君の速度で
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仙道の声が聞こえる。
その心配そうな響きに、結花はハッと我に返った。
自分のことで精一杯で、仙道の話をぜんぜん聞いていなかった。
(どうしよう)
いくら優しい仙道でも、これは怒るかもしれない。
謝ろうと仙道を見上げて目が合った瞬間、その瞳を見つめ続けることができず、すぐにまた目をそらしてしまった。
(な、なにやってんのわたしぃいいいいいい!)
きちんと目を見て謝れと叫ぶ頭に反して、からだは一向にいう事を聞かない。
体中が熱い。バクバクと胸が高鳴って、呼吸が苦しかった。
「ね、結花ちゃん」
仙道が自分を呼ぶ。
「もしかして、オレのこと好きになっちゃった?」
「――!」
結花の喉が鋭く息を吸い込んだ。
それまで言うことを聞かなかったからだの自由が、思い出したように戻ってくる。
心臓がうるさい。
「な、何言ってるんですか仙道先輩! そ、そんなわけないじゃないですか……!」
「ふうん。そうなの?」
仙道が真剣な表情で瞳を細めて、結花を見つめてくる。
今度は視線を逸らせなかった。
仙道の熱のこもったまっすぐな眼差しに焼かれて、結花の体がどんどん体温を上げる。
「あの、せんぱ……」
「好きだよ、結花ちゃん」
空気に耐えられなくなって何か言おうと結花が口を開いたその時。
それに覆いかぶさるかのように、仙道が言った。
瞬間、結花の中の時間がとまる。
「…………え?」
しばらくの沈黙のあと、やっとそんな声を絞り出せた。
「え……? え、あの……。仙道、先輩……? いま、なんて……?」
なにを言われたのか、よく理解できなかった。
聞き返す結花の耳に、今度はきちんと意味のある言葉としてそれが届く。
「好き」
「!!」
電流のような痺れが全身を駆け抜けた。
体のあちこちで回線が麻痺し出す。
頭の中が真っ白だ。
思考を止める脳みそとは裏腹に、今度は口が勝手に動き出す。
「あ、あの、じょうだん……ですよね?」
「本気だよ。結花ちゃんは、オレが嫌い?」
切なげに囁かれたその言葉に、結花の心臓が狂ったように暴れ出した。
麻痺した回路が、どんどん爆発を起こして壊れていく。
もはや平衡感覚さえも失われて、自分がいまどこにいるのかさえわからなかった。
「あ、あの……嫌いなんかじゃ……! でも、あの、あの……、――っ!」
雑音ばかりの頭で必死に言葉を探していると、ふいに仙道に抱き寄せられた。
あたたかな体温と、鼻腔をくすぐる仙道の香り。
「好きだよ、結花」