Depend on me
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(牧先輩って、牧さんのこと……だよな?)
牧のそんな浮いた話など、今まで聞いたこともない。
「え、牧先輩ってバスケ部の?」
「そうそう! キャプテンのあの牧先輩!」
「えー、ショック! わたし、牧先輩憧れてたのに! 相手の人ってどんな人なの?」
「わたしも噂でしか聞いたことないんだけど、大人っぽい雰囲気の綺麗な人って話だよ! なんでも牧先輩と三年間同じクラスで、一年生の弟がバスケ部に入ったんだって。それがきっかけで付き合うようになったとか……」
「へええ」
相手の女性の特徴を聞いて、宗一郎はハッと目を見開いた。
三年間牧と同じクラスで、バスケ部の一年に弟がいる。
(それって……)
間違いない。結花のことだ。
思ったところで、その二人が宗一郎の元へ来る。
「ねえねえ、神くん! 牧先輩に彼女ができたってほんと? なんでもバスケ部の一年生に弟がいる、綺麗な先輩って話なんだけど。神くん知ってる?」
「さあ……。その二人のことはよく知ってるけど、付き合ってるとかそういうことまでは……」
クラスメイトになんとか笑顔で答えながら、宗一郎は自分のまわりの世界が急に頼りなくなる感覚を味わっていた。
クラスメイトがそっかあ、ありがとーとお礼を言って、そばを去っていく。
宗一郎はその足音を聞きながら、再び目を閉じた。
自然に、なんの違和感もなくイメージできる、牧と結花が二人並ぶ姿。
二人寄り添って、見つめあって、それから……。
(…………っ)
まぶたの裏に浮かんだ映像を握りつぶすように、宗一郎は強く目を瞑った。
考えたくない。考えたくないのに……。
(……お似合いだ)
皮肉な笑みが唇に浮かぶ。
結花にとって、最初から自分など眼中になかったのだ。そんなこととうに気づいていたのに。なのにひとりでもがいて、苦しんで。結果なんてはじめからわかりきっていたのに。
「…………」
宗一郎は肺の底から深く震える息を吐き出すと、そのまま机に顔を押し付けた。
その日一日は、ちっとも授業に集中することができなかった。
なにを見ても朝聞いた噂のことが気になってしまい、どうしても頭を離れない。
(牧さんも水臭いな……。言ってくれればいいのに)
まだ確証のない噂だけれど、きっとほぼ間違いないだろう。心の中で恨めしげに牧に言ってみるが、牧がわざわざ色恋のことを宗一郎に言う理由がない。牧だって宗一郎の気持ちを知っているわけではないのだから。
自分を嘲るような小さな笑いが鼻を抜ける。
気持ちを切り替えるように宗一郎は頭を振ると、机の中身をカバンにしまい始めた。
と、その時。カバンの中で覚えのない固い何かが手に触れた。それを確かめるように中をまさぐると、一枚のCDアルバムが出てきた。
(これ、牧さんに貸す約束していたやつだ)
昨日の夜用意していたのを、すっかり忘れていた。
「…………」
宗一郎は一瞬の逡巡の末気持ちを決めると、部室へ向かおうとしていた足を、牧の教室へと向けた。
牧のそんな浮いた話など、今まで聞いたこともない。
「え、牧先輩ってバスケ部の?」
「そうそう! キャプテンのあの牧先輩!」
「えー、ショック! わたし、牧先輩憧れてたのに! 相手の人ってどんな人なの?」
「わたしも噂でしか聞いたことないんだけど、大人っぽい雰囲気の綺麗な人って話だよ! なんでも牧先輩と三年間同じクラスで、一年生の弟がバスケ部に入ったんだって。それがきっかけで付き合うようになったとか……」
「へええ」
相手の女性の特徴を聞いて、宗一郎はハッと目を見開いた。
三年間牧と同じクラスで、バスケ部の一年に弟がいる。
(それって……)
間違いない。結花のことだ。
思ったところで、その二人が宗一郎の元へ来る。
「ねえねえ、神くん! 牧先輩に彼女ができたってほんと? なんでもバスケ部の一年生に弟がいる、綺麗な先輩って話なんだけど。神くん知ってる?」
「さあ……。その二人のことはよく知ってるけど、付き合ってるとかそういうことまでは……」
クラスメイトになんとか笑顔で答えながら、宗一郎は自分のまわりの世界が急に頼りなくなる感覚を味わっていた。
クラスメイトがそっかあ、ありがとーとお礼を言って、そばを去っていく。
宗一郎はその足音を聞きながら、再び目を閉じた。
自然に、なんの違和感もなくイメージできる、牧と結花が二人並ぶ姿。
二人寄り添って、見つめあって、それから……。
(…………っ)
まぶたの裏に浮かんだ映像を握りつぶすように、宗一郎は強く目を瞑った。
考えたくない。考えたくないのに……。
(……お似合いだ)
皮肉な笑みが唇に浮かぶ。
結花にとって、最初から自分など眼中になかったのだ。そんなこととうに気づいていたのに。なのにひとりでもがいて、苦しんで。結果なんてはじめからわかりきっていたのに。
「…………」
宗一郎は肺の底から深く震える息を吐き出すと、そのまま机に顔を押し付けた。
その日一日は、ちっとも授業に集中することができなかった。
なにを見ても朝聞いた噂のことが気になってしまい、どうしても頭を離れない。
(牧さんも水臭いな……。言ってくれればいいのに)
まだ確証のない噂だけれど、きっとほぼ間違いないだろう。心の中で恨めしげに牧に言ってみるが、牧がわざわざ色恋のことを宗一郎に言う理由がない。牧だって宗一郎の気持ちを知っているわけではないのだから。
自分を嘲るような小さな笑いが鼻を抜ける。
気持ちを切り替えるように宗一郎は頭を振ると、机の中身をカバンにしまい始めた。
と、その時。カバンの中で覚えのない固い何かが手に触れた。それを確かめるように中をまさぐると、一枚のCDアルバムが出てきた。
(これ、牧さんに貸す約束していたやつだ)
昨日の夜用意していたのを、すっかり忘れていた。
「…………」
宗一郎は一瞬の逡巡の末気持ちを決めると、部室へ向かおうとしていた足を、牧の教室へと向けた。