………まぁ、それはさて置き、今回のベースはお前が使ってた一刀リョウ断だけどな。刃こぼれが酷すぎて鞘に引っ掛かりまくって、直すのが難しかったんだよ。そう言った理由で一から打っただけのことだ』

フレンを蹴り落とすレベルなんて、どれだけ頑張ればいいんだ……。

これからは手入れはこまめにやるんだな、とニヒルな笑みを浮かべてガウスはリョウの頭を小突いた

『いだっ』
拳骨じゃなくても、ガウスの手は豆と筋肉とで堅いので思わず声を出してしまった

『屯所に戻って身支度しないと』

そしてリョウは真新しくなった剣を背中につけたのだった

『まずは何処に行くんだ?』
『そうですね………とりあえずは、ハルル経由でアスピオに行こうかな。エステルにも会いたいし。』
アスピオは天才少女のリタ・モルディオがいる街の名前だ。洞窟の中に住居を構えた学術都市であり、たくさんの研究施設がある

つい最近、魔物の襲撃があったのはアスピオ付近である。リタなら何か掴んでいるかもしれない

アイリスとカリィが見たという怪我をしたライのことも気にかかる
うん。ハルル経由でアスピオ、ヘリオードかな?と、リョウは小さく呟いた

『魔導士のリタ嬢ちゃんに協力してもらうんだな。まぁあのピンクのお姫様もついていきそうだぜ。あの娘はなかなかに見込みがある。
オレもちょっとダングレストに集まるよう召集がかかったからな。しばらくお前の剣の面倒がみれねーな。ライに頼もうとも思ったが、先にヤツはノールに行っちまったし』

『そうみたいですね。………って、剣に関してはもしかして、また無茶して剣がボロボロになるから?』

ダングレストといえば、ギルドのユニオンがある大都市であり、テルカ・リュミレースに数多くあるギルドの総本山だ。確かあそこにはフレンが向かったと聞く。もしかしたらレイヴンとカロルに協力を要請しに行ったのかもしれない。

ダングレストはフレンに任せておけば問題はあるまい。ギルドと帝国の仲を取り持ったのもユーリの助力を得たフレンであると記憶している


リョウとエルリィはユーリたちと旅をしたこともある
今のギルドと帝国の仲が安泰しているのも、人知れず行動を起こしていたユーリたちのおかげであるのだ

ガウスはギルド、魂の鉄槌(スミス・ザ・ソウル)に所属しておりその実力は折り紙つきだ

だんだん朝日も高くなりつつある
旅立つには持ってこいの朝かもしれない

『行くのか?』

『はい。のんびりしてる暇がないし……ザーフィアスの警備はエリルたちに任せてありますから、何かしらあればエミリアさんを通して彼女たちに報告してください。』

そう思ってリョウはエリルたちとは昨日のうちに、挨拶はすませておいた

ライとは挨拶は出来なかったが同じ世界にいる以上、またどこかで逢うこともあるだろう

『了解だ。伝えておくぜ。
━━━お前も気を付けろよ。最近魔物も活発になってきやがったからな。この前もうちのモンが襲われて重傷を負っちまった。全治一ヶ月だとよ。』
『はい。聞いています。急いで原因を突き止めなくちゃ………』
『わかっているとは思うが、急いたら事を仕損じるぞ?お前は昔から頭に血が昇りやすいからな。ちったぁライを見習いやがれ』
『ライの冷静さは真似しようにも出来ませんて………』

朝日も昇ってきた。エミリアとエリルが早起きをして作ってくれた弁当も抱え、リョウはザーフィアスの帝都の入口から脚を踏み出そうとしたあと、『ま、ま、待って〜!!!リョウ〜!!!』と、あまりにも聞き慣れた声にリョウは振り返った。そこにいたのは余程急いで来たのか、息を切らしていたエルリィだった

