CASE:神
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だけど、そんな時間を楽しめていたのは最初だけだった。
内緒で付き合い始めてから五日目。日にちが経つにつれて、どんどんどんどん物足りなくなっていく。
宗一郎とのやり取りは、学校でのメールと、それから宗一郎が帰宅してからの数通のメールのみだ。
部活で朝早く夜遅い彼の時間を、これ以上拘束するなんてことできない。
自然と結花の口からため息がもれる。
これじゃあ付き合う前とほとんどなにも変わらない。それどころか、人目を気にするせいで、逆に疎遠になっている気がした。
学校の昼休み。結花のもらしたそのため息を、一緒にお弁当を食べていた友人が耳聡く聞きつけた。
「おや。この前はやけに上機嫌だと思ったら、今日はやけに元気がないねえ」
「……別に」
沈んだ調子で視線も上げずに言葉を返すと、友人がきょとんと目を丸くした。さっきまで広がっていたにやにや笑いを引っ込めて、やや心配そうに言う。
「ねえ。ほんとうにどうしたの? 結花、ここんとこ変だよ。なんか悪いモンでも食べた?」
「食べてないよ」
「ふうん? じゃあ、恋でもしてる?」
「!」
ずばり言い当てられて、思わず顔を上げてしまった。
しまったと思って友人の顔を窺い見ると、そこには結花の思い描いたからかうような表情ではなく、関心があるのかないのか判断が難しいような、どっちつかずな顔をした友人がいた。
「なるほどねえ。結花の好きな人って、神くんだったよね。振られたの?」
グッと喉が詰まった。
「な、なんでわたしが神くんが好きだって知ってるの」
教えた覚えはない。
どうしてかわからずに問いかけると、友人が呆れたように瞳を細めて結花を見た。
「どうしてって……。あんたバレてないつもりでいたの。そっちのが驚きなんだけど」
「うええ、そんなまさか! だってそんなバレるようなことしてないもん」
「まあ、他の人にはバレてないと思うわよ。でも、いつも一緒にいるわたしがあんたの視線の先に誰がいるのか気づかないほど鈍感なわけないじゃない」
「……でもわたしは逆に好きな人知らないよ?」
「あっはっは、当ったり前じゃん。あんた鈍感だもん」
「…………」
ほんの少しだけ友人に対して殺気が芽生えたけど、結花は慌ててそれを胸の奥に引っ込める。
教室をぐるっと見まわして宗一郎がいないことを確認すると、友人に顔を近付けて声を潜めた。
「ね。やっぱり付き合うことになったのに、内緒にするなんて馬鹿げてると思う?」
「……………………え、なに、あんたたち付き合ってるの?」
たっぷりとした沈黙を含んで、訝しげに眉を寄せた友人が言う。
結花は慌てたように首を横に振った。
「ち、違う。違うよ!? 例えばの話。妄想の話。例えばわたしが神くんと付き合えたとしたら、内緒にしようかな~なんて妄想してるんだけど、これってどうかなって」
言うと、明らかにバカにしたような表情で友人がハンッと鼻で笑った。
再び芽生えた殺気を、今度はさっきよりも多くの労力を使って引っ込めて、結花は辛抱強く友人の言葉を待つ。
友人は真顔に戻ると何かを探るような目つきで結花をじっと見て、それからきっぱりと言い放った。
「バカね」
「…………え?」
「だからバカだって言ったの。い~い、結花。神くんは優しくて頭も良くて気配りもできてスポーツ万能で、おまけに強豪で有名なバスケ部のレギュラーで次期キャプテンと目されてるような、超が百個ついても足りないくらいの有名人であり人気者なのよ? そんな彼と付き合うことができて、なんで隠す必要があるの?」
内緒で付き合い始めてから五日目。日にちが経つにつれて、どんどんどんどん物足りなくなっていく。
宗一郎とのやり取りは、学校でのメールと、それから宗一郎が帰宅してからの数通のメールのみだ。
部活で朝早く夜遅い彼の時間を、これ以上拘束するなんてことできない。
自然と結花の口からため息がもれる。
これじゃあ付き合う前とほとんどなにも変わらない。それどころか、人目を気にするせいで、逆に疎遠になっている気がした。
学校の昼休み。結花のもらしたそのため息を、一緒にお弁当を食べていた友人が耳聡く聞きつけた。
「おや。この前はやけに上機嫌だと思ったら、今日はやけに元気がないねえ」
「……別に」
沈んだ調子で視線も上げずに言葉を返すと、友人がきょとんと目を丸くした。さっきまで広がっていたにやにや笑いを引っ込めて、やや心配そうに言う。
「ねえ。ほんとうにどうしたの? 結花、ここんとこ変だよ。なんか悪いモンでも食べた?」
「食べてないよ」
「ふうん? じゃあ、恋でもしてる?」
「!」
ずばり言い当てられて、思わず顔を上げてしまった。
しまったと思って友人の顔を窺い見ると、そこには結花の思い描いたからかうような表情ではなく、関心があるのかないのか判断が難しいような、どっちつかずな顔をした友人がいた。
「なるほどねえ。結花の好きな人って、神くんだったよね。振られたの?」
グッと喉が詰まった。
「な、なんでわたしが神くんが好きだって知ってるの」
教えた覚えはない。
どうしてかわからずに問いかけると、友人が呆れたように瞳を細めて結花を見た。
「どうしてって……。あんたバレてないつもりでいたの。そっちのが驚きなんだけど」
「うええ、そんなまさか! だってそんなバレるようなことしてないもん」
「まあ、他の人にはバレてないと思うわよ。でも、いつも一緒にいるわたしがあんたの視線の先に誰がいるのか気づかないほど鈍感なわけないじゃない」
「……でもわたしは逆に好きな人知らないよ?」
「あっはっは、当ったり前じゃん。あんた鈍感だもん」
「…………」
ほんの少しだけ友人に対して殺気が芽生えたけど、結花は慌ててそれを胸の奥に引っ込める。
教室をぐるっと見まわして宗一郎がいないことを確認すると、友人に顔を近付けて声を潜めた。
「ね。やっぱり付き合うことになったのに、内緒にするなんて馬鹿げてると思う?」
「……………………え、なに、あんたたち付き合ってるの?」
たっぷりとした沈黙を含んで、訝しげに眉を寄せた友人が言う。
結花は慌てたように首を横に振った。
「ち、違う。違うよ!? 例えばの話。妄想の話。例えばわたしが神くんと付き合えたとしたら、内緒にしようかな~なんて妄想してるんだけど、これってどうかなって」
言うと、明らかにバカにしたような表情で友人がハンッと鼻で笑った。
再び芽生えた殺気を、今度はさっきよりも多くの労力を使って引っ込めて、結花は辛抱強く友人の言葉を待つ。
友人は真顔に戻ると何かを探るような目つきで結花をじっと見て、それからきっぱりと言い放った。
「バカね」
「…………え?」
「だからバカだって言ったの。い~い、結花。神くんは優しくて頭も良くて気配りもできてスポーツ万能で、おまけに強豪で有名なバスケ部のレギュラーで次期キャプテンと目されてるような、超が百個ついても足りないくらいの有名人であり人気者なのよ? そんな彼と付き合うことができて、なんで隠す必要があるの?」