曇り時々雨のち晴れ
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授業終了のチャイムが鳴る。
鈴乃は、シャーペンを筆箱にしまい、教科書をとんと整えた。
これで、今日の全授業は終了だ。
授業を終えた教師が教室から出て行くのを眺めながら、鈴乃は、今朝担任の先生が午後から出張に出ると言っていたのを思い出す。
(帰りのHRはないんだっけ)
それなら、あとは帰るだけだ。
鈴乃は、机に下げているかばんを手に取ると、帰り支度を始めた。
部活動の盛んな海南大附属高校で、鈴乃のような帰宅部は珍しい。
部活に入らなかったのは、実家の営む和菓子屋を手伝うためだ。
明治創業の鈴乃の実家、五十嵐屋は今も全国各地で愛されていて、日々とても忙しい。
最近ではインターネットの通販も始めたらしく、ありがたいことにこの不景気にかかわらず、店の売り上げは落ちるどころか上昇傾向にある。
鈴乃は、部活に赴くクラスメイトたちの別れの挨拶に笑顔を返しながら、自分も帰ろうと席を立つと、突然その肩を叩かれた。
「鈴乃」
振り向くと、目の前に広がるやさしい笑顔。
クラスメイトで鈴乃の想い人。神宗一郎だ。
「宗くん。どうしたの?」
「もしよければ、また練習を見ていかない?」
そう言って、にっこりと笑う宗一郎。
鈴乃は、学校を出る前に確認した五十嵐屋の発注リストを思い浮かべる。
うん。今日は大口の注文はなかったはずだ。店を手伝わなくても支障はないだろう。
「――じゃあ、そうしよっかな」
少し考えて笑顔で答える鈴乃に、宗一郎はうれしそうに微笑んだ。
「ぜひそうして。もちろん、帰りは家まで送っていくし」
「え? いいよ、悪いもの」
「なんで? 俺が誘ってるのに、ひとりで帰らすほうが極悪だよ。俺が鈴乃に練習を見ててもらいたいだけなんだから、送らせてよ」
「でも……いいの? 宗くん、練習で疲れてるのに」
「もちろん。俺、嫌なこと自分から言い出すほど、良いヤツじゃないよ。じゃあ、行こうか。貸して、かばん持つよ」
言うが早いか、鈴乃のかばんは宗一郎に奪い取られた。
「あ、もう。宗くんって、優しいくせに意外と強引だよね」
「あれ? そう? もしかしてそういう男は嫌い?」
「え!? いや、そういうわけじゃ……」
突然の質問に顔を赤らめていると、宗一郎はおもしろそうに頬を緩めて笑った。
「ふふ、ならよかった。そういえば、今日は練習試合なんだよ」
「練習試合? へえ、どことやるの?」
「翔陽」
「しょ、翔陽……」
翔陽高校。そこには、宗一郎がタイプだと言っていた、かわいらしいマネージャーがいる。
聞きなじみのある対戦校に、鈴乃の頬が一瞬引きつった。
「ラ、ライバル校だもんね。そんなところと練習試合だなんて、楽しみだなあ。今日はギャラリーも多そうだね」
「ん~、どうかな。今回の練習試合は急に決まったし、特に公表もしてないからね。そんなにいないんじゃない?」
「ふふ、そんなことないよ。海南バスケ部は、宗くんも牧先輩もノブくんもいて、ただでさえ人気が高いのに、それに加えて翔陽の藤真さんでしょ? きっとどこからともなく嗅ぎつけて、わんさかいるに決まってるよ」
「うーん……。それはやりにくいな」
心底嫌そうに言う宗一郎に、鈴乃はおかしくなって笑い声を上げた。
「あはは! でも、宗くんの活躍、楽しみにしてる! またいつもみたいにバシバシスリーポイント決めてね!」
鈴乃は、シャーペンを筆箱にしまい、教科書をとんと整えた。
これで、今日の全授業は終了だ。
授業を終えた教師が教室から出て行くのを眺めながら、鈴乃は、今朝担任の先生が午後から出張に出ると言っていたのを思い出す。
(帰りのHRはないんだっけ)
それなら、あとは帰るだけだ。
鈴乃は、机に下げているかばんを手に取ると、帰り支度を始めた。
部活動の盛んな海南大附属高校で、鈴乃のような帰宅部は珍しい。
部活に入らなかったのは、実家の営む和菓子屋を手伝うためだ。
明治創業の鈴乃の実家、五十嵐屋は今も全国各地で愛されていて、日々とても忙しい。
最近ではインターネットの通販も始めたらしく、ありがたいことにこの不景気にかかわらず、店の売り上げは落ちるどころか上昇傾向にある。
鈴乃は、部活に赴くクラスメイトたちの別れの挨拶に笑顔を返しながら、自分も帰ろうと席を立つと、突然その肩を叩かれた。
「鈴乃」
振り向くと、目の前に広がるやさしい笑顔。
クラスメイトで鈴乃の想い人。神宗一郎だ。
「宗くん。どうしたの?」
「もしよければ、また練習を見ていかない?」
そう言って、にっこりと笑う宗一郎。
鈴乃は、学校を出る前に確認した五十嵐屋の発注リストを思い浮かべる。
うん。今日は大口の注文はなかったはずだ。店を手伝わなくても支障はないだろう。
「――じゃあ、そうしよっかな」
少し考えて笑顔で答える鈴乃に、宗一郎はうれしそうに微笑んだ。
「ぜひそうして。もちろん、帰りは家まで送っていくし」
「え? いいよ、悪いもの」
「なんで? 俺が誘ってるのに、ひとりで帰らすほうが極悪だよ。俺が鈴乃に練習を見ててもらいたいだけなんだから、送らせてよ」
「でも……いいの? 宗くん、練習で疲れてるのに」
「もちろん。俺、嫌なこと自分から言い出すほど、良いヤツじゃないよ。じゃあ、行こうか。貸して、かばん持つよ」
言うが早いか、鈴乃のかばんは宗一郎に奪い取られた。
「あ、もう。宗くんって、優しいくせに意外と強引だよね」
「あれ? そう? もしかしてそういう男は嫌い?」
「え!? いや、そういうわけじゃ……」
突然の質問に顔を赤らめていると、宗一郎はおもしろそうに頬を緩めて笑った。
「ふふ、ならよかった。そういえば、今日は練習試合なんだよ」
「練習試合? へえ、どことやるの?」
「翔陽」
「しょ、翔陽……」
翔陽高校。そこには、宗一郎がタイプだと言っていた、かわいらしいマネージャーがいる。
聞きなじみのある対戦校に、鈴乃の頬が一瞬引きつった。
「ラ、ライバル校だもんね。そんなところと練習試合だなんて、楽しみだなあ。今日はギャラリーも多そうだね」
「ん~、どうかな。今回の練習試合は急に決まったし、特に公表もしてないからね。そんなにいないんじゃない?」
「ふふ、そんなことないよ。海南バスケ部は、宗くんも牧先輩もノブくんもいて、ただでさえ人気が高いのに、それに加えて翔陽の藤真さんでしょ? きっとどこからともなく嗅ぎつけて、わんさかいるに決まってるよ」
「うーん……。それはやりにくいな」
心底嫌そうに言う宗一郎に、鈴乃はおかしくなって笑い声を上げた。
「あはは! でも、宗くんの活躍、楽しみにしてる! またいつもみたいにバシバシスリーポイント決めてね!」
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