バレンタインにおける多重観点とその相違
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「あ? ああ、確かに言ってたけど。別に守る義務はないだろ」
さらりと言うと、結花がその言葉に打たれたように勢い良く顔をあげた。
その瞳にうっすら涙がにじんでいるのを見て、藤真の胸にひやりとしたものが触れる。
やばい。この反応は、さすがに予想外だ。
「お、おい、結花。なに泣いてんだよ」
思わず上擦った声を出す藤真にもかまわず、結花は感情を殺そうとするように抑えた声を出す。
「健司、ひどいよ。なんで約束守ってくれなかったの?」
「だから、さっきも言ったけど別に守る義務なんてねぇし、だいいちあれは約束じゃなかっただろ? お前が一方的に言っただけだ。違うか?」
幾分、いつもの調子を取り戻して藤真は言う。
それからわざと結花を見ないようにして、早口でまくし立てた。
「だいたい、付き合ってるからってお前に俺の言動をいちいち指図されなきゃいけないのかよ」
「そ、そういうわけじゃないけど」
「じゃあ俺がどこでなにしようと構わないだろ。チョコだって、俺が誰から何個もらおうと構わないはずだ」
「それはっ! ちょっと拡大解釈すぎるよ。それじゃあわたしがどこで誰と何をしてたって健司は気にならないっていうの? 他の男の子からプレゼントをもらったりしても?」
「そうは言ってねぇだろ! つーか、なんだそれ。お前まさかどっかで誰かとなんかしたことあんのかよ!」
突然声を荒げた藤真に、周囲にいた生徒たちが何事かとざわめいた。
けれど渦中の二人はそれに気づかず、どんどんヒートアップしていく。
「あるわけないでしょバカ! それを言うなら健司のほうじゃない!」
「あぁ!? 俺が何したってんだ、言ってみろ!」
「チョコ……。チョコもらったじゃない!」
「だから、もらわねぇって約束はしてねぇだろ!?」
「でもかわいい彼女のお願いじゃない!」
「なにがかわいいだ、自分で言ってんじゃねえよバカ! だいたいモノはモノだろが!」
「なにそれ……っ! 信じらんない、健司ちょっとどうかしてるよ!」
ぷちんと、藤真の中で何かが音を立てて切れた。
どうかしてるとは、どういう意味だ。そっちこそ、たかがチョコくらいのことでいちいち目くじら立てやがって。大好きなチョコレートを、くれるというからタダでもらっているだけなのに、どうしてそれがだめなんだ。心が狭いにもほどがある。
「どうかしてんのはそっちのほうだろ! そんなやつのチョコなんか頼まれたっていらねえから、間違っても俺に持ってくんなよ!」
「――っ。な、に……よう……。いいわよ、わかったわよ。わたしだってあんたみたいな乙女心のわかんないどあほうには、頼まれたってあげるもんですか……っ。健司の……ばかぁああああああああ!」
ばちんと頬に弾けるような熱さと衝撃を感じたかと思うと、結花はキッと一度鋭く藤真を睨みつけて、ひらめくような速さでその場を駆けていった。
「……んだよ。ばかやろう……」
一人残された藤真は、じんじんと痛む頬をさすりながら、結花の去っていったほうをじっと見つめていた。
最後、一瞬だけ見えた結花の傷ついたような泣き顔が、まるで写真のフィルムのようにまぶたの裏に焼きついて離れなかった。
結花は全速力で教室まで戻ると、その勢いのまま荒々しく自分の席に腰を下ろした。
隣りの席で参考書を開いていた花形が、驚いて結花を凝視する。
「結花? どうした?」
「……別に」
何か喋ったら、みっともなく大声を上げて泣き出してしまいそうだった。
そんな情けないこと、教室でなんてしたくない。
さらりと言うと、結花がその言葉に打たれたように勢い良く顔をあげた。
その瞳にうっすら涙がにじんでいるのを見て、藤真の胸にひやりとしたものが触れる。
やばい。この反応は、さすがに予想外だ。
「お、おい、結花。なに泣いてんだよ」
思わず上擦った声を出す藤真にもかまわず、結花は感情を殺そうとするように抑えた声を出す。
「健司、ひどいよ。なんで約束守ってくれなかったの?」
「だから、さっきも言ったけど別に守る義務なんてねぇし、だいいちあれは約束じゃなかっただろ? お前が一方的に言っただけだ。違うか?」
幾分、いつもの調子を取り戻して藤真は言う。
それからわざと結花を見ないようにして、早口でまくし立てた。
「だいたい、付き合ってるからってお前に俺の言動をいちいち指図されなきゃいけないのかよ」
「そ、そういうわけじゃないけど」
「じゃあ俺がどこでなにしようと構わないだろ。チョコだって、俺が誰から何個もらおうと構わないはずだ」
「それはっ! ちょっと拡大解釈すぎるよ。それじゃあわたしがどこで誰と何をしてたって健司は気にならないっていうの? 他の男の子からプレゼントをもらったりしても?」
「そうは言ってねぇだろ! つーか、なんだそれ。お前まさかどっかで誰かとなんかしたことあんのかよ!」
突然声を荒げた藤真に、周囲にいた生徒たちが何事かとざわめいた。
けれど渦中の二人はそれに気づかず、どんどんヒートアップしていく。
「あるわけないでしょバカ! それを言うなら健司のほうじゃない!」
「あぁ!? 俺が何したってんだ、言ってみろ!」
「チョコ……。チョコもらったじゃない!」
「だから、もらわねぇって約束はしてねぇだろ!?」
「でもかわいい彼女のお願いじゃない!」
「なにがかわいいだ、自分で言ってんじゃねえよバカ! だいたいモノはモノだろが!」
「なにそれ……っ! 信じらんない、健司ちょっとどうかしてるよ!」
ぷちんと、藤真の中で何かが音を立てて切れた。
どうかしてるとは、どういう意味だ。そっちこそ、たかがチョコくらいのことでいちいち目くじら立てやがって。大好きなチョコレートを、くれるというからタダでもらっているだけなのに、どうしてそれがだめなんだ。心が狭いにもほどがある。
「どうかしてんのはそっちのほうだろ! そんなやつのチョコなんか頼まれたっていらねえから、間違っても俺に持ってくんなよ!」
「――っ。な、に……よう……。いいわよ、わかったわよ。わたしだってあんたみたいな乙女心のわかんないどあほうには、頼まれたってあげるもんですか……っ。健司の……ばかぁああああああああ!」
ばちんと頬に弾けるような熱さと衝撃を感じたかと思うと、結花はキッと一度鋭く藤真を睨みつけて、ひらめくような速さでその場を駆けていった。
「……んだよ。ばかやろう……」
一人残された藤真は、じんじんと痛む頬をさすりながら、結花の去っていったほうをじっと見つめていた。
最後、一瞬だけ見えた結花の傷ついたような泣き顔が、まるで写真のフィルムのようにまぶたの裏に焼きついて離れなかった。
結花は全速力で教室まで戻ると、その勢いのまま荒々しく自分の席に腰を下ろした。
隣りの席で参考書を開いていた花形が、驚いて結花を凝視する。
「結花? どうした?」
「……別に」
何か喋ったら、みっともなく大声を上げて泣き出してしまいそうだった。
そんな情けないこと、教室でなんてしたくない。