笑顔の奥
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嗚咽が邪魔をしてうまく言葉が紡げない。
結局全部、自分のことばっかりだった。
宗一郎はいつだって結花のことをまっすぐに見て、いつも素直な感情で接してくれていたのに。
なのに、そんな宗一郎を信じることができなかった。
わかっていたのに、素直に信じる強さを持てなかった。
自分が傷つかないことばかりを考えて、あげく宗一郎をひどく傷つけた。
「ごめんなさい……!」
両の手の平で顔を覆う。
後悔ばかりが押し寄せてしばらく嗚咽をもらしていると、すっと宗一郎が動いた。
逞しい腕に包まれる自分のからだに、驚いてまばたきする。
「神、くん……?」
「俺のこと、好きってほんと?」
「え……?」
「いま言ってた。俺のこと好きって」
「――!!」
そういえば、どさくさにまぎれてそんなこと言ったかもしれない。
結花のからだがみるみる血の気を失っていく。
「あ、えと……その……!」
「俺も好き」
動転する結花の耳に、するっとそんな言葉が滑り込んできた。
「え?」
ぎゅっと、宗一郎の腕に力がこもる。
「好きだよ」
「う、うそ……」
「ほんと」
宗一郎は瞳を細めてそう言うと、結花の手をとって自分の心臓にあてがった。
手の平から感じる宗一郎の鼓動。どくどくと早鐘を打っているそこは、結花のそれとなんら変わらなかった。
「ね。うそじゃないでしょ?」
「ほんと……に?」
「さすがに心臓の速さまではコントロールできないよ」
宗一郎がおどけるように小さく笑う。
そのまっしろな頬が紅潮していることに気付いて、結花の胸が高鳴った。
うそじゃない。宗一郎の言っていることはほんとうだ。
ただでさえ早かった結花の鼓動が、さらに激しく胸を叩いて痛い。
「でも、だって、わたしなんてドンくさいし卑屈だし、いいとこなんてなにも……っ」
「はは。まあ、たしかに卑屈なところは少し困りものかもしれないけど、でもそんなところも好きだよ。ドンくさいのは俺にしてみたら魅力のひとつでしかないし、俺は柏木さんが自分で気づいてない良いところ、いっぱいいっぱい知ってる。そのままの君が好きなんだ」
うそみたいだ。こんなことがほんとうに起こるなんて。
「わたしでいいの?」
「柏木さんじゃなきゃだめだよ」
「――ありがとう!」
嬉しくて涙が溢れた。
宗一郎の胸に飛び込むと、くすぐったそうに笑って優しく抱きしめてくれる。
その胸元に耳を近付けると、自分と同じペースで速い鼓動を刻む音が間近に聴こえて、とても心が満たされた。
「大好き……!」
「うん」
優しいぬくもり。温かい場所。こんなところが世界にあるなんて知らなかった。
「これからは俺が君を支えるよ」
「わたしも、もっと前向きになれるようがんばる……っ」
「はは。……うん。一番近くで見守ってるよ」
キミがついててくれるなら、どんなことだってきっときっと大丈夫。
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