第23章

『ライお兄ちゃん、みんな!おかえりなさい!』

リルハちゃんに出迎えられて俺たちは大聖堂についた

あのあとヘンゼラで素材一式に関して、チェン大人の斡旋している業者へと新書を一通ずつエカイユさんが発送してくれたのである。

これでいつでもその業者から必要なものを買い取れることが可能となった。

そして一通りの手続きを済ませているときに俺は気付いてしまった。

この書類はチェン大人の取引先の契約者の変更の書類だと。

エカイユさんに気になって聞いてみたところ、チェン大人は最初からそのつもりでこのオーナー変更の契約書を俺に渡すつもりだったらしい。

『えぇぇぇええーーー!!!!!!!!!?あのチェンがライに自分がオーナー契約していた業者の権利を譲ったぁぁあぁぁあぁ!?』

素っ頓狂な声を出したのはベリルだ。まぁ当然の反応だろう

『全てではないよ。工作や鍛冶、建造物の修理とかに使う部品や資材の買い付けの業者なんだ。……プランスールの惨状は伝令を通じてチェン大人たちのところにも届いていたしな』

『そ、それでもライすごいよ!!だってそれって、実質業者の代表になった、ってことでしょ?』

話を聞いて顔を見せたコハクとヒスイも驚いていた。

『そうね。実際チェン大人の名前が連記されてるし……書類も偽物ではない。うふふ。やるじゃないライ。あのチェン大人を落とすなんて』

イネスが書類とチェン大人の名前を確認して嘘偽りなどないことを確認してから微笑んだ

正直俺が一番信じれない訳なのだが書類に名前を書いてしまった以上はどうすることもできない。今さら取り消すことも無理だろう。

『やられたな。やっぱあのオッサンは食えねぇぜ……』

ヒスイは顔がひきつっていた。ヘンゼラに初めて訪れた時、シングとヒスイは悪徳業者に詐欺られるところをエカイユさんに助けてもらったことがある。それ以来、チェン大人とその娘であるサンゴ船長、ならびにエカイユさんには頭が上がらないのだ

『おめでとうライ!今日はお祝いしなきゃだね』

シングの純粋な瞳に苦笑した。シングのこの純粋なスピリアはまだ俺には少し眩しい。
それでも俺が一番信頼しているのはシングたちなんだと改めて認識させられるスピリアの輝き。

一連のやり取りを見ていたリルハちゃんは思い付いたように聞いてきた

『ライお兄ちゃんとシングさんたち本当に家族みたいに仲良しだよね。シングさんたちとライお兄ちゃんはどうやって知り合ったの?』

リルハちゃんのその大きな青い瞳はキラキラと輝いていた

『あ。それあたしも気になるわ!戦いも一旦落ち着いたみたいだし、エッジたちの艦の修理には1ヶ月ぐらいかかるんでしょ?ならボーッとするよりこの辺りで親睦を深めない?』

どうやらシュテルンとの相性は抜群に良いようだ。当たり前ではある。まだシュテルンと契約して数日というそれのレベルではないのに、元のバトルスタイルをほぼ記憶だけである程度使いこなせれているのだから。元々勤勉で物覚えもよく、趣味は小説を書くことなので、勉強も出来、仕事先ではいつも妖精の尻尾フェアリーテイルの頭脳担当のルーシィはかなりの逸材なのである。

これは元いた世界の魔導師として、最強クラスだということが影響している。あの荒くれ者も多い魔導師が席巻している世界で、最強のギルド【妖精の尻尾フェアリーテイル】所属の魔導師は紛れもない最強のギルドということが証明されてきた。

そしてこの前封神龍の三姉妹の1人であるスクルドから聞いた話、ルーシィには召喚師サモナーとしての適性もあるとか。いわゆる【召喚術を使う者】の類のそれだ。

専門の知識を身につければ、あらゆる分野で大いに役に立つことが出来ると。医療や治癒、使い魔的なそれや、それこそ戦闘での共闘など多岐にわたるのである

召喚師は、とある世界における神秘の儀式【「誓約」を交わした者を指す】言葉。

必然的に、誓約を結んだ相手である【召喚師】のパートナーのことは「響友」と呼ぶ。

その世界の旧時代の【召喚獣】という言葉は、古き誓約による強制的な使役の意味を持つ言葉とされており、現在は使われないらしい。

現在は召喚獣のことは響友クロスとも言う。何とも今のルーシィにぴったりなジョブ。

それが召喚師サモナーというのである

その召喚術サモネージは異世界からアイテムを使って、異世界の存在を呼び出し、助けて貰い、超常の力を行使するという手段である。

ルーシィも元々、星霊魔導師だったので何かを呼び出すことは得意なんじゃないか、とスクルドの見解である。

この分だと、刻神龍と封神龍の能力の適正者の彼らも化けそうだ。元々彼らのスペックが片方は身体能力、片方は頭脳特化型のそれが人間を辞めているレベルなので余計である。

シュテルンを抱っこしているルーシィも会話の内容に乗ってくる。
沙羅さんに言われて、シュテルンとルーシィは最近よく一緒にいるようだ。

龍神の力を引き出し使いこなすためには親睦を深めるのが一番だと。

なので、最近はルーシィとシュテルンは何処に行くにも一緒に出かけている。

『……あたしも混ざっていいですか?何となく暇してたんで』

更にはロリセちゃんも顔を覗かせた

『あら。ふふふ。何か楽しそうな雰囲気ですわね。わたくしもご一緒しても?』

リチアの声がソーマを通して響いた

これは断れない雰囲気になってきたな

『俺もライと出逢った時のこと色々振りかえってたら懐かしくなっちゃった!!』

我らが首領のシングにまで言われたら話すしかないような。

『なら芸術家として、そのお話を語るとしようかぁ~。一晩じゃ終わる気がしないけど』

ベリルは得意げな顔で笑い、帽子の鍔を上げた

『………新たな次元の歪みを探知。場所は………』

クンツァイトの機械的なアナウンスに一同は顔を上げた

『うわぁぁあぁぁあぁ!?』

それと同時に派手な音と共に聞き覚えのある声、というか叫び声が二つ。

『カル様ーーー!!!!!』

そう言えば今、カルセドニーとバイロクスはプランスールの者たちに声をかけていた途中だったか。今帰ったみたいだな。お疲れサン

『……この聖堂の外だ』

『おせぇよ!!ありゃカルセドニーとバイロクスの声だろが!!』

ヒスイの突っ込みにクンツァイトは『すまない』と謝罪を口にしたのだった

次元の歪み


つまりはまた誰かがプランスールに落ちてきたということである。

しかしこの気配は余りにも知りすぎた存在のソーマリンクの気配

そう。この場所にいないはずのもう一人の俺たちの仲間だった

『この気配……まさか……!』

どうやらシングも気付いたようである。

『てっきり元の世界に帰ったと思ったんだけどなぁ』

俺たちはそのソーマリンクを辿り、聖堂の外に出た


───あの戦いののち

プランスールは少しずつ教会と軍が協力し合って復興へと向かっている。

クリードとの一件の時にこの世界中のスピリア同士を繋げ、その力でクリードを打ち破ったことは昨日のように思い出せる。

その時にここにいるシングたち以外にもう一人一緒に旅をした仲間がいた。その仲間はあのあと元の世界に戻った。

何かとシングやコハクたちのことを俺と同じく気にかけてくれていた男だ。

まさかと思い、教会の重い扉を開く。眩い光は少しキツかったが気にするほどではなかった

『ガラド!!やっぱりガラドだ!!』

嬉しそうなシングの声が響いた

『んん?おめぇシングか!?』

こちらもまた聞きなれた声であった

『なんだよオッサン!!久しぶりじゃねぇか!!』

ヒスイも続いて飛び出してきた

『兄さんもいるのか!?ってぇことは』

『うん。私もいるよ!久しぶりだねガラド!』

コハクが笑顔で微笑んだ

『嬢ちゃんじゃねぇか。元気そうだなぁ。ははは!』

ガラドはコハクの頭をまるで娘を見るかのように撫でた。コハクは苦笑しながらもそれを素直に受け入れる

『ガラドがいるってことは、やっぱ異世界からあの亀裂を通ってってことになるよね?』

ベリルがふと思っていたことをライに聞いた

『あぁ。そういうことになるな。』

『ライも娘っ子も相変わらず苦労人そうな顔してるな。』

横から聞こえた二人の声にガラドは振り返った

『苦労人ってなんだよ!これでも頑張ってるんだからなー!』

『はは。まぁまぁベリル。……久しぶりじゃんガラド。変わんねぇなぁ。』

『おめぇさんもなライ。ってか顔色悪いけど大丈夫か』

その突っ込みにライは『ちょっとな』と苦笑したのだった

イネスはその光景を微笑ましく見守っていた。イネスに気付いたガラドも彼女の視線に気付いたのか、ふと口元に笑みを浮かべる

イネスとガラドは旅の途中でもよく一緒にいることも多かったので、何となくお互いの気持ちが通じ合ってるように見えた。ソーマリンクという要素も加わりそれは鮮明に感じ取れた

『そういや羽の兄さんよ。それと、クンツァイト。見慣れねぇ連中もまた増えたか?』

名前を呼ばれ、カルセドニーは『あぁ』と相槌を打つ

『彼らは例の騒ぎでこの世界に流れ着いた者達だ。貴方もそうなのか?』

『そういや買い出しの途中で地震が起きて亀裂に巻き込まれたらこの場所にいたんだよな。と、いうことはあれか。あの亀裂はここに通じていたゲートみたいなもんだったってことか?』

確かにガラドの足元には買い出ししたものらしき商品が散らばっていた。

『……話が早くて助かる。厳密に言うと、あの亀裂はランダムで落ちたものを別の世界に飛ばすという性質なんだ。』

ライが肩を竦めてガラドに説明をする

『見知った世界に落ちて運がよかったってことか。』

『ま、そういうことだな』

そのあとは例のごとく、立ち話もあれだったので教会にある教主の執務室でことのあらましを全部ガラドに話したのだった

ちなみに今、アーカム教主は軍義のために護衛を連れて帝都エストレーガのマクス城へと赴いている。その間、この執務室は自由に使っても構わないとカルセドニーと俺に伝言を残して。

結晶騎士に戻ったわけではないが、彼には結晶騎士時代にシリスとアーシアと共に世話になっていたので要請があればたまに仕事を手伝っているのだ

【教会】ではなく【カルセドニー個人】には、という条件付きでだが

執務室で話を聞いたガラドがいつもの顎髭をその手で整えながら『ふぅむ……』と相槌を打った

『俺らの状況は話した通りだよ』

俺は執務室にあるラブラドの椅子に座って散らばった資料を見ながら言った

机の上には大量の資料
もちろんそれは今までの経緯と新しく流れ着いた魔物たちのことや出会った敵側の情報、各地の被害情報である

帝都の方にも同じ資料が届いている。もちろん手配したのは俺だが、この資料は今まで縁を繋いだ仲間たちのおかげで集まった資料でもある

それを差し引いても、俺としては全面衝突はあまり推奨はしたくない

あちらはギガントモンスターも操れるし、龍神と言う後ろ楯が。

龍神はこちらにも何人かいる。そのあたりは大丈夫だろう。

彼らの力を行使するため、龍神の力を引き出せる適合者のルーシィも沙羅さんとリョウと共に今調整中だ

この問題は放っておく方が無理なところまで来ているのはこの一件に関わった者たち全員が理解している。

まだまだ自分たちの側には沙羅を含む穏健派の龍神の仲間たちもいる。
今は別行動中の今代の封神龍のノルン、明妃の他にも炎の龍神のスルトとその部下であるミールとイグニール。この3人も穏健派の龍神だ。

イグニールと聞いたら妖精の尻尾の滅竜魔導士の彼の父親を思い出すが、全くと言って関係ない。ややこしいので俺たちはイグニと呼んでいる。

『ガラドはこれからどうするの?』

シングがガラドに視線を向けて聞いてみる

『…ん?まぁ今の話を聴いて、無視するってのが無理な話だな。』

ガラドの答えを聞いて、皆の表情が嬉しそうに輝いたのを俺は見逃さなかった

『強力な助っ人だな。こちらとしても助かる』

『おう。また改めてよろしく頼むぜ。』 

こうしてまた1人、頼もしい助っ人が現れたのだった

俺とシングたちが出逢ったのは川沿いにある街のキュノスという街だった

その時はコハクのスピルーンは完全に世界各地に散った状態。

その時にいたのはシングとヒスイ、そして感情を全て失ったコハクだった。

シングとヒスイはこちらから見ても物凄く険悪だったし、とにかくコハクの状態も普通ではなかった

黄昏の森にある小さな橋ですら、コハクは渡るのが無理なレベルだった。
その時にガラドに出逢ったのだ

出口近くでカルセドニーとも再会した。

まぁその時はまだカルセドニーも俺もお互いに半信半疑の再会だったわけだが。


コハクのスピルーンを壊してしまった責任に押し潰されそうになりながらも、必死にコハクを守ろうとするシングにはヒスイも最初こそはキツく当たっていたが、旅を続けていく間にそれも少しずつ減ってはきた。

しばらく俺、シング、ヒスイ、ガラド、コハクと旅を続けているときにヘンゼラで出逢ったのがベリルである

彼女もまたコハクの砕け散ったスピルーンの影響を受けてデスピル病に侵されていたこともあった。ベリルを助け、宿で休んでいた時にコハクが誘拐されたこともあった。犯人は当時コハクを狙っていたペリドットだったのだが

ベリルの案内で、近くのグリム山の山頂を訪れた時のことだった

☆☆☆☆☆☆☆☆

『……あの子……縛られてるわけでもないのに、なんで逃げないのさ』

ベリルの至極真っ当な質問に、ヒスイは苦虫をかみ潰したような表情をしていた

『…無理言うな。元々コハクは高所恐怖症で、今はその恐怖を抑える感情もないんだ』

身を隠しながら俺たちはそのまま様子を見守ることにする

俺もコハクのことは気になるのだが、それと同じぐらいにコハクを連れ去った例のピンク色の髪をした女も気になっていた

『…うぅ…高いの……やぁ……助けて……お兄ちゃん……』 

泣き続けているコハクにピンク色の髪の女、もといペリドット·ハミルトンはしびれを切らしたようにコハクに視線をやった

『…あ〜あ…、メソメソメソメソ…うざいっての!あたし、そーゆーの大っ嫌いなんだよ!』

そういうとそのまま、ペリドットはコハクの華奢な身体を張り倒す。 

それを見てしまったシングとヒスイは案の定、頭に血が登ってしまい、一目散にとび出した。

このころは二人とも頭に血が登りやすかった。

まぁ今もなのだが。だいぶそのあたりは落ち着いてはきたのだが、無鉄砲さはあまり変わらないし、そのせいで俺とイネス、ベリルは今もだいぶ苦労しているのは今までのやり取りを見てきたリョウたちはわかるだろう。

『…あっちゃー…やっぱりなぁ……』 

尚も泣き止まないコハクにペリドットは何ともやりづらそうに口にした

『…はぁ。あんたねぇ…誘拐したあたしが言うのもなんだけど、泣いたって状況は変わらないんだよ?女だからこそ、涙をこらえて強く生きなきゃダメなんだ。ほら、涙を拭いてシャンとしな』

こういうところは相変わらず変わらないんだな、お前は。

ペリドットは懐から自分のハンカチを取り出し、コハクに差し出した。そんなペリドットを見つめ、コハクは相変わらず感情のない瞳でペリドットを見上げたものの、そのハンカチを受け取る。

ペリドットは昔と変わらない微笑みを浮かべていたのだが

まぁそんなペリドットの優しさを無碍にするかのごとく、シングがそのソーマの切っ先を向けていたことに俺は気付いていた。

勿論隠す気のなかった気配でペリドットもその身軽な体躯を翻し、見事にシングの一撃を交わしてのけた。

『コハク!早く逃げて!』

シングがコハクを後ろにして、ペリドットをにらみつけていたが、コハクは蹲ったまま動こうとはしなかった。いや、出来ないのである

『…コハク……怖くて逃げることもできねぇのか……』

ヒスイが心配そうにコハクを横目にしながらいった  

『…おっと!そうはいかないよ!』

そんな隙を逃すようなペリドットではない。ペリドットは鋭い回し蹴りでベリルごとシングを伸してみせた

『は〜い、そこまで!おとなしくスピルーンを渡さないと、お人形さんに傷がつくよ』

悪人の常套句である。しかしペリドットが本気ならば、シングとベリルは今頃崖の下だったろう。
そういう奴なんだよな、この跳ねっ返りの幼馴染は。

一部始終見ていた俺とガラドは顔を見合わせた。まずはガラドが諭すと目で訴えられた気がする。まぁサングラスの下から見える瞳はどんな色なのかは容易に想像はついたが

『…おい、姉さんいい加減にしろよ…デスピル病の女の子を盾に取るなんざ、騎士のやるこったねぇぞ』  

頭が冷えたシングは、その懐から黒色のスピルーンを取り出した

ベリルの中に入り込んでいたその黒色の光を放つスピルーンは『疑い』のスピルーンであった

『…これを渡せば、コハクを返してくれるんだね?』

未だにペリドットはコハクを盾にしたままニヤリと微笑んだ

『…そうそう。素直な子は好きだよ♪
おい、そこの変な帽子、それをこっちに持ってきな』

変な帽子とはベリルのことだろうか。いやこの中で帽子を被っているのはベリルしかいないわけなのだが。

『…そのヘンな帽子って呼び方気になるけど……まぁいいや』

ふと何を思ったのか、ペリドットはコハクを人質にとったまま今度は俺を見た

俺は意味深な視線を投げかけてくるペリドットに聞いた

『どうした騎士様。何か言いたげな顔してんな』

俺はいつもの通りに彼女へと声をかけた。それを聴いたペリドットは眉間にシワを寄せて俺を睨みつけてくる

『あんたさ、脅迫されてる自覚ある?不意打ちの挙げ句、数まで増えてるし』

いけしゃあしゃあと答えるペリドットに昔の馴染みの俺も眉間にシワを寄せた

『…ペリドット…てめぇこそ相変わらずの跳ねっ返りじゃねぇの。』

『あんたまでそいつらの肩持つの?フレオまでいなくなっちゃってさ。ローズがどんな思いしてると思ってんの』

ローズとフレオ、という名前を聴いて俺のスピリアが軋む。確かにアイツにはずっと迷惑をかけっ放しである。

叔父と叔母のところで世話になってるとはいえ、割と今の一言は効いた

ヒスイの視線が刺さる。ペリドットと普通に会話している俺に向ける視線は疑惑の視線だ。

ベリルの手の中にある真っ黒いスピルーンの破片と同じ色の感情

いよいよ衝突が避けれなくなってきた空気を破ったのはベリルだった。ベリルはシングに問いかけた

『ねぇ、あのさぁ…このスピルーンって、ホントの、ホントにあの子のなんだよね?』

今更だと思うがそのとおりである。シングはそれを聴いて答えた

『……うん。でも、これは【疑い】の……』

シングが言いたいことはわかる。それは今まさに俺がヒスイに向けられている感情そのものだ。スピルーンが揃いきっていないコハクにその疑いのスピルーンを戻したとしてどうなるかは、まぁ想像している通りだと思うが……
 
『……だったら、ここはこれを上手く使って……』

ベリルはゆっくりとペリドットとコハクに近寄る。ペリドットは勝利を確信したかのように笑っていたが、あともう少しだと思った次の瞬間

『うわぁ!しまった躓いたぁ!!!』

ベリルは思いっ切り躓き、その反動でそのまま手にあった疑いのスピルーンはコハクの胸の中に待っていたと言わんばかりに吸い込まれていった

突然スピルーンが自身の中に戻ってきたことで、コハクは苦しそうに声を上げた

『ちょっとお!?何をしたの!?』

流石のペリドットも今のは予想外だったらしく戸惑いの言葉を発したのだった


『コハク、安心して。その人は酷いことしないから!』

もちろんわざと転けたベリルは泥を払いながらコハクに声をかけた。これで丸く収まればよかったのだがコハクの表情は暗いままだ
 
『……うそ……』

囁くように答えたコハクの声は、この山頂ではよく響いた。ベリルは負けじと彼女の説得を続ける

『本当だよ、信じて!その人の側で、大人しくしてれば安全なんだ!!』 

疑いと恐怖のスピリアが彼女の中でせめぎ合っているのだろう。コハクは頭を抱えて蹲り叫んだ

『嘘……、嘘っ!嘘ッッ!!』

そう叫び、コハクは自らペリドットを突き放したのだった 

そんな妹を見たヒスイがベリルに視線を向けた

『ベリル!てめぇ、なんてことしやがる!知ってんだろ!?あれは【疑い】の……』

態勢を立て直そうとしたペリドットの後頭部に俺は解放したヴァルキュリアの銃口を宛がった。

それに気付いたペリドットは忌々しげに舌打ちをし、構えようとしたソーマを引っ込める。 

しかしまだ闘争心は消えてはいなかった。恐らくまだ諦めていない。 

しばらくは様子を見ることを選んだのだろう。

教会側としてはコハクさえ手に入れてしまえばいいからである。  

それに、元々彼女は負けず嫌いな性格だ。教会の命令云々などは関係ないだろう。 

この程度で諦めるはずはないのだ。

よって、俺がペリドットに銃口を向けているのは保険である。 

勿論ヴァルキュリアのバッテリーパックは装填はしていない。今は、だが。 

その気になればバッテリーパックの装填など1秒もかからないぐらいの器用さは持ち合わせてはいる。だから出遅れることも無いと思っている。

『…大丈夫だよ。だってボクがそうだった!本当に信じられる人がいれば、【疑い】のスピルーンにだって負けたりしないんだ!』

その言葉に続き、各々がソーマを解放し、ペリドットを取り囲んだ

『結果オーライってヤツか…おいベリル、後でこっっってり絞ってやるからな』

ヒスイの一言にベリルは脱力した

『ええ〜…大丈夫だって言ってるのにぃ…』  

『形勢逆転だな。降参するってんなら追わないぜ?俺たちゃ、嬢ちゃんの身の方が心配なんだ』

ガラドだ。

その言葉ののち、俺はペリドットの様子が変化したことに気付いた。

ペリドットから距離を取る。

熱を感じたところに視線を向けると俺のジャケットの袖が焼け焦げていたのだ。

やってくれるじゃねぇの、と視線だけで訴えたらペリドットはニヤリと微笑んだあと

『あーあ。しょーがないかぁ。……超めんどいけど……』

ペリドットもその両の手のソーマを解放した

『あんたらボコって、あの子ごとスピルーンを教会に持って帰ることにするよ!!掛かってきな、小僧共!!』 

言わずもがな交渉決裂だ

穏便に済ませたかったのだが、こうなると焼かれた袖の仕返しぐらいはしてやろうと俺は思念術の詠唱の構えをとった。

割と上物の生地を使っているのでその分も上乗せしてやろうと。その後無事に事態は収まり、コハクの【疑い】と【信頼】のスピルーンは回収出来たのだ。

元々このスピルーンは表裏一体の感情だったので、コハクに2つ同時にスピルーンの欠片が戻ることとなった。

★☆★☆★

『なっっつかしいねぇ。今でも昨日のことのように思い出せるよ』

ペリドットは苦笑混じりに肩をすくめた 

『それでその後どうなったの?』

ガラドに事のあらましを話し、丁度15:00のアフタヌーンティーの時間を回りそうな頃合い。

今日のお茶当番であるセレナとシェリア、ルーシィ、コハクが手際良く準備をしながら続きを促してきた

長くなりそうだったので色々とカルナスで作業をしているであろうエッジやレイミ、来葉、リムルたちも呼んできた。どうせ教会の広間は広いので、他の連中も余裕で迎え入れる事が出来るだろうとカルセドニーが提案したのだ。
久々に賑やかな憧憬が目の前にある。

誰かが言っていた。普通なのが一番幸せなのだと。真理だと思う。

『卑怯極まりないことをしておいて、ペリドットの完敗だったな。』

カルセドニーがまだ復興途中のプランスールを見ながら言った

『あのときは本当に悪かったと思ってますってば。しっかり床磨き3ヶ月もしたし』

とはいえ、正道を行くカルセドニー的には、あの時のペリドットによるコハク誘拐騒ぎに関しては恐らく騎士人生の汚点の一つとして末代まで語り継がれそうな気すらしてきた

『床磨き3ヶ月はわりと腰に来るからなぁ。俺もよくサボって叱られてたっけ』

ライはぼんやりと何気なしに口にした

『ライお兄ちゃんも結晶騎士だったの?』

リルハちゃんが首をかしげて聞いてきた

『ん?まぁな。』

外を見ていたカルセドニーが俺に視線を戻した

『ライは僕の剣の師であり、前十三番隊の隊長だ。』

カルセドニーは普通に答えた。 

まぁこれも以前の俺ならば物凄く嫌な過去でしかないが、今はもうその頃の栄光など薄れている。

シングたちと旅したとき、俺は彼らに救われた一人でもある。俺だけではない。

コハクもリチアもベリルもイネスもカルセドニーたちもシングに等しく救われたのだ。

本当にシングは凄い奴だと思っている

『最初見たときからライさん何か只モンじゃないとは思ってたけど、なるほどな』

ロリセちゃんである。何だかんだでこの異変で出逢った仲間たちとはまた長い付き合いになりそうであるし、今更隠すような事でもないなと頭の隅で思っていたのだが、聞かれなかったので答える必要も感じなかった

『ライは自分の騎士学校時代の先輩でもあってな。いつも学園内では首席だった。あの頃は俺もライに憧れていたな』

『待ってバイロクスそれ初耳なんだけど』

苦笑しながら俺はバイロクスに言った

『で、ライは帝国の統一時にフレオとローズの3人で戦災孤児になってさ。新米Dr.だったフリットさんが当時出張救護に来てて、プランスールに連れ帰って、養子縁組したんだよね。その前にあたしが世話になってるあそこの孤児院あるでしょ?そこであたしとライたちは出逢った』

ペリドットが林檎を転がしながら答える。

『……戦災孤児に……』

エステルはその言葉を聞いて胸が痛むのを感じた。横にいたリタは大して興味なさそうにはしていたが、雰囲気が変わったエステルを見つめる

『何処の異世界でも戦争はあるんだな。』

ユーリだ。フレンも深刻そうな顔をしていた

『まぁこの世界でのことは、この世界でケリをつける必要はあるから、貴方たちが気にしなくてもいいのよ』

イネスの微笑みにエステルはイネスを見て、胸に刺さる痛みを呑み込んだ

俺の話などしても何の得になるのかは分からないんだけどなと思っていると香ばしい紅茶やコーヒーの薫りが応接間内を満たす。コーヒーの薫りはコーヒーメーカーから、紅茶は温かいティーポットからだ。

普通の紅茶の他、ハーブティーもある。
ヘンゼラから支給品として色々な種類の紅茶の茶葉や、遥か何処かの東国から届いた緑茶の茶葉、コーヒー豆がこのプランスールに届いたのだ。

久々にオーブ夫妻とその娘のアンにも出逢えた。

少し身長が伸び、女の子らしさも出てきたアンと再会したクンツァイトが通じていないようで通じている会話をしていたのは、つい最近のことである

しばらくオーブ夫妻たちもこのプランスールに留まるらしく、早速同い年ぐらいのリルハちゃんとアンが仲良くなっていたなぁと淹れてもらったブラックコーヒーを見つめながら思い出した

『すごい!緑茶もあるんだ』

合流した来葉とレイミがしばらくお目にかかれないだろうと思っていた日本茶というらしい緑色の液体に感動していた。そういえばレイミと来葉ちゃんは地球人、それも日本人だということを忘れかけていた

『見たことない色の飲み物です。でもすごくいい薫り』

エステルが興味深そうにその日本茶と呼ばれる飲み物を見ている

『美味しいよね、日本茶。僕は抹茶入りの緑茶とか好きだな』

エッジとレイミがいた時空圏の地球は、第三次世界大戦の折に化学物質や放射能のせいで荒れ果て、おおよそ生物が住めない場所へとなってしまっている。

彼らが宇宙開拓へと乗り出したのはそれが理由なのである

しかし日本茶のことは知ってはいたらしい

『…マッチャ…本で読んだことあります!確か東国の文化の一つなんですよね』

さすが読書好きで博識のエステルであった

『エステルすごいね!本当に読書家だね』

来葉の言葉にエステルは微笑んだ

『暇があればいつも本を読んでます。お城暮らしをしていた時は、唯一の楽しみみたいなものでしたから』

ご存知の通りエステルは非常に読書家である。

エステルはザーフィアスの城で軟禁状態で過ごしてきた。いつも通りユーリがデコとボコ、正しくはアデコールとボッコスと戯れて、牢屋に放り込まれ、脱獄していたときにエステルと出逢ったのだという

軟禁状態の時に城の本を読み漁っていたのでその時に知識を吸収していたとか
そういえばエステルの読書好きのことを聞いて、シリスも読書好きだったなとふと俺は思い出す

何故こんな時にあの男の顔が浮かぶのかとか今更思って、俺は皆に気付かれないように軽くため息をついた

軽く冷めてきたブラックコーヒーを一口飲むと、爽やかな薫りが鼻腔を擽った

『ライ、起きていて身体の方は大丈夫なのか?』

八雲を見送ったのち、ミレイシアはこの場に残りこの街の復興に尽力してくれている。

火属性の彼女は冷え込みが強い時に頼りになるのだ。

被害を受けた住民や、子供たちにも彼女は人気者である。元々子供が好きな彼女も楽しそうにしている

わりと八雲も危ない死地にいることが多いので、その身1つで戦っている。

格闘術に加え、前の組織頃からの相棒であるピストルも持ってはいるのだが。

で、以前侵入していた組織でミレイシアと出逢ったらしい。

八雲曰く、一目惚れでした。の一言でその時は済まされてしまったのだが、俺もセレナというパートナーがいるので分からんでもない。彼女たちは美しい。
それ故に高値で売り買いされている。彼女たちのいた世界では、そういったことが当たり前のように行われている。

俺がセレナと出逢った時も、彼女は悪いお貴族様に正に売り飛ばされそうになっていた時に出逢ったのだから。

そのために以前出逢った、彼女たちを守るための組織も存在するのは知ってはいるだろう

『ありがとミレイシアちゃん。まだ本調子とまでは行かないけど、この二週間でだいぶマシにはなった』

エッジたちに艦の修理素材を届ける傍ら、久しぶりにのんびりできたので徐々に回復もしてきた。

『そうか。八雲が毎日お前の容態を聞いてくるのでな。割と面倒くさいんだ。アイツ、口を開けば大体お前のことばかりだから。……ん。やはりセレナのミルクましましミルクティーは絶品だな』

ミルクたっぷりのミルクティーを飲みながらミレイシアはため息をついた。
ミルクたっぷりのミルクティーが大好きなミレイシア。

その傍らには取皿にケーキ、クッキー、アップルパイとたくさんスイーツが乗っていた。もちろん全部料理得意な連中の手作りだ。

ユーリ監修甘さ控えめアップルパイは俺でも食べれる甘さのアップルパイなので、一つ拝借した。

ミレイシアはこの見た目で甘党らしい。
運動量が違うので、実質カロリーは0とかいっていたが限度も考えているのでその辺りは多分大丈夫だろうと思う。

『ねぇ来葉ちゃん、ディオネってどんな惑星なの?』

同じくオレンジジュースとクレームブリュレを頬張りながらリルハちゃんが、りんごのタルトを綺麗にナイフとフォークを手慣れた手付きで使いながら、優雅に頂いている来葉ちゃんに聞いた

来葉ちゃんは有名財閥の社長令嬢であり、根っからのお嬢様である

一度食べる手を止めて、来葉ちゃんはリルハちゃんに視線を向けた

『えっとね、人間といろんな種族が共生している惑星で、王都がある大陸以外は領主制の惑星だよ。』

【人間といろんな種族】という単語にその場にいた者たちは首を傾げた

『いろんな種族?』

好奇心旺盛なエステルとリルハは顔を見合わせた。来葉がそんな二人を一瞥したのち、紅茶を一口、口にする

『人間以外に、何か別の種族がいるってのか?』

これには俺も驚いた。異世界渡りをしているイスリーのおかげで、俺はそう言った者たちとは僅かながら面識がある。

俺が知っている異星人は精々亜人や魔族レベルである。まぁ物語などでは定番の種族だが

『ディオネは、人間と多種多様な種族が共生している惑星なんだ。人間以外には、獣に近い種族の亜人や妖精、魔族とか天使とかたくさんいるよ』

『魔族!?魔族ってあの魔族?魔物とは違うの?』

ルーシィの最もな質問に来葉ちゃんは続ける

『魔物は確かにいるけど、魔族とはまた違う存在なの。確かに使い魔として魔物を使役してる人もいるよ。魔族はね、魔世界というディオネとは別の領域に住んでる種族なの。彼らが得意としてるのは主に、死者の罪過の選別。』

死者の罪過の選別、とは。という顔を全員した

来葉ちゃんの話によると、ディオネは地上界と魔世界に別れており、人間や亜人のような者たちは地上界に住んでおり、魔族は門を隔てたその先に居を構えているらしい。よくある話だが、改めて聞くとかなり壮大な話しだと思う

『死者の罪過の選別に関しては、私より私の部下の子たちや、ディオネの騎士団にいる魔族の男の子に聞いたほうが詳しいと思うよ。』

含みを持たせた来葉の微笑みに、その場が一瞬だけ凍りついた気配がしたのは気のせいだと思いたい。

『そういえば、ディオネには誰が来るの?私達カルナスの乗組員だけでひとチームだから、カルナスの乗組員全員は行くけど』

レイミの質問に全員が難しい顔をした

『シングたちがこの世界を離れるのは不味いしな。歪みを閉じたとはいえ、まだゼロムの生き残り、暴星魔物もいるし。』
 
快復したアスベルとシェリアは顔を見合わせた。

『そうだな。この世界だと俺とシェリアしか暴星魔物は対抗策は持っていないし、シングたちのソーマはゼロムを倒すのにも、デスピル病の治療にも必要不可欠だ』

左右色違いの瞳を細めて、紅茶の色を見つめるアスベル。

『うん。悔しいけど、暴星魔物はアスベルたちがいないとオレたちにはキツイね。暴星魔物を任せっきりになるけど……そのぶん、オレたちがゼロムを討伐するよ。』

シングが相棒のアステリアを撫でる。

『なら、ライもここに残る方がいいんじゃない?』

リタが相変わらず本に目を向けながらだが発言した

『いいえ、ライにはこのまま来葉たちについてもらうつもりよ。』

イネスだ

『いいの、ライくん?』

来葉がライに視線を向ける

『ん?あぁ。この惑星はシングたちとアスベルたちに任せればいいさ。俺はイネスたちとの連絡係。俺しかこいつらと連絡取れねぇし。』 

『あ、そっか!あたしたちソーマリンクしてないもんね!』

ルーシィだ。

ソーマリンクはソーマ使い同士にしか起こらない現象である。ソーマがあればリンクしている間に俺とシングたちの間に何が起きてるのかは大体わかるし、連絡係にはうってつけなので俺はこのままディオネへの渡航は決定している

それに、あちらにシリスがいると分かった以上、これは俺自身が決着を付けなければならない事。

ジルファのこともあるし、ディオネには俺が行くべきである

『あちらには、来葉の仲間、それから同業者もいると聞いたわ。その同業者と来葉の仲間たちとコンタクトを取って欲しいの。必要ならば支援もしたいから』

イネスの的確な指示に、この場にいる全員は異存なさそうである。

『カルセドニー様、パライバ様より伝令です』

慌ただしく鎧の音を鳴らしながら、1人の帝国の兵士が談話室に入ってきた

『パライバ様から?聞こう』

カチャリとソーサーにカップを置いてカルセドニーはその帝国兵に近寄った。

『は、砂漠に群れを成しているゼロムと暴星魔物を次々と倒している女の子がいたとの報告が』

暴星魔物とゼロムの群れを次々と倒している女の子、と聞いて、その場にいた全員が戦慄したし、持っていたカップを落としそうになる者もいた

『ま、待ってください暴星魔物とゼロムの群れですよね!?』

俺らの頼れるリーダーシングは椅子から落ちかけながらもその伝令兵を見た

『……ええ、そうなんです。特に、暴星魔物はアスベル様とシェリア様のような特殊な力でないとあの強固なバリアを壊せないと聞きましたが……しかし、その強固なバリアをいとも容易く叩き割り、暴星魔物を真っ二つに両の手に装備したその、ペリドット様と同じような武器で……』

それを聞いて、全員がペリドットに視線を向けた

『は!?いやいや、アタシじゃないってば!?そもそもアタシはずっとプランスールで隊長の護衛してたじゃん!!』

ペリドットの応えは正解だった。

『……………………………な、ちょっと待てよ』

それ以上に驚いているのは、他の誰でもない。そう、黒髪の少女だ。

『………ロリセ?』

コハクが心配そうにロリセを見た 

『その女の子の特徴、出来るだけ詳しく。』

彼女にしては珍しく切羽詰まった、ほとんど表情は変わらないのだが……
帝国兵に歩み寄り、カルセドニーと話を聞いていたと思えば

僅かにそのいつも凛とした表情が、本当に僅かだが崩れたのを俺は見逃さなかった

それにしてもあのシェヘラ砂漠とはまたとんでもない場所だと思った

何を隠そうライは暑いのが大の苦手だ。それを思うとまだしばらくは彼の機嫌はわるいままだろうと、この場にいた全員は思った。

〜TO BE CONTINUE〜
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