CASE:神
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「神さん、ほんとうモテるッスよねー」
その言葉に、ぎくりと結花の体が強張る。
「なに、いきなり」
「今日また告白されてたじゃないっスか」
瞬間結花の心臓が凍りついた。
告白? 宗一郎が?
しかも少年の口ぶりだと、今日が特別というわけでもなさそうだった。
ドクドクと胸が騒ぎ出す。
「……見てたの」
「いや、見てたっていうか、水道で顔洗おうと思ったらたまたま目撃しちゃったっていうか!」
「ふうん。それで、最後まで黙って見ていったってわけ?」
宗一郎の冷たい声音に、少年が慌てたように声を上擦らせる。
「いや、あの、その、でも声までは聞こえなかったっていうか、あの雰囲気でそうかなって、その……すいませんでしたっ!」
宗一郎が小さく苦笑する。
「いや、いいよ。あんなところじゃ見られても仕方ないしね」
「フっちゃったんスか?」
「うん」
「えー、もったいない! めっちゃキレーな人だったじゃないっスか!」
「好きじゃないんだからしょうがないだろ」
「ちぇー、神さん案外固いなぁ。あ、もしかして実は彼女とかいるんじゃないんスか?」
からかうような少年の問いかけに、結花の心臓が高鳴った。
甘い期待のようなものが胸を掠める。
あの少年とは気心の知れた間柄みたいだし、もしかしたら宗一郎もこの場だけはこっそり認めるかもしれない。
そうして内緒だよ、なんて少年にちゃっかり口止めをしたりするかもしれない。
逸るように心臓が速度を上げる。
けれど。
「いないよ」
きっぱりと、なんの迷いもない声で、宗一郎がそう言った。
ガンと金属のような硬いもので頭を殴られたような衝撃が走る。
思わず体育館の様子を覗き込むと、なんでもない顔でいつものように微笑んでいる宗一郎の横顔が見えた。
ぎゅっと心臓が小さくなったようになって、鼻の奥がツンと痛くなった。
「…………」
言葉にならない思いが、ボロボロと結花の瞳から溢れ出す。
胸が、苦しい。
ほんとうなら自分との約束をきちんと守ってくれている宗一郎に感謝するべきところなのに、「いないよ」という言葉は思ってもみない破壊力を持って結花の心を打ち砕いて、涙を止めることができなかった。
内緒にするということは、こういうことだ。
彼女などいないと、自分の存在を、宗一郎の自分への気持ちを、完全に無いものとすること。
これが、自分の望んだことだった。
「や、だぁ……」
知らないうちに声が出ていて、宗一郎と少年の二人がこちらを振り向いた。
「えっ、柏木!?」
結花に気付いた宗一郎が慌てたようにこちらへ駆けて来る。
「どうしたの、こんな時間に……て。え、泣いて……。なにかあったの? 誰かになにかされた?」
結花は泣きながら、ただ黙って首を横に振った。
張りつめた表情で真剣な声を出す宗一郎に、後輩の少年は少しだけものめずらしそうな顔をする。
「神さん、知り合いですか?」
その言葉に、ぎくりと結花の体が強張る。
「なに、いきなり」
「今日また告白されてたじゃないっスか」
瞬間結花の心臓が凍りついた。
告白? 宗一郎が?
しかも少年の口ぶりだと、今日が特別というわけでもなさそうだった。
ドクドクと胸が騒ぎ出す。
「……見てたの」
「いや、見てたっていうか、水道で顔洗おうと思ったらたまたま目撃しちゃったっていうか!」
「ふうん。それで、最後まで黙って見ていったってわけ?」
宗一郎の冷たい声音に、少年が慌てたように声を上擦らせる。
「いや、あの、その、でも声までは聞こえなかったっていうか、あの雰囲気でそうかなって、その……すいませんでしたっ!」
宗一郎が小さく苦笑する。
「いや、いいよ。あんなところじゃ見られても仕方ないしね」
「フっちゃったんスか?」
「うん」
「えー、もったいない! めっちゃキレーな人だったじゃないっスか!」
「好きじゃないんだからしょうがないだろ」
「ちぇー、神さん案外固いなぁ。あ、もしかして実は彼女とかいるんじゃないんスか?」
からかうような少年の問いかけに、結花の心臓が高鳴った。
甘い期待のようなものが胸を掠める。
あの少年とは気心の知れた間柄みたいだし、もしかしたら宗一郎もこの場だけはこっそり認めるかもしれない。
そうして内緒だよ、なんて少年にちゃっかり口止めをしたりするかもしれない。
逸るように心臓が速度を上げる。
けれど。
「いないよ」
きっぱりと、なんの迷いもない声で、宗一郎がそう言った。
ガンと金属のような硬いもので頭を殴られたような衝撃が走る。
思わず体育館の様子を覗き込むと、なんでもない顔でいつものように微笑んでいる宗一郎の横顔が見えた。
ぎゅっと心臓が小さくなったようになって、鼻の奥がツンと痛くなった。
「…………」
言葉にならない思いが、ボロボロと結花の瞳から溢れ出す。
胸が、苦しい。
ほんとうなら自分との約束をきちんと守ってくれている宗一郎に感謝するべきところなのに、「いないよ」という言葉は思ってもみない破壊力を持って結花の心を打ち砕いて、涙を止めることができなかった。
内緒にするということは、こういうことだ。
彼女などいないと、自分の存在を、宗一郎の自分への気持ちを、完全に無いものとすること。
これが、自分の望んだことだった。
「や、だぁ……」
知らないうちに声が出ていて、宗一郎と少年の二人がこちらを振り向いた。
「えっ、柏木!?」
結花に気付いた宗一郎が慌てたようにこちらへ駆けて来る。
「どうしたの、こんな時間に……て。え、泣いて……。なにかあったの? 誰かになにかされた?」
結花は泣きながら、ただ黙って首を横に振った。
張りつめた表情で真剣な声を出す宗一郎に、後輩の少年は少しだけものめずらしそうな顔をする。
「神さん、知り合いですか?」