笑顔の奥
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そう思ったら、胸がずきんと痛んだ。
視線をあげた先で、宗一郎が屈託なく笑う。
「迷惑? なんで。そんなこと全然ないよ。もっと頼りにしてよ」
優しくて眩しい笑顔に、今度はどきんと胸が弾んだ。
どんどん速度を上げる心臓と、上昇していく体温。
最近宗一郎と話す時に、よく感じるようになったこの現象。
落ち着かない。宗一郎の顔を見れない。
なのに、宗一郎の顔をもっとずっと見ていたい、もっとたくさん色んな話をしたいという衝動にかられる。
もしかして、これは。
結花は短く息を吸い込んだ。
いつも宗一郎と話すときに感じるこの気持ちに、愕然とした衝撃を受ける。
ああ、そうか。わたしは。
(いつのまにか、神くんのこと好きになってたんだ……)
なんて身のほど知らずだろう。
学校中の有名人の宗一郎と、クラスでも目立たない存在の結花。
住む世界が違うことなんてわかりきっているのに。どうして好きになってしまったりしたんだろう。
(神くんが優しいから? ……いつも、気にかけてくれるから?)
思い上がりも甚だしかった。
自分を嘲るような笑みが唇に浮かぶ。
「ありがとう」
なんとかそれだけ言って顔を伏せると、結花は足早に自分の机に向かった。
宗一郎に今の自分の表情を見られたくなかった。遠い存在の宗一郎に勝手に恋して、ひとりでそんな自分に失望して。きっとひどい顔をしている。
「柏木さん……?」
訝しげにつぶやかれた自分の名前を振り払うように、結花は教室を後にした。
もう宗一郎と関わるのはやめよう。これ以上近づいて、宗一郎が自分に愛想を尽かすところを見たくない。宗一郎の呆れたような、がっかりしたような瞳が自分に向けられるのを見たくなかった。
(ばいばい、神くん)
一度教室を振り返り心の中でそう呼びかけると、結花は再び歩き出した。
宗一郎を避け出してしばらくしたある日。
「待ってよ、柏木さん」
結花はついに宗一郎につかまった。
放課後の教室。だれもいないそこで、ふたりっきりで宗一郎と向き合う。
「ねえ。俺、柏木さんになにかした?」
戸惑うような、どこか怒ってもいるような宗一郎を直視できなくて、結花は顔を背ける。
「なにも……」
「じゃあなんで俺を避けるの?」
「避けてなんか」
「ウソだ。最初は俺の気のせいかと思ったけど、違うよね? 呼んでも無視するし、話しかけてもすぐ逃げちゃうし。どうして?」
強く右腕をつかまれた。
その力の強さに、結花の心に恐怖が芽生える。
宗一郎の顔はひどく真剣で、とてもはぐらかすことなんて出来そうになかった。
結花の喉がひくりと上下する。
どうしよう。
「俺、柏木さんとこんな風になるの嫌だよ。俺はもっと君に近づきたい。もっともっと君を知りたいんだ」
視線をあげた先で、宗一郎が屈託なく笑う。
「迷惑? なんで。そんなこと全然ないよ。もっと頼りにしてよ」
優しくて眩しい笑顔に、今度はどきんと胸が弾んだ。
どんどん速度を上げる心臓と、上昇していく体温。
最近宗一郎と話す時に、よく感じるようになったこの現象。
落ち着かない。宗一郎の顔を見れない。
なのに、宗一郎の顔をもっとずっと見ていたい、もっとたくさん色んな話をしたいという衝動にかられる。
もしかして、これは。
結花は短く息を吸い込んだ。
いつも宗一郎と話すときに感じるこの気持ちに、愕然とした衝撃を受ける。
ああ、そうか。わたしは。
(いつのまにか、神くんのこと好きになってたんだ……)
なんて身のほど知らずだろう。
学校中の有名人の宗一郎と、クラスでも目立たない存在の結花。
住む世界が違うことなんてわかりきっているのに。どうして好きになってしまったりしたんだろう。
(神くんが優しいから? ……いつも、気にかけてくれるから?)
思い上がりも甚だしかった。
自分を嘲るような笑みが唇に浮かぶ。
「ありがとう」
なんとかそれだけ言って顔を伏せると、結花は足早に自分の机に向かった。
宗一郎に今の自分の表情を見られたくなかった。遠い存在の宗一郎に勝手に恋して、ひとりでそんな自分に失望して。きっとひどい顔をしている。
「柏木さん……?」
訝しげにつぶやかれた自分の名前を振り払うように、結花は教室を後にした。
もう宗一郎と関わるのはやめよう。これ以上近づいて、宗一郎が自分に愛想を尽かすところを見たくない。宗一郎の呆れたような、がっかりしたような瞳が自分に向けられるのを見たくなかった。
(ばいばい、神くん)
一度教室を振り返り心の中でそう呼びかけると、結花は再び歩き出した。
宗一郎を避け出してしばらくしたある日。
「待ってよ、柏木さん」
結花はついに宗一郎につかまった。
放課後の教室。だれもいないそこで、ふたりっきりで宗一郎と向き合う。
「ねえ。俺、柏木さんになにかした?」
戸惑うような、どこか怒ってもいるような宗一郎を直視できなくて、結花は顔を背ける。
「なにも……」
「じゃあなんで俺を避けるの?」
「避けてなんか」
「ウソだ。最初は俺の気のせいかと思ったけど、違うよね? 呼んでも無視するし、話しかけてもすぐ逃げちゃうし。どうして?」
強く右腕をつかまれた。
その力の強さに、結花の心に恐怖が芽生える。
宗一郎の顔はひどく真剣で、とてもはぐらかすことなんて出来そうになかった。
結花の喉がひくりと上下する。
どうしよう。
「俺、柏木さんとこんな風になるの嫌だよ。俺はもっと君に近づきたい。もっともっと君を知りたいんだ」