Depend on me
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「神さーん! 行きますよー!」
「オッケー」
バスケ部の放課後練習。
宗一郎は、後輩の信長のパス練習の相手を務めながら、ふと体育館の片隅に目を向けた。
そこにいるひとりの女子生徒を見て、宗一郎の胸が静かに高鳴る。
宗一郎は自分より一学年上のこの先輩のことを、去年からたびたび牧のそばで見かけていて気になっていた。そんな先輩がバスケ部の見学に頻繁に来るようになったのはつい最近のことだ。
それはなぜかというと。
「ノブー、しっかりね!」
「おー! ねえちゃんもそんなとこいて邪魔すんなよ!」
「ノブじゃないから大丈夫!」
「ケッ」
先輩と二言三言交わした信長が、悪態をつく。
そう。なんと彼女は、目の前の後輩・清田信長の実の姉だったのだ。
「今日も結花さん来てくれてるんだ」
二人の微笑ましいやり取りに、宗一郎は表情をやわらかくする。
「そうなんスよ。来なくていいって言ってんのに」
「はは。そのわりには嬉しそうだよ?」
「ま、まあ、ねえちゃんのことは嫌いじゃないッスから……」
照れているのか、口先だけでもごもごと信長が言う。心なしか信長から返って来るボールが強くなった。
男女の兄弟で、特に弟のほうが素直にこういう感情を口にするのはめずらしいことだろう。
宗一郎はとても優しい気持ちになる。
「いいお姉さんだよね」
「……なんか、神さんにそう言われると照れくさいっス」
「そう?」
「あ、そういえば姉ちゃんも神さんのこと褒めてましたよ」
「え?」
信長の予想外の言葉に、宗一郎は思わず手を止めた。
「神さん?」
「あ、ああ。ごめん」
パスを待つ信長に促されて、宗一郎は慌ててボールを信長に戻す。信長は特に気にもとめずにそれを受け取って、再び宗一郎にボールを戻してきた。
動揺を気づかれずに済んで、そっと胸を撫で下ろす。
「オレの面倒良く見てくれる、優しいひとだって言ってたっス。先輩に恵まれてよかったねって」
「そ、そっか」
どきんと心臓が小さく跳ねた。
嬉しい。結花が自分のことをそんな風に言ってくれていたなんて。
体内の温度が上昇して、頬に熱が集まっていくのがわかる。
その後も信長はにこにこと嬉しそうに宗一郎のことを褒め続けてくれていたけれど、信長には申し訳ないが、結花の言葉がとても嬉しくて後の言葉がうまく耳に入ってこなかった。
手は止めないままで、結花の言葉を反芻する。
と、その時、信長が突然大きな声をあげた。
「あ!」
なんだろうと信長の視線の先を追いかけて、納得する。結花が牧に話しかけられて、ひどく嫌そうな顔をしていた。
「姉ちゃん……。またなんか頼まれてる……」
すでに日常茶飯事となったこの光景を見た信長の疲れたような声音に、宗一郎は苦笑を返す。
最近結花と親しくなって知ったことだが、どうやら結花と牧は三年間同じクラスで、かなり親しい仲らしい。おまけに担任はなんとバスケ部の監督でもある、高頭力その人だ。
それもあって、信長の練習を見に頻繁に体育館を訪れるようになった結花は、牧と高頭の二人になにかと言うと雑用を頼まれ、日々こき使われていた。
宗一郎も信長も思わず練習の手を止めて結花と牧のことを見つめていると、牧は眉間に皺を寄せる結花に意地悪そうな笑みを残して、その場を離れていった。
ひとり苦い顔をしている結花が、二人の視線に気づいてこちらを見る。
「オッケー」
バスケ部の放課後練習。
宗一郎は、後輩の信長のパス練習の相手を務めながら、ふと体育館の片隅に目を向けた。
そこにいるひとりの女子生徒を見て、宗一郎の胸が静かに高鳴る。
宗一郎は自分より一学年上のこの先輩のことを、去年からたびたび牧のそばで見かけていて気になっていた。そんな先輩がバスケ部の見学に頻繁に来るようになったのはつい最近のことだ。
それはなぜかというと。
「ノブー、しっかりね!」
「おー! ねえちゃんもそんなとこいて邪魔すんなよ!」
「ノブじゃないから大丈夫!」
「ケッ」
先輩と二言三言交わした信長が、悪態をつく。
そう。なんと彼女は、目の前の後輩・清田信長の実の姉だったのだ。
「今日も結花さん来てくれてるんだ」
二人の微笑ましいやり取りに、宗一郎は表情をやわらかくする。
「そうなんスよ。来なくていいって言ってんのに」
「はは。そのわりには嬉しそうだよ?」
「ま、まあ、ねえちゃんのことは嫌いじゃないッスから……」
照れているのか、口先だけでもごもごと信長が言う。心なしか信長から返って来るボールが強くなった。
男女の兄弟で、特に弟のほうが素直にこういう感情を口にするのはめずらしいことだろう。
宗一郎はとても優しい気持ちになる。
「いいお姉さんだよね」
「……なんか、神さんにそう言われると照れくさいっス」
「そう?」
「あ、そういえば姉ちゃんも神さんのこと褒めてましたよ」
「え?」
信長の予想外の言葉に、宗一郎は思わず手を止めた。
「神さん?」
「あ、ああ。ごめん」
パスを待つ信長に促されて、宗一郎は慌ててボールを信長に戻す。信長は特に気にもとめずにそれを受け取って、再び宗一郎にボールを戻してきた。
動揺を気づかれずに済んで、そっと胸を撫で下ろす。
「オレの面倒良く見てくれる、優しいひとだって言ってたっス。先輩に恵まれてよかったねって」
「そ、そっか」
どきんと心臓が小さく跳ねた。
嬉しい。結花が自分のことをそんな風に言ってくれていたなんて。
体内の温度が上昇して、頬に熱が集まっていくのがわかる。
その後も信長はにこにこと嬉しそうに宗一郎のことを褒め続けてくれていたけれど、信長には申し訳ないが、結花の言葉がとても嬉しくて後の言葉がうまく耳に入ってこなかった。
手は止めないままで、結花の言葉を反芻する。
と、その時、信長が突然大きな声をあげた。
「あ!」
なんだろうと信長の視線の先を追いかけて、納得する。結花が牧に話しかけられて、ひどく嫌そうな顔をしていた。
「姉ちゃん……。またなんか頼まれてる……」
すでに日常茶飯事となったこの光景を見た信長の疲れたような声音に、宗一郎は苦笑を返す。
最近結花と親しくなって知ったことだが、どうやら結花と牧は三年間同じクラスで、かなり親しい仲らしい。おまけに担任はなんとバスケ部の監督でもある、高頭力その人だ。
それもあって、信長の練習を見に頻繁に体育館を訪れるようになった結花は、牧と高頭の二人になにかと言うと雑用を頼まれ、日々こき使われていた。
宗一郎も信長も思わず練習の手を止めて結花と牧のことを見つめていると、牧は眉間に皺を寄せる結花に意地悪そうな笑みを残して、その場を離れていった。
ひとり苦い顔をしている結花が、二人の視線に気づいてこちらを見る。
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