CASE:神
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「あ、うん。この人は俺の……」
「彼女です……っ」
「えっ!?」
宗一郎の言葉の先を奪うようにして結花がそう言うと、ぎょっとした二人が同時に驚きの声をあげた。
「どうしたの、柏木。だって、隠しておきたいんじゃ……」
「やっぱりイヤ……っ。神くんのこと好きなのに、せっかく彼女になれたのに、なのにこんなんじゃ、なんにも変わらない。ううん、前よりもどんどん、神くんを遠く感じるよ……っ。自分からお願いしたくせに、約束の一週間にもならないうちにこんなこと言うなんて、自分でもなんていい加減なんだろうって思ってる。でも、やなの。やっぱり、いや……。否定しないで、神くん。わたしが彼女だって言って。いないなんて言ったら、やだよぉ……っ!」
「…………」
ありったけの想いをぶつけると、いよいよ涙がとまらなくなった。
なんて勝手なせりふだろう。
胸は今にも千切れんばかりに痛くて、呼吸するたんびにびりびりと電流が走るようだった。
宗一郎の表情は涙で霞んで見えなかったけど、きっと困っているに違いない。
自分から言い出したお願いに耐え切れなくなって勝手に大泣きして彼を困らせて、いったいなにをやっているんだろう。
激しい自己嫌悪が結花を襲う。
黙ったままの時間が、とても痛かった。
これ以上彼を困らせる前に、早く泣き止まなくては。
必死になって涙を止めようと結花が俯くと、ふいに宗一郎の声が響いた。
「――ごめん、ノブ。ちょっと今日はもう帰ってくれる?」
戸惑っているけれど、微かに明るい色を含んだ宗一郎の声。
おそるおそる顔をあげると、少しだけ頬を染めた宗一郎が、眉を下げて結花に微笑んだ。
「ラジャッス!」
少年が心得た表情で元気良く頷いて、矢のように体育館を出て行く。
それを最後まで見送ってその背中が見えなくなった途端、結花は宗一郎に抱き寄せられた。
宗一郎の腕は、驚いて体を強張らせる結花を、さらにきつく抱きしめる。
「かわいい……」
「え?」
ぽそりと呟かれた言葉が聞き取れなくて反問すると、宗一郎がなんでもないというように微笑んだ。
涙の盛り上がった瞳でじっと見つめる結花に優しく目を細めて、宗一郎が言う。
「よかった、そう言ってくれて。正直、俺もかなりしんどかったから」
結花の頬をまた涙が滑り落ちる。
返事の代わりにぎゅっと宗一郎の体にしがみついた。
宗一郎が吐息だけで笑う。そして、不思議そうに言った。
「でも、どうして泣いてるの? 俺はもともと隠すことには乗り気じゃなかったし、泣かなくても大丈夫だったのに」
「あの、ね……。ほんとうは神くんの部活が終わったらこの事を話そうと思って待ってたの。そしたら、さっきの男の子と話してるのが聞こえてきて……」
「うん」
「秘密にしたいって、そうお願いしたのはわたしのはずなのに、彼女いるのって聞かれて、神くんがいないよって答えたとき、自分でもびっくりするくらいすごくショックだったの。神くんに、まるでわたしのこと好きじゃないって言われたような気がして……。神くんは、ただわたしとの約束を守ってくれただけだったのに……っ」
どういう表情をしていいかわからなくて、隠れるように宗一郎の胸に顔を押しつけてそう言うと、その胸が小さく震えた。
どうして笑われているのかわからなくておそるおそる顔をあげると、優しく結花を見つめる宗一郎と視線がぶつかって、どきんと高く心臓が鳴った。
それをきっかけに、思い出したようにどきどきと胸が早鐘を打ち始める。
宗一郎は壊れ物に触るようにそっと結花の頬を流れる涙を拭うと、ふんわりと表情をほころばせた。
「そうだったんだ。悲しい思いさせちゃってごめんね。これからは彼女がいるか聞かれたら、ちゃんと柏木だって言うから」
「……うん……っ!」
「じゃあ、改めてこれからよろしくね。俺のかわいい彼女さん」
こつんと額を触れ合わせると、二人は穏やかに微笑みあった。
