笑顔の奥
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次の日。結花は教室に入ると、いつものようにまっすぐに自分の席へ向かった。
まわりではクラスメイトがにぎやかに友人たちと談笑している。
そのざわめきをすり抜けながら、結花は席に着く。
「おはよう、柏木さん」
その耳に宗一郎の声が飛び込んできた。
(え、神くん!? どうして? 神くんの席ここじゃないのに)
ぎくりとからだが強張った。
結花の席は窓側で、宗一郎の席は廊下側だ。
もしかしたら昨日の失礼な態度を咎められたりするのかもしれない。
こわごわと顔をあげる。と、すぐに自分が思い違いをしていることに気づいた。
宗一郎のすぐそばに、結花の前の席の男子生徒の顔が見える。そういえばこの男子生徒は宗一郎と仲が良かった。きっとSHRまで彼と話をするのにここにいたのだろう。
少しだけ気持ちが軽くなって、ホッと息をつく。
「お、おはよう」
少しぎこちなかったかもしれないけど、なんとか挨拶を返すことができた。
よし。この流れで昨日のことを謝ってしまおう。
「あ、あの、昨日は、その……」
途中まで言いかけた言葉が喉にひっかかる。
宗一郎が前の席にこちらを向くように腰掛けて、ん? と首を傾げた。
一気にからだが緊張する。
音にならない言葉を必死で紡ごうとする結花に、宗一郎が椅子の背に肘を置いて頬杖をつくとやわらかく微笑んだ。
「柏木さん。昨日はごめんね? なんだか俺、驚かせちゃったみたいで」
「あ、う、ううん……。あれは、わたしの方が悪かったから。せっかく拾ってくれたのに、あんな態度取っちゃってごめんなさい」
「ううん、いいよ。俺は全然気にしてないから。はは、よかった。俺、柏木さんに嫌われてるのかと思っちゃった」
宗一郎がホッとしたように笑う。
その言葉に結花は目を見開いた。
「嫌うなんて……そんな……」
それはこっちのセリフなのに。
どうしてこんなに宗一郎は優しいんだろう。
いまだって、結花が何を言おうとしていたのかに気付いて、さりげなくその方向に話を持っていってくれた。
どうしてこんな人が自分を気にかけてくれるんだろう。
結花の胸が、申し訳ないような複雑な気持ちでいっぱいになる。
「ごめんね、神くん」
「ん? なに?」
「ううん、なんでもない」
呟いた言葉は宗一郎には届かなかったようだ。重ねて言いたい事でもないので、結花はゆるゆると首を振る。
そっか、と宗一郎は頬杖をといた。
「ね。柏木さんって、歌上手なんだね」
「え?」
「昨日の歌のテスト。俺、席ピアノから近いからみんなが歌ってるの聴こえるんだ」
音楽の歌のテストは、生徒がひとりひとり先生のピアノの前で歌を歌う。
特に全員に向けて披露するというわけではないので、生徒たちはみんな自分の番がくるまで各々自由に過ごしているのだが、まさか宗一郎が歌を聴いているとは思わなかった。
一気に体が熱くなった。
「あ、そう……なんだ。なんだか恥ずかしいな」
「どうして? 俺、あんな綺麗な歌声はじめて聞いたよ。すごく感動した」
宗一郎がふわりと笑んで言う。その言葉にどきんと胸が弾んだ。
まわりではクラスメイトがにぎやかに友人たちと談笑している。
そのざわめきをすり抜けながら、結花は席に着く。
「おはよう、柏木さん」
その耳に宗一郎の声が飛び込んできた。
(え、神くん!? どうして? 神くんの席ここじゃないのに)
ぎくりとからだが強張った。
結花の席は窓側で、宗一郎の席は廊下側だ。
もしかしたら昨日の失礼な態度を咎められたりするのかもしれない。
こわごわと顔をあげる。と、すぐに自分が思い違いをしていることに気づいた。
宗一郎のすぐそばに、結花の前の席の男子生徒の顔が見える。そういえばこの男子生徒は宗一郎と仲が良かった。きっとSHRまで彼と話をするのにここにいたのだろう。
少しだけ気持ちが軽くなって、ホッと息をつく。
「お、おはよう」
少しぎこちなかったかもしれないけど、なんとか挨拶を返すことができた。
よし。この流れで昨日のことを謝ってしまおう。
「あ、あの、昨日は、その……」
途中まで言いかけた言葉が喉にひっかかる。
宗一郎が前の席にこちらを向くように腰掛けて、ん? と首を傾げた。
一気にからだが緊張する。
音にならない言葉を必死で紡ごうとする結花に、宗一郎が椅子の背に肘を置いて頬杖をつくとやわらかく微笑んだ。
「柏木さん。昨日はごめんね? なんだか俺、驚かせちゃったみたいで」
「あ、う、ううん……。あれは、わたしの方が悪かったから。せっかく拾ってくれたのに、あんな態度取っちゃってごめんなさい」
「ううん、いいよ。俺は全然気にしてないから。はは、よかった。俺、柏木さんに嫌われてるのかと思っちゃった」
宗一郎がホッとしたように笑う。
その言葉に結花は目を見開いた。
「嫌うなんて……そんな……」
それはこっちのセリフなのに。
どうしてこんなに宗一郎は優しいんだろう。
いまだって、結花が何を言おうとしていたのかに気付いて、さりげなくその方向に話を持っていってくれた。
どうしてこんな人が自分を気にかけてくれるんだろう。
結花の胸が、申し訳ないような複雑な気持ちでいっぱいになる。
「ごめんね、神くん」
「ん? なに?」
「ううん、なんでもない」
呟いた言葉は宗一郎には届かなかったようだ。重ねて言いたい事でもないので、結花はゆるゆると首を振る。
そっか、と宗一郎は頬杖をといた。
「ね。柏木さんって、歌上手なんだね」
「え?」
「昨日の歌のテスト。俺、席ピアノから近いからみんなが歌ってるの聴こえるんだ」
音楽の歌のテストは、生徒がひとりひとり先生のピアノの前で歌を歌う。
特に全員に向けて披露するというわけではないので、生徒たちはみんな自分の番がくるまで各々自由に過ごしているのだが、まさか宗一郎が歌を聴いているとは思わなかった。
一気に体が熱くなった。
「あ、そう……なんだ。なんだか恥ずかしいな」
「どうして? 俺、あんな綺麗な歌声はじめて聞いたよ。すごく感動した」
宗一郎がふわりと笑んで言う。その言葉にどきんと胸が弾んだ。