『どしたエルリィ。ガウスさんからまたお使い?』
それを聞かれたエルリィが違うよ〜!!と、とりあえず息を整えながらリョウをみた 

『私のところにフレンから昨日手紙届いたの。確認したら、今回の件でリョウに同行するようにってあって』
その手紙をリョウにみせて、しばらくリョウの方はフレンからの手紙を読んでいた。やがてリョウはなるほどね〜と、丁寧にまた手紙を折りたたみ、エルリィへと渡した。

『手紙ありがとう、エルリィ。僕もフレンからこの件について調べるように正式に進言されたからね。下町の方も何人か僕の部下おいて置いたから、安全面は大丈夫だろうし……。一緒に行こうか』 

そんなこんなで、リョウとエルリィは2人してこの調査へと乗り切ることになったのだった。


リョウとエルリィがデイドン砦についたのはまだ午前中といえる時間帯だった

『ふぅ。よかった早目に砦について。』

『途中、地震が起きたけど、無事ついてよかったね。』と、エルリィとともになんとか無事にデイドン砦に到着したリョウ。

無事かどうかは微妙だが、先程の地震で起こった地割れに落ちそうになるのをなんとかふんばり、裂け目を避けながらこの砦にきたのだ

『最近、地震多いせいかあちこちに地割れのあとがあったなぁ……』

ここ最近頻繁に起きている地震に、住民たちは不安に煽られているかもしれない。魔物の大量発生に地震。

二つの関連性があるとは思えないのだが、一般市民の不安を煽る材料には充分だった

とりあえず情報収集をしようか、とぐるりと砦を見渡す。

周りにはちらほら人影もある。砦は今は開いており、自由に行き来は可能だ。

リョウとエルリィはまずは近くにいた冒険者に話を聞くことにした

話を聞いてみたところ、アスピオ以外にも魔物はいるようだ。その魔物が出たと言う場所にはやはりテルカ・リュミレースには存在しない魔物が必ずいたようである

【新種の魔物】か【人工的に作られたのだろうか】と様々な意見が飛び交う中、有力な情報は全くなかった

『…………手がかりゼロかよ……参ったな…………』

リョウは半ば諦め半分、期待半分と言ったところである。そんなリョウを見て、エルリィが元気だしてこ!と、次の街に行こうとした時である。

リョウとエルリィは隅っこにいた少女に目が向いた。何やら途方にくれた雰囲気である。

そう思うと自然と少女に脚が向いたのだった。すると少女の方もリョウたちに気付いたのか、落としていた視線を上げる。

かの少女の特徴は、長い黒髪で瞳は切れ長の15歳くらいの少女だ。何処となくユーリと雰囲気がよく似ている気がしたのだ。

『どうかしたの?何か困り事?』
と、まず最初にエルリィが女の子に声をかけると、その女の子は訝しげにエルリィとリョウへと視線を向けて、しばらく2人を見つめてきた。何と無く見定められているような。そんな感覚を覚える。やがて女の子の視線が外され、ポツリと話てくれた。

『……どうも。まぁ、困ってるといえば確かにそうですね。あの、ここ何処なんですか?』

『あぁ、ここはテルカ・リュミレースにあるデイドン砦って場所だよ。もしかして旅行か何か?』
少女は少し考えたのち、『まぁ、そんなとこですかね』と、リョウの言葉に目の前の彼女は一言だけこぼした

珍しい人もいるものだとリョウとエルリィは思った。魔物が大量に発生しているこのご時世に、旅行等あり得ないが、それには触れないようにしたのだった

『そっか。僕はリョウ・ウバルチフ。ザーフィアスの帝国騎士団で部隊長をやらせてもらっています。』

『わたしはエルリィ・シザード。よろしく。』

『…あ、あたしはロリセ・シュトラウスです。とある国で治癒術士(ヒーラー)やってます。よろしくお願いします』

治癒術士とはよく聞く職業である
治療を専門とする職業で、医療分野を根幹にしたり、戦場で怪我をしてしまった者を治したりする。

今のこの世界は魔物の被害で怪我人も多数出てきている。そういった中での治癒術士の需要は必要になりつつあるとハルルにいたエステルは言っていた。

『この土地初めてだよね?僕ら、これからハルルって街を経由して、アスピオって街に行こうとしたんだけど、よかったら一緒に来るかい?』

するとロリセは一瞬惚けたような顔をしたが、今はそれが最善と考えたのだろう。

『あ、はい。実は右も左も分からずにこの場で待ちぼうけ喰らってたんですよね。魔物もいるみたいだし、下手に動いて行き倒れとかなるのもどうかと思ったんで………』

なるほど懸命な判断である。

『じゃあ決まりだね!これからよろしく、ロリセ』
『よろしくお願いします』

こうしてリョウとエルリィ、そしてロリセは出逢って行動を共にすることになったのだった

デイドン砦では得に有力な情報が得ることが出来なかった。まぁどのみちアスピオに行くためにはこの砦を通らないといけなかったので、身分証明書を運よく持っていたロリセは、検問は難なく突破できた。

ハルルという街は大きな花の樹の麓にある街の名前だ。 

かつてハルルは、ハルルの木に同化して結界が機能する作りだったのだがその機能が魔物の血が発する毒素で停止したことがあり、カロルがパナシーアボトルで木の浄化を試みたが量が足らずに、その木は朽ちるのを待つことになるのだろうかと絶望してしまった村人たちを見て、エステルがその力を使ってハルルの結界を復活させたとリョウは話した。

別に黙っているようなことでもないので、話したまでだが、ロリセはというと、適当に相槌を打ちながら、花は好きですよ、とだけ返してくれた。

彼女は昔から人を見る目を持っており、一目見ればその人間がどんな人間なのか勝手にわかってしまうらしい。リョウとエルリィは見ての通りの人だと言われたが、真偽を知るのはロリセ自身のみであろう

そのハルルは今では満開の花が開き、花びらが舞うとても美しい街になっている

『エステルさん、か……すごい人なんだな』

『うん。僕らの大切な友人なんだ。今はハルルで生活してる』

ロリセはその話を聞いて、エステルがどんな人なのか更に興味をわかせた

『どんな人なんだろう?ここ最近人に会ってなかったからなぁ』
『そうだったんだ。すごくいい子だよ。きっとすぐ仲良くなれるよ』

と、エルリィもエステルと逢うのは久しぶりだったので楽しみのようである。


まぁ、天然でほっとけない病患者ではあるのだが。

『ほっとけない病』というのは、名前の通り困っている人を見かけたらつい助けてしまうという病気のことである。

同じ意味合いでは、ライの世界にも【ノーテン菌】という菌もあるらしく、それに感染した者は人生をノリと勢いだけで行こうする病気らしい。言いえて妙だが、これはまた別の話である。

まぁそんなリョウとエルリィもそのほっとけない病患者の一人であるわけなのだが

そんな会話を展開しながら歩いているとまた地震が起きた。今回はかなり大きな地震だ。地面がまた裂けるような嫌な音が辺り一帯に響き渡った


『わっ!?今度は大きい!?』
『近頃多いな……何処にいても地震てあるんだな…………』

活断層があるかぎり、地震など必ず起きるものだが、最近の地震は異常だった

地割れで起きた亀裂に飲み込まれ、行方不明者はたくさん出ていると砦でも聞いたし、命を落としたものもいるとも聞いていた

とにかく最近の地震の回数は半端ないのだ。揺れがおさまり、安堵する3人

しかし安堵したのも束の間、今度は魔物の気配がした

街道のど真ん中、辺りには気が立っているのか数匹の魔物が唸り声をあげている

『早速お出ましか。ロリセは下がってて』
するとロリセは少し眉を寄せ
『お気遣いなく。自分の身ぐらい自分で守れますんで』
『何と無く、ロリセの手を見てたら戦闘慣れしてる手だと思ってた。銃使ってるでしょ』

そうエルリィに太鼓判を押されて少々面くらいながら、ロリセは腰のホルダーから2丁の銃を取り出して構え、そして【大当たりです】。と返してくれた。

『なら、援護頼もうかね』

『りょっかい、です』

魔物が3人に襲いかかってきた
相手はウルフが2体、蜂型の魔物が3体だ。
蜂の方は毒を持っているのでわりかし注意が必要である

『あのいかにも毒持ってそうな蜂は自分がやりますよ。リョウさんとエルリィさんはウルフをお願いします』

いいながらロリセは銃のシリンダーに弾を装填した

蜂型の魔物は羽音と共にロリセにその鋭い針を飛ばしてきた
ロリセは難なくそれをかわすと、装填した弾をトリガーを引いて確実に仕留める一撃を見舞ってやった

激しい炎とともに、蜂型の魔物、ビーは焼かれながらエアルへと還っていった

『おぅ。ライにも引けを取らない腕前』
『ま、こちとら生きるために魔物大量に狩ってたんでそれなりには』

淡々と話すが、キツくはないしゃべり方である
年はアイリスたちと変わらないように見えるが中身が伴っている
かなり苦労していたのだろう
リョウはそう思った
ぼんやりしていると、ウルフがリョウに飛びかかってきた

『って!甘ぇよ!蒼破ッ!!!』

衝撃波でウルフを弾き飛ばす
まぁこの辺りの魔物はリョウたちの相手ではないらしい

『それ!』

と、エルリィはかかと落としで残りのウルフを撃破した。

 程なくして戦いは終わり、二人は武器を仕舞った

『ロリセ強いねー。大助かりだよ!』 

『いーえ。住んでたとこと魔物の特徴がよく似てたんで、対処しやすかったです』

『ロリセが住んでた場所ってどこ?』
純粋に気になったエルリィがロリセへと視線を向けた。すると彼女はしばらく考え込んだのち


『年中雪に覆われたとこですよ。村の中にも平気で魔物がいたし、結界がないとまともに生活出来ない場所でしたね。それにしてもエルリィさん、どうしてあたしが銃使ってるって分かったんだ?』

至極真っ当な疑問にエルリィは、自分の父親が鍛冶師をやっていることを教えてくれた。幼い頃から父親の作業風景を観ていたので、使用者の武器の状態をある程度目視で確認出来るという特技を身に着けたらしい。

僅かな武器の音の違いなどで状態がわかるらしく、ロリセの手は女性にしてはしっかりしていたので、常日頃から銃を握っているということが分かったそうな。

そんな会話を交わしてしばらく歩くと大きな木が見えてきた。ハルルである。

『あ!見えた見えた!あそこがハルルだよ』
『なんかすっげーデカイ木が見えるんですけど……』
『あれがハルルの目印なんだ!中にいけば、もっと近くで見えるよ』
『へぇ………じゃああれが結界張ってたってことか。何かすげぇ納得。』

ハルルはもう目の前である。
久しぶりの仲間との再会にリョウは心を踊らせながらその足をハルルに進めたのだった

◆◇◆◇

ハルルについたリョウたちは、まず宿を取り、早速街を探索し始めた

『すっげ。花と緑がいっぱい』
『すごいでしょ!ハルルは花と緑がたくさんで温暖な気候なんだよ』

つい最近まで雪の中にいたロリセは久しぶりの緑に少しだけ安心感を得て、ふと口許を緩ませた

『ロリセ、早速で悪いんだけど、エステルのとこ行ってもいい?エステルからここ最近の話も聞きたいし』
『あたしは大丈夫ですよ。お気遣いなく』
『ありがとう!』

リョウたちはエステルのいる場所へと足を伸ばした

エステルはザーフィアスの姫であり、副帝として皇帝へと即位したヨーデルの仕事を手伝いながら今はハルルに移り住み、絵本を描いている

あの星喰みの一件から、それぞれの生活をしていたのだが

『あ。ここだよエステルの家』
『立派な家ですね』

リョウはドアをノックする
ほどなくして、聞き慣れた声と共に足音が近づいてきた

『はぁーい。どちら様です?』

開かれたドアから桃色の髪と翡翠色の瞳が覗いてきた

『エステル久しぶり!』
『リョウ!それにエルリィも!!
お久しぶりです!わぁ懐かしいです!お元気でしたか?』

『元気だったよ〜!エステルも息災そうで何より!』
エルリィはエステルとハイタッチで再会を喜んでいた。

柔らかな声と笑顔は、今でも変わらなかった

『とにかく上がってください。お茶準備しますね。そちらの方は?』

ロリセに気づいたエステルは、首を小さく傾げた

『あ、初めまして。ロリセ=シュトラウスと言います。訳あってリョウさんとエルリィさんにお世話になっていて』
『そうだったんですね。わたしはエステリーゼ・シデス・ヒュラッセインです。気軽にエステル、って呼んでくださいね♪』

再びエステルは笑顔を浮かべてロリセに微笑みかけた

その花のような笑顔は見るものの心を掴んで離さなかった

本当に貴族の姫君であるのだろうかとロリセは素直に思ったのだった

◇◆◇◆

『本当にびっくりしました。言ってくれれば迎えに行ったのに』
『なはは。そんなことエステルにさせれないよ』

暖かな紅茶の香りに包まれながら4人は話に花を咲かせていた

『騎士団の方はどうです?フレンが騎士団長に就任して、あまり逢わなくなってしまいましたし……
ヨーデルからの手紙で大体のことは把握してはいるのですが』
『うん。大丈夫だよ!フレンも頑張って騎士団を立て直しているし、ギルド間との関係も良好だしね』

エステルは安堵の息を漏らしたあと、リョウとエルリィをみやる

『最近また魔物が活発化しているでしょう?魔導器をなくした影響かどうかは分かりませんが、地震も多発していて、民の不安がだんだん浮き彫りになってきて………』
『それはザーフィアスも同じだね。今はまだ少ないけど、そう言ったことは報告書を見ればわかる』
『確かに最近、地震多いですね。あたしがいたとこもこの間の地震で雪崩が起きて道が分断されてしまいましたし』

どうやら世界各地で異変は起きているようだ

『その件に関して、騎士団に正式に任務が来たんだよね…』
『どういうことです?』
『あ』

リョウはしまった、と言うように口許を押さえた。エルリィは『あーあ。』と言った感じだ。

そう言えば、この件に関しては騎士団の一部にしか行き渡っていなかったと今さらながらに気づくがもう遅かった。目の前の副帝はリョウを訝しげに見つめてことの次第を話すよう訴えていた。

目は口ほどにものを言うと聞く
どうやら逃げれそうになかった

『言葉の意味まんまだよ。先日、僕に直接この件に関して調査して報告するようにと言われたんだ。フレンが手を回したんだろうね。当の本人は一足先にダングレストに向かったけど………』
『フレンがダングレストに……レイヴンたちに協力を求めに行ったんでしょうね……』

エルリィも先にダングレストへと立ったフレンから手紙が届き、リョウのサポートをしてほしいと言われたことを話した。

ロリセは横で話を聞きながら紅茶を見つめていた

『気になることはまだまだあるけど、僕とロリセ、エルリィはこれからアスピオにいこうとしていたんだ。』  

『リタに相談しにいくんですね!なら行きましょう!』

『わかってると思うけど、フレンにバレたら大目玉だよ?』

そうエルリィはエステルに念の為聴いてみた。まあ言ったところで引いたりはしない。それがエステリーゼ・シデス・ヒュラッセインである

『大丈夫!話せばわかってくれます!きっと!』

何故か小さくガッツポーズするエステルに、リョウたちは苦笑を隠せなかった

出てしまった。エステルのほっとけない病が
予想出来なかったわけではないが、つくづく自分はバカだとリョウは思った

しかし彼女の治癒の力はパーティーには必要不可欠である。回復は何人いても困らないし、前線で戦うことになるリョウとエルリィはバックアップがあれば遠慮なく魔物を薙ぎ倒していける。
これで援護は充分である

エステルは剣術の心得があるので自ら前線に立つことも多かったので信頼性は抜群である

まぁリョウへのお説教は決まってしまったかもしれないが、フレン・シーフォとはそういう男である



こうして
エステルを加えたリョウとエルリィ、ロリセは、天才魔導少女こと、リタ・モルディオの頭脳の助けを得るため一路アスピオを目指すことになったのだった
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