「彼女です……っ」
「えっ!?」
宗一郎の言葉の先を奪うようにして結花がそう言うと、ぎょっとした二人が同時に驚きの声をあげた。
「どうしたの、柏木。だって、隠しておきたいんじゃ……」
「やっぱりイヤ……っ。神くんのこと好きなのに、せっかく彼女になれたのに、なのにこんなんじゃ、なんにも変わらない。ううん、前よりもどんどん、神くんを遠く感じるよ……っ。自分からお願いしたくせに、約束の一週間にもならないうちにこんなこと言うなんて、自分でもなんていい加減なんだろうって思ってる。でも、やなの。やっぱり、いや……。否定しないで、神くん。わたしが彼女だって言って。いないなんて言ったら、やだよぉ……っ!」
「…………」
ありったけの想いをぶつけると、いよいよ涙がとまらなくなった。
なんて勝手なせりふだろう。
胸は今にも千切れんばかりに痛くて、呼吸するたんびにびりびりと電流が走るようだった。
宗一郎の表情は涙で霞んで見えなかったけど、きっと困っているに違いない。
自分から言い出したお願いに耐え切れなくなって勝手に大泣きして彼を困らせて、いったいなにをやっているんだろう。
激しい自己嫌悪が結花を襲う。
黙ったままの時間が、とても痛かった。
これ以上彼を困らせる前に、早く泣き止まなくては。
必死になって涙を止めようと結花が俯くと、ふいに宗一郎の声が響いた。
「――ごめん、ノブ。ちょっと今日はもう帰ってくれる?」
戸惑っているけれど、微かに明るい色を含んだ宗一郎の声。
おそるおそる顔をあげると、少しだけ頬を染めた宗一郎が、眉を下げて結花に微笑んだ。
「ラジャッス!」
少年が心得た表情で元気良く頷いて、矢のように体育館を出て行く。
それを最後まで見送ってその背中が見えなくなった途端、結花は宗一郎に抱き寄せられた。
宗一郎の腕は、驚いて体を強張らせる結花を、さらにきつく抱きしめる。
「かわいい……」
「え?」
ぽそりと呟かれた言葉が聞き取れなくて反問すると、宗一郎がなんでもないというように微笑んだ。
涙の盛り上がった瞳でじっと見つめる結花に優しく目を細めて、宗一郎が言う。
「よかった、そう言ってくれて。正直、俺もかなりしんどかったから」
結花の頬をまた涙が滑り落ちる。
返事の代わりにぎゅっと宗一郎の体にしがみついた。
宗一郎が吐息だけで笑う。そして、不思議そうに言った。
「でも、どうして泣いてるの? 俺はもともと隠すことには乗り気じゃなかったし、泣かなくても大丈夫だったのに」
「あの、ね……。ほんとうは神くんの部活が終わったらこの事を話そうと思って待ってたの。そしたら、さっきの男の子と話してるのが聞こえてきて……」
「うん」
「秘密にしたいって、そうお願いしたのはわたしのはずなのに、彼女いるのって聞かれて、神くんがいないよって答えたとき、自分でもびっくりするくらいすごくショックだったの。神くんに、まるでわたしのこと好きじゃないって言われたような気がして……。神くんは、ただわたしとの約束を守ってくれただけだったのに……っ」
どういう表情をしていいかわからなくて、隠れるように宗一郎の胸に顔を押しつけてそう言うと、その胸が小さく震えた。
どうして笑われているのかわからなくておそるおそる顔をあげると、優しく結花を見つめる宗一郎と視線がぶつかって、どきんと高く心臓が鳴った。
それをきっかけに、思い出したようにどきどきと胸が早鐘を打ち始める。
宗一郎は壊れ物に触るようにそっと結花の頬を流れる涙を拭うと、ふんわりと表情をほころばせた。
「そうだったんだ。悲しい思いさせちゃってごめんね。これからは彼女がいるか聞かれたら、ちゃんと柏木だって言うから」
「……うん……っ!」
「じゃあ、改めてこれからよろしくね。俺のかわいい彼女さん」
こつんと額を触れ合わせると、二人は穏やかに微笑みあった。
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