CASE:神
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嘘みたいだった。
目の前に立つ憧れの人、神宗一郎は、その降り初めの雪みたいに白く透明な肌をうっすらと紅潮させて、じっと熱いまなざしで結花を見つめている。
「……柏木。だめならだめではっきり言ってくれて構わないから」
その言葉に、結花ははじめて自分が黙ったままだったことに気づいた。
我に返ると、途端に全身が急速に熱を帯びて、心臓が壊れそうなくらいどんどんと激しく胸を叩いてくる。
「あ、あの……! だ、だめなんかじゃない! わた、わたしも、神くんのことずっと好きで……」
ふと、結花の声が途切れた。
その瞳は目の前で微笑む宗一郎の顔に釘付けになっている。
宗一郎は、結花が今まで見たこともないような表情で微笑んでいた。
「――そっか。嬉しい。夢みたいだ」
「わ、わたしも……」
くすぐったそうに小さく笑う宗一郎と一緒に、結花も微笑する。
心臓はまだうるさく騒ぎ立てているけれど、宗一郎の嬉しそうな表情を見ていると、そんなこと関係ないくらい穏やかな気持ちになれた。
宗一郎は、強豪で有名なバスケ部の二年生レギュラーで、クラスや学年を飛び越えて学校全体の人気者だ。
そんな宗一郎が、一年から同じクラスだったとはいえ、地味でたいした取り柄もない自分のことを好きでいてくれたなんて、こちらこそ夢のようだった。
結花はある事実に気づいて、短く息を呑む。
もしかしてもしかしなくとも、校内を歩けば誰もが振り返るような超人気者の宗一郎の彼女が、ともすればその存在すら気づかれないような印象の薄い自分では、だめなんじゃないだろうか……。
「あ、あの、神くん! お、お願いがあるの!」
突然語気を強めた結花に、宗一郎が驚いたように目を丸くした。
「なに?」
優しい微笑。
その表情にどきどきと胸を高鳴らせながら、結花は言う。
「あの、ね、付き合うことは、できれば秘密にして欲しいの」
「秘密に……? どうして?」
宗一郎が微かに眉を寄せた。
不快に思わせてしまったのかもしれないと、結花の心臓が今度は嫌な音を立て始める。
「えっと、神くん、人気者だし、やっぱりそんな神くんの彼女がわたしみたいななんの取り柄もない地味な子じゃ、だめだと思うし、だから、その……」
自分で言っててなんだか情けなくなってきた。
その先を、宗一郎が優しく引き取るようにして代弁する。
「付き合っている事を隠したいの?」
こくりと結花は頷いた。
なんとなく宗一郎の顔が見れなくて、結花は顔を伏せる。
自分の上履きが視界に入って、それがなんだかやけに薄汚れて見えた。
結花と宗一郎の二人きりの教室で、沈黙を強調するようにこちこちと大きく秒針の進む音が響く。
それに混じるように宗一郎の息を吐き出す音が聞こえて、結花はびくりと顔をあげた。
「率直に、自分の気持ちを言ってもいい?」
「う、うん」
「俺は、正直言って柏木とのこと、隠したくない。やっと気持ちが通じ合えたんだし、これからは少しでも多くの時間を柏木と過ごしたい。……でも、それで柏木に負担をかけることは俺の願うところじゃないから」
宗一郎の瞳が、優しく細められる。
「だから、少しだけ俺のわがままを聞いてもらってもいいかな」
「え、な、なに?」
「……一週間だけ、時間をくれない? 今日から一週間は、俺も柏木と付き合ってることは内緒にするし、絶対に誰にも言わない。これまでと同じように接するし、連絡も……許可がもらえるなら、メールくらいしかしない。だから、一週間、それで過ごしてみて、それでまた一週間後に話し合いをさせてもらえない……かな」
目の前に立つ憧れの人、神宗一郎は、その降り初めの雪みたいに白く透明な肌をうっすらと紅潮させて、じっと熱いまなざしで結花を見つめている。
「……柏木。だめならだめではっきり言ってくれて構わないから」
その言葉に、結花ははじめて自分が黙ったままだったことに気づいた。
我に返ると、途端に全身が急速に熱を帯びて、心臓が壊れそうなくらいどんどんと激しく胸を叩いてくる。
「あ、あの……! だ、だめなんかじゃない! わた、わたしも、神くんのことずっと好きで……」
ふと、結花の声が途切れた。
その瞳は目の前で微笑む宗一郎の顔に釘付けになっている。
宗一郎は、結花が今まで見たこともないような表情で微笑んでいた。
「――そっか。嬉しい。夢みたいだ」
「わ、わたしも……」
くすぐったそうに小さく笑う宗一郎と一緒に、結花も微笑する。
心臓はまだうるさく騒ぎ立てているけれど、宗一郎の嬉しそうな表情を見ていると、そんなこと関係ないくらい穏やかな気持ちになれた。
宗一郎は、強豪で有名なバスケ部の二年生レギュラーで、クラスや学年を飛び越えて学校全体の人気者だ。
そんな宗一郎が、一年から同じクラスだったとはいえ、地味でたいした取り柄もない自分のことを好きでいてくれたなんて、こちらこそ夢のようだった。
結花はある事実に気づいて、短く息を呑む。
もしかしてもしかしなくとも、校内を歩けば誰もが振り返るような超人気者の宗一郎の彼女が、ともすればその存在すら気づかれないような印象の薄い自分では、だめなんじゃないだろうか……。
「あ、あの、神くん! お、お願いがあるの!」
突然語気を強めた結花に、宗一郎が驚いたように目を丸くした。
「なに?」
優しい微笑。
その表情にどきどきと胸を高鳴らせながら、結花は言う。
「あの、ね、付き合うことは、できれば秘密にして欲しいの」
「秘密に……? どうして?」
宗一郎が微かに眉を寄せた。
不快に思わせてしまったのかもしれないと、結花の心臓が今度は嫌な音を立て始める。
「えっと、神くん、人気者だし、やっぱりそんな神くんの彼女がわたしみたいななんの取り柄もない地味な子じゃ、だめだと思うし、だから、その……」
自分で言っててなんだか情けなくなってきた。
その先を、宗一郎が優しく引き取るようにして代弁する。
「付き合っている事を隠したいの?」
こくりと結花は頷いた。
なんとなく宗一郎の顔が見れなくて、結花は顔を伏せる。
自分の上履きが視界に入って、それがなんだかやけに薄汚れて見えた。
結花と宗一郎の二人きりの教室で、沈黙を強調するようにこちこちと大きく秒針の進む音が響く。
それに混じるように宗一郎の息を吐き出す音が聞こえて、結花はびくりと顔をあげた。
「率直に、自分の気持ちを言ってもいい?」
「う、うん」
「俺は、正直言って柏木とのこと、隠したくない。やっと気持ちが通じ合えたんだし、これからは少しでも多くの時間を柏木と過ごしたい。……でも、それで柏木に負担をかけることは俺の願うところじゃないから」
宗一郎の瞳が、優しく細められる。
「だから、少しだけ俺のわがままを聞いてもらってもいいかな」
「え、な、なに?」
「……一週間だけ、時間をくれない? 今日から一週間は、俺も柏木と付き合ってることは内緒にするし、絶対に誰にも言わない。これまでと同じように接するし、連絡も……許可がもらえるなら、メールくらいしかしない。だから、一週間、それで過ごしてみて、それでまた一週間後に話し合いをさせてもらえない……かな」
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