君の速度で
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「気持ちを……」
想像すると、更に涙が盛り上がった。
「き、嫌われてたらどうしよう~」
「むう、その時はまた慰めてあげるからさ。とりあえずがんばっておいでよ、ね? それともこのままにする?」
「嫌……!」
「だよね。じゃあ、決定。おっけー?」
片目をつぶって、祥子がわざと軽く言ってくる。その気持ちに応えようと、結花もがんばって笑顔で頷いた。
放課後。
結花はひとり教室で、仙道の部活が終わるのを待っていた。
教室の窓から、バスケ部員がぱらぱらと体育館から出てくるのが見える。
結花は慌てて立ち上がると、荷物を持って教室を飛び出した。
息を切らしながらもなんとか体育館のそばまで来たものの、そこからはどうしても足が竦んでしまって動くことができなかった。
もしも仙道がもう帰ってしまっていたら?
運よく間に合っていたとしても、結花と会ってくれなかったら?
「…………」
ふいにまた入り口の方が騒がしくなる。
慌てて物陰に隠れてそちらを見ていると、そこから出てきた部員のひとりと目が合った。
「っ!」
(越野先輩……!)
仙道がいつも一緒にいる先輩だ。休日に結花、祥子、仙道、越野の四人で出かけたこともあって、結花もそれ以来親しくさせてもらっていた。
越野は結花に気づくと、一緒にいた他の先輩たちに断ってずんずんとこちらへ近づいてきた。
何も言えずにいる結花の前に立つと、越野がどこかホッとしたように眉尻を下げた。
「仙道だろ?」
穏やかな声音でそれだけ言って、ポンと結花の頭を優しく撫でてくれる。
驚いて目を丸くする結花に、越野が背後の体育館を親指で示した。
「大丈夫。もう中あいつしかいねぇから」
がんばれよと背中を押してくれるような笑顔を見せて、越野は先に帰って行った部員たちに呼ばれて帰っていった。
結花はそんな越野の背中を感謝の気持ちで見送って、今度こそ震える足に気合を入れる。体育館へ、一歩足を踏み出した。
入り口を覗いて、見えてきた広く大きな背中に、そっと声をかける。
「仙道先輩……」
練習着を着た仙道がたったひとり佇んでいた体育館は耳が痛いくらいの静寂に包まれていて、小さく囁いた結花の声が、とても大きく響いた。
仙道がハッと弾かれたように振り返る。
しばらく声が出ない様子で結花を見つめた後、
「結花ちゃん……」
仙道が、それだけ呟いた。
名前を呼んだきり見上げることしかできない結花に眉尻を下げて微笑んで、仙道が少し不安のかげる表情で優しく笑う。
「もし……うまくいけば、そろそろ来る頃かなって思ってた」
仙道は静かに結花の前まで来ると、そっと手を伸ばして結花の頬に触れた。
壊れ物に触るような優しいその触れ方に、結花の胸がぎゅっと苦しくなった。
想像すると、更に涙が盛り上がった。
「き、嫌われてたらどうしよう~」
「むう、その時はまた慰めてあげるからさ。とりあえずがんばっておいでよ、ね? それともこのままにする?」
「嫌……!」
「だよね。じゃあ、決定。おっけー?」
片目をつぶって、祥子がわざと軽く言ってくる。その気持ちに応えようと、結花もがんばって笑顔で頷いた。
放課後。
結花はひとり教室で、仙道の部活が終わるのを待っていた。
教室の窓から、バスケ部員がぱらぱらと体育館から出てくるのが見える。
結花は慌てて立ち上がると、荷物を持って教室を飛び出した。
息を切らしながらもなんとか体育館のそばまで来たものの、そこからはどうしても足が竦んでしまって動くことができなかった。
もしも仙道がもう帰ってしまっていたら?
運よく間に合っていたとしても、結花と会ってくれなかったら?
「…………」
ふいにまた入り口の方が騒がしくなる。
慌てて物陰に隠れてそちらを見ていると、そこから出てきた部員のひとりと目が合った。
「っ!」
(越野先輩……!)
仙道がいつも一緒にいる先輩だ。休日に結花、祥子、仙道、越野の四人で出かけたこともあって、結花もそれ以来親しくさせてもらっていた。
越野は結花に気づくと、一緒にいた他の先輩たちに断ってずんずんとこちらへ近づいてきた。
何も言えずにいる結花の前に立つと、越野がどこかホッとしたように眉尻を下げた。
「仙道だろ?」
穏やかな声音でそれだけ言って、ポンと結花の頭を優しく撫でてくれる。
驚いて目を丸くする結花に、越野が背後の体育館を親指で示した。
「大丈夫。もう中あいつしかいねぇから」
がんばれよと背中を押してくれるような笑顔を見せて、越野は先に帰って行った部員たちに呼ばれて帰っていった。
結花はそんな越野の背中を感謝の気持ちで見送って、今度こそ震える足に気合を入れる。体育館へ、一歩足を踏み出した。
入り口を覗いて、見えてきた広く大きな背中に、そっと声をかける。
「仙道先輩……」
練習着を着た仙道がたったひとり佇んでいた体育館は耳が痛いくらいの静寂に包まれていて、小さく囁いた結花の声が、とても大きく響いた。
仙道がハッと弾かