曇り時々雨のち晴れ
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「…………」
体育館脇の壁に隠れるようにして鈴乃は立っていた。
視線の先には宗一郎と亜梨紗がいる。
どこからどう見ても美男美女で、お似合いカップルだ。
連れたって出て行った二人に嫌な予感を感じ思わずあとをつけてしまったが、そこから先どうすることもできなかった。
(なにやってるんだろ……)
鈴乃は目の前の二人から視線を外すと、ふうと空を見上げた。
まるで絵の具で書いたような真っ青な空を、綿飴のような雲がゆっくりと流れていく。
鈴乃の心とは正反対の爽やかな青空が、よりいっそう自分のことをみじめにするような気がした。
鈴乃はもう何度目になるかわからないため息を零すと、くるりと踵を返した。
体育館へ戻ろう。鈴乃が足を踏み出したところで、突然、亜梨紗の声が耳に飛び込んできた。
「――宗一郎君、好き!」
「!」
鈴乃は思わず、反射的に後ろを振り返った。
宗一郎の胸に飛び込む亜梨紗。
「わたし、ずっとずっと宗一郎君のことが好きだったの。ライバル校だから諦めようって何度も思ったんだけど、でもダメだった……! 好きなの、宗一郎君。もうどうしようもないの!」
「亜利紗ちゃん……」
宗一郎が驚いたように目を見開いた。
鈴乃の胸が、どくどくと激しく音を立てる。
宗一郎の答えなんか決まってる。
宗一郎にとって亜梨紗は、理想が手足をつけて歩いているようなものだ。
このさきなんか聞きたくなんかないのに、足がすくんで動くことが出来ない。
(やだ。宗くん……やだよ……)
永遠にも思われる沈黙のあと、宗一郎が微笑むのが見えた。
ドクリ、と心臓が一際大きく拍動した。
「ありがとう」
その時、なにかが鈴乃の中で音を立てて崩れていくような気がした。
宗一郎の腕がまるでスローモーションのようにゆっくりと亜梨紗に伸びる。
その腕の行き先を鈴乃は最後まで見届けることなく、その場から逃げるように身をひるがえした。
いま。なにが起こったのか。
脳が機能を全て停止してしまったみたいで、何も考えられない。
心臓が耳元で鳴っている。
なぜか世界がまわって見える。
ただそれだけで。状況がなにもつかめない。
今見たものは、なんだったのか。
よくわからない。
今の鈴乃を突き動かしているのは、とにかくあの場所から少しでも離れたいという衝動だけだった。
足をもつれさせながらも必死で駆ける鈴乃は、そのとき急に体育館から出てきた誰かに思いっきり衝突した。
「ぉわ!」
突然衝撃を受け、目の前の人物が驚いて上げた声が、鈴乃の耳に数拍遅れて届く。
「あ、ごめん……なさい……」
「いや、俺もよそ見してたから……って、君どうしたの?」
「え?」
「泣いてる」
「……え?」
鈴乃は言われて自分の頬に手を当てた。
触れてみると、確かにそこは濡れていた。
体育館脇の壁に隠れるようにして鈴乃は立っていた。
視線の先には宗一郎と亜梨紗がいる。
どこからどう見ても美男美女で、お似合いカップルだ。
連れたって出て行った二人に嫌な予感を感じ思わずあとをつけてしまったが、そこから先どうすることもできなかった。
(なにやってるんだろ……)
鈴乃は目の前の二人から視線を外すと、ふうと空を見上げた。
まるで絵の具で書いたような真っ青な空を、綿飴のような雲がゆっくりと流れていく。
鈴乃の心とは正反対の爽やかな青空が、よりいっそう自分のことをみじめにするような気がした。
鈴乃はもう何度目になるかわからないため息を零すと、くるりと踵を返した。
体育館へ戻ろう。鈴乃が足を踏み出したところで、突然、亜梨紗の声が耳に飛び込んできた。
「――宗一郎君、好き!」
「!」
鈴乃は思わず、反射的に後ろを振り返った。
宗一郎の胸に飛び込む亜梨紗。
「わたし、ずっとずっと宗一郎君のことが好きだったの。ライバル校だから諦めようって何度も思ったんだけど、でもダメだった……! 好きなの、宗一郎君。もうどうしようもないの!」
「亜利紗ちゃん……」
宗一郎が驚いたように目を見開いた。
鈴乃の胸が、どくどくと激しく音を立てる。
宗一郎の答えなんか決まってる。
宗一郎にとって亜梨紗は、理想が手足をつけて歩いているようなものだ。
このさきなんか聞きたくなんかないのに、足がすくんで動くことが出来ない。
(やだ。宗くん……やだよ……)
永遠にも思われる沈黙のあと、宗一郎が微笑むのが見えた。
ドクリ、と心臓が一際大きく拍動した。
「ありがとう」
その時、なにかが鈴乃の中で音を立てて崩れていくような気がした。
宗一郎の腕がまるでスローモーションのようにゆっくりと亜梨紗に伸びる。
その腕の行き先を鈴乃は最後まで見届けることなく、その場から逃げるように身をひるがえした。
いま。なにが起こったのか。
脳が機能を全て停止してしまったみたいで、何も考えられない。
心臓が耳元で鳴っている。
なぜか世界がまわって見える。
ただそれだけで。状況がなにもつかめない。
今見たものは、なんだったのか。
よくわからない。
今の鈴乃を突き動かしているのは、とにかくあの場所から少しでも離れたいという衝動だけだった。
足をもつれさせながらも必死で駆ける鈴乃は、そのとき急に体育館から出てきた誰かに思いっきり衝突した。
「ぉわ!」
突然衝撃を受け、目の前の人物が驚いて上げた声が、鈴乃の耳に数拍遅れて届く。
「あ、ごめん……なさい……」
「いや、俺もよそ見してたから……って、君どうしたの?」
「え?」
「泣いてる」
「……え?」
鈴乃は言われて自分の頬に手を当てた。
触れてみると、確かにそこは濡れていた。