君の速度で
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「そんなオレが変わっちゃうくらいの子に出会えたんだよ。……羨ましいだろ?」
たっぷり含みを持たせて言ってやると、越野がめんどくさそうに顔を背けた。
「ケッ。後で振られて泣くなよ。めんどくせえから」
「うん。頑張るよ」
「おう」
複雑な表情で、けれど見守るような温かさで苦笑する越野を見て、仙道も小さく微笑んだ。
それから半年が経ったある日。
「柏木結花さん。ちょっといいかしら?」
のんびり教室で祥子とお弁当を食べていた結花は、眉を怒らせた複数の女子生徒に突然声をかけられた。
どうやら二年の先輩たちらしい。結花の机の前でやたらとえらそうに仁王立ちしているリーダー格の先輩をきょとんと見つめながら、結花は首を傾げる。
「はい? わたしですか?」
「そうよ。あんたの他に柏木結花って子がいるとでもいうわけ? あんた頭悪いんじゃないの?」
「いえ。わたし、先輩方と面識がないもので」
後ろにいた取り巻きのあまりの言い草に、結花はムッと表情を尖らせた。
誰だって知らない人からいきなり名指しで呼び出されれば、ほんとうにそれが自分で間違っていないのかと疑問に思って当たり前だ。
おもしろくない気持ちでむーっと眉根を寄せる結花を蔑むように見下して、リーダー格の先輩が言う。
「とにかく、あなたで間違ってないから。……ちょっと着いてきてくれる?」
言うだけ言うと、その先輩は結花が席を立つのも見届けずにくるりと踵を返し、すたすたと歩き出した。
結花が着いてくるのを疑ってもいないその足取りに、結花も慌てたように立ち上がる。
「あ、ちょっと待ってください」
駆け出そうとしたところで、腕を祥子に掴まれた。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ結花! いいって行かなくて!」
「え? どうして?」
振り返る結花の耳元に、祥子がこそっと口を寄せてくる。
「あの先輩たち、仙道先輩のファンの人たちだよ。きっと結花に文句言いにきたに決まってるよ! 行ったら絶対ただじゃすまないって!!」
「まさかぁ。考えすぎだよ」
「考えすぎじゃないってばこのお気楽娘! それだけ仙道先輩の人気はすごいの! あんたがこれまで無事に過ごせてたのが不思議なくらいなんだから!」
「もー、祥子は心配性なんだよ。平気平気。大事な用なのかもしれないしとにかく行くね。じゃね」
それだけ言うと、結花は祥子の手をほどいて急いで先輩たちを追いかけた。
しばらく歩いて、連れてこられたところは体育館裏だった。
(おお……!)
これは祥子が当たりだったかもしれない。結花は口の中だけでまずったかなぁと呟いた。
漫画やドラマでは見たことあったけれど、まさか自分がこれを体験することになるとは思わなかった。
苦い気持ちとは裏腹に、なんとなく物語の主人公になったような気がして少しだけうきうきした。
前を歩いていた先輩たちが急に足を止めて振り返る。
たっぷり含みを持たせて言ってやると、越野がめんどくさそうに顔を背けた。
「ケッ。後で振られて泣くなよ。めんどくせえから」
「うん。頑張るよ」
「おう」
複雑な表情で、けれど見守るような温かさで苦笑する越野を見て、仙道も小さく微笑んだ。
それから半年が経ったある日。
「柏木結花さん。ちょっといいかしら?」
のんびり教室で祥子とお弁当を食べていた結花は、眉を怒らせた複数の女子生徒に突然声をかけられた。
どうやら二年の先輩たちらしい。結花の机の前でやたらとえらそうに仁王立ちしているリーダー格の先輩をきょとんと見つめながら、結花は首を傾げる。
「はい? わたしですか?」
「そうよ。あんたの他に柏木結花って子がいるとでもいうわけ? あんた頭悪いんじゃないの?」
「いえ。わたし、先輩方と面識がないもので」
後ろにいた取り巻きのあまりの言い草に、結花はムッと表情を尖らせた。
誰だって知らない人からいきなり名指しで呼び出されれば、ほんとうにそれが自分で間違っていないのかと疑問に思って当たり前だ。
おもしろくない気持ちでむーっと眉根を寄せる結花を蔑むように見下して、リーダー格の先輩が言う。
「とにかく、あなたで間違ってないから。……ちょっと着いてきてくれる?」
言うだけ言うと、その先輩は結花が席を立つのも見届けずにくるりと踵を返し、すたすたと歩き出した。
結花が着いてくるのを疑ってもいないその足取りに、結花も慌てたように立ち上がる。
「あ、ちょっと待ってください」
駆け出そうとしたところで、腕を祥子に掴まれた。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ結花! いいって行かなくて!」
「え? どうして?」
振り返る結花の耳元に、祥子がこそっと口を寄せてくる。
「あの先輩たち、仙道先輩のファンの人たちだよ。きっと結花に文句言いにきたに決まってるよ! 行ったら絶対ただじゃすまないって!!」
「まさかぁ。考えすぎだよ」
「考えすぎじゃないってばこのお気楽娘! それだけ仙道先輩の人気はすごいの! あんたがこれまで無事に過ごせてたのが不思議なくらいなんだから!」
「もー、祥子は心配性なんだよ。平気平気。大事な用なのかもしれないしとにかく行くね。じゃね」
それだけ言うと、結花は祥子の手をほどいて急いで先輩たちを追いかけた。
しばらく歩いて、連れてこられたところは体育館裏だった。
(おお……!)
これは祥子が当たりだったかもしれない。結花は口の中だけでまずったかなぁと呟いた。
漫画やドラマでは見たことあったけれど、まさか自分がこれを体験することになるとは思わなかった。
苦い気持ちとは裏腹に、なんとなく物語の主人公になったような気がして少しだけうきうきした。
前を歩いていた先輩たちが急に足を止めて振り返る。