君の速度で
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(うわぁ、そうきたか……)
半ば情けない気持ちで、仙道は目の前の女の子たちを見る。
苦笑いがぬぐえない。
「もう! こんな真剣な仙道くんはじめて見るのに、何にも伝わってないなんて不憫で不憫でしょうがないったらないじゃないのよ!」
なぜか女の子まで泣きそうに瞳を潤ませながら、がしっと力強く仙道の手を掴んできた。
迫力負けして、わっと身を引く仙道にも構わずに、女の子がぐいと顔を寄せる。
「もうこうなったらわたしたち仙道くんのこと応援するから! だからがんばってよね!」
「う、うん。ありがと……」
顔に冷や汗を浮かべながらもこくこくと頷くと、女の子も満足そうに頷いて仙道の手を離してくれた。
颯爽と身を翻して、女の子たちが一斉に帰っていく。
その背中を、仙道は言葉もなく見送った。
「…………」
「…………」
隣りで成り行きを見守っていた越野もしばらくしてハッと我に返ると、どういう表情をしたらいいかわからないと言う顔で、「応援してくれるってよ。よかったな」とぽつりと呟いた。
それに曖昧な返事を返しながら、仙道はひとり途方に暮れる。
もう結花にアタックを続けて半年だ。
確かに結花にあわせて多少のんびりぶつかってはいたけれど、でもそれでも少しずつ距離は縮めてきたつもりだった。
最初は挨拶だけだった二人の関係も、今では休日暇があればグループで遊びに行くくらいにはなっている。
それなのに。
(そうか。やっぱりぜんぜん伝わってなかったか)
結花に文句を言おうと思っていたあの女の子たちが、一転して仙道の味方になるくらいだ。よっぽど響いていなかったのだろうことは想像に難くない。
胸に降りた切ない気持ちをため息とともに全て吐き出して、仙道は気持ちを切り替える。
これは、少し切り口を変えたほうが良いかもしれない。
「そろそろ、勝負をかけますか」
強い決意をのせて、低く呟いた。
放課後。HRを終えて結花は帰り支度を始める。
昼休みに先輩から呼び出された事を除けば、おおむね今日も平和に過ごすことができた。
教科書とノートをカバンにつめて、帰ろうと椅子を引く。
と、前方の教室入り口から仙道がひょっこりと顔を出した。
「あれ、仙道先輩?」
結花に気づいて、仙道が顔をほころばせる。
「結花ちゃん。よかった、まだ教室にいた」
「どうしたんですか? 放課後に来るなんて珍しいですね」
「うん。ね、結花ちゃん。これから時間ある? もしよかったら、今日部活見に来ない?」
「部活?」
仙道の言葉に、結花はきらっと顔を輝かせた。
仙道の部活。そういえば一度も見たことがない。
「いいんですか!?」
「もちろん。やっとキャプテンにも慣れてきて余裕も出てきたしさ。きっと結花ちゃんにかっこいいところ見せられると思うよ。ぜひ来てよ」
「はい、喜んで!」
元気よく返事をすると、結花は仙道と連れ立つようにして教室を出た。