バレンタインにおける多重観点とその相違
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「おお、藤真。準備いいなあ」
がさがさと音を立ててそれを広げていると、そばにいた高野が目を丸くして言った。
藤真はにやりと口の端を持ち上げて、勝ち誇った笑みをその顔に浮かべる。
今日これまでの間、高野がチョコをひとつももらえてないのは確認済みだ。
自分と高野を比べること自体が間違いではあるが、それでも優越感なのは言うまでもない。
「バーカ。オンナがくれるんだよ。持って帰るのが大変だろうからってな」
「へえ! なんかあれだな。そこまで来るとほんとすげえな。他人のチョコ持って帰る心配もされるなんてよ」
「俺がチョコ好きなことくらいリサーチ済みなんだろ。少しでも理解あるとこ見せて、得点稼ぎのつもりなんだろうな」
「ふうん。モテる男は大変だねえ」
「お前と違ってな」
精一杯の嫌味のつもりなのか、片眉をあげて揶揄するように言った高野を、藤真はあっさりと一蹴する。
高野がおもしろくなさそうに、フンと鼻を鳴らした。
「理解あると言えばよ、結花はどうなんだよ。お前がそんなに他の女からチョコもらって怒ったりしねえのか?」
なんならそのチョコ代わりにもらってやるよ、なんていう高野の鼻っ柱を手で持っていた紙袋で軽く叩いて、藤真はチョコをそれに詰めはじめる。
「バカ言ってんじゃねえよ、俺が全部ひとりで食うんだっつの。まあ、どうしてもって言うならひとつくらい恵んでやってもいいけどな。その代わり毎日一個ずつ俺にチョコを献上しろよ?」
「ばっかやろ、余計高くついてんじゃねぇか! 誰がいるかんなもん!」
「よし、いい返事だ」
鼻で笑う藤真に、高野がケッと悪態をつく。
「んなことより、結花だよ結花。結花は怒ったりしねぇのか?」
「ん? ああ、そういえば朝練に来て他のオンナからチョコもらうなとかなんとか言ってたな」
「げええ! それじゃやばいじゃねぇかよ、藤真! んな大量にもらって下品に笑ってる場合じゃねぇだろ!」
「あぁ!? 高野、誰が下品に笑ってるって?」
眼光鋭く睨みつけると、高野がヒッと短く息を吸い込んだ。
「いや、うそです冗談です藤真さまは常に王子で気品溢れるお方です。ヨッ! 王子!」
調子よくはやし立てる高野の顔面を藤真はもう一度、今度は中身の入った紙袋で思いっきり叩く。
「いってぇ!」
「行き過ぎた世辞は逆に嫌味なんだよ。覚えとけバカ」
痛みに悶絶する高野の横で、藤真はがざがさと音を立てながら、まるでメダル落としのようにチョコを袋に流し入れる。
あらかた机のチョコは袋に詰め終え、次はロッカーのチョコを紙袋に移動させようと立ち上がった時だった。
「健司ー!」
教室の外から自分を呼ぶ結花の声が聞こえた。
振り返り、紙袋を手にしたまま藤真はそちらへ移動する。
「おお、結花。どうした?」
「あのね、顧問の先生から連絡なんだけ……ど……」
それまでにこやかに話していた結花がふいに言葉を止めた。
目が、藤真の持つ紙袋に釘付けになっている。
「健司……それ……」
「あ? ああ、チョコ。すげえだろ。この時間でもうこの量なんだぜ。こりゃ帰りまでに紙袋がもう二個くらいないと足らない計算だよな」
悪びれもせずひひと笑ってみせると、結花が顔を俯けた。
その肩が小さく震えている。
「おい、結花? どうしたんだよ」
「健司……。わたし、わたし以外の女の子からチョコ、もらわないでねって言ったよね?」
がさがさと音を立ててそれを広げていると、そばにいた高野が目を丸くして言った。
藤真はにやりと口の端を持ち上げて、勝ち誇った笑みをその顔に浮かべる。
今日これまでの間、高野がチョコをひとつももらえてないのは確認済みだ。
自分と高野を比べること自体が間違いではあるが、それでも優越感なのは言うまでもない。
「バーカ。オンナがくれるんだよ。持って帰るのが大変だろうからってな」
「へえ! なんかあれだな。そこまで来るとほんとすげえな。他人のチョコ持って帰る心配もされるなんてよ」
「俺がチョコ好きなことくらいリサーチ済みなんだろ。少しでも理解あるとこ見せて、得点稼ぎのつもりなんだろうな」
「ふうん。モテる男は大変だねえ」
「お前と違ってな」
精一杯の嫌味のつもりなのか、片眉をあげて揶揄するように言った高野を、藤真はあっさりと一蹴する。
高野がおもしろくなさそうに、フンと鼻を鳴らした。
「理解あると言えばよ、結花はどうなんだよ。お前がそんなに他の女からチョコもらって怒ったりしねえのか?」
なんならそのチョコ代わりにもらってやるよ、なんていう高野の鼻っ柱を手で持っていた紙袋で軽く叩いて、藤真はチョコをそれに詰めはじめる。
「バカ言ってんじゃねえよ、俺が全部ひとりで食うんだっつの。まあ、どうしてもって言うならひとつくらい恵んでやってもいいけどな。その代わり毎日一個ずつ俺にチョコを献上しろよ?」
「ばっかやろ、余計高くついてんじゃねぇか! 誰がいるかんなもん!」
「よし、いい返事だ」
鼻で笑う藤真に、高野がケッと悪態をつく。
「んなことより、結花だよ結花。結花は怒ったりしねぇのか?」
「ん? ああ、そういえば朝練に来て他のオンナからチョコもらうなとかなんとか言ってたな」
「げええ! それじゃやばいじゃねぇかよ、藤真! んな大量にもらって下品に笑ってる場合じゃねぇだろ!」
「あぁ!? 高野、誰が下品に笑ってるって?」
眼光鋭く睨みつけると、高野がヒッと短く息を吸い込んだ。
「いや、うそです冗談です藤真さまは常に王子で気品溢れるお方です。ヨッ! 王子!」
調子よくはやし立てる高野の顔面を藤真はもう一度、今度は中身の入った紙袋で思いっきり叩く。
「いってぇ!」
「行き過ぎた世辞は逆に嫌味なんだよ。覚えとけバカ」
痛みに悶絶する高野の横で、藤真はがざがさと音を立てながら、まるでメダル落としのようにチョコを袋に流し入れる。
あらかた机のチョコは袋に詰め終え、次はロッカーのチョコを紙袋に移動させようと立ち上がった時だった。
「健司ー!」
教室の外から自分を呼ぶ結花の声が聞こえた。
振り返り、紙袋を手にしたまま藤真はそちらへ移動する。
「おお、結花。どうした?」
「あのね、顧問の先生から連絡なんだけ……ど……」
それまでにこやかに話していた結花がふいに言葉を止めた。
目が、藤真の持つ紙袋に釘付けになっている。
「健司……それ……」
「あ? ああ、チョコ。すげえだろ。この時間でもうこの量なんだぜ。こりゃ帰りまでに紙袋がもう二個くらいないと足らない計算だよな」
悪びれもせずひひと笑ってみせると、結花が顔を俯けた。
その肩が小さく震えている。
「おい、結花? どうしたんだよ」
「健司……。わたし、わたし以外の女の子からチョコ、もらわないでねって言ったよね?」