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神03

ふわりと、爽やかな香りが吹き抜けた。
振り返った先に、憧れの神先輩の姿。部活に向かう途中なのだろう、肩から重そうなエナメル鞄をさげている。

(なんの匂いだろう。香水……なのかな。でも、神先輩がそんなのつけるかな)

そんなことを考えながらじっと見ていると、神先輩がふいにこちらを振り返った。
わたしに気づくと、やわらかく微笑んでこちらに歩いてくる。

「どうしたの? なんだかすごく見つめられてるみたいだけど、俺になにかついてる?」

言いながら首をめぐらせて自身の体を確認する神先輩に、わたしは慌てて首を振る。

「あ、いえ。神先輩すごく良い香りがすると思って……」
「良い香り? ――ああ、これかな」

ときめく胸を隠してなんとかそれだけ言うと、神先輩がごそごそと持っていたエナメル鞄を探った。
そこから取り出した制汗デオドラントウォーターをすっと差し出してくる。

「最近暑くなってきたから、この前買ったんだよ。そんなに気に入ったなら使う? つけたところがスッとして気持ち良いよ」
「えっ。いいんですか?」
「どうぞ」

差し出されたそれを受け取って、首と肩と腕にさっそくつけた。
お礼を言って神先輩にボトルを返す。
つけたその場所からふわりと神先輩とまったく同じ香りがして、なんだか抱きしめられているような気持ちがしてどきどきした。
自然と顔が赤くなる。神先輩に見られたら気持ちがばれてしまう気がして慌てて顔を伏せると、ふいに神先輩のくすくす笑う声がした。
見上げると、いたずらな表情をした神先輩が、じっとわたしを見つめてくる。

「同じ香りを纏うのっていいね。君は俺のものって印みたい」
「――えっ!?」
「じゃあ、部活がんばろうね」

神先輩は優しく笑うと、呆然とその場に立ちすくむわたしを置いて、体育館へと消えて行った。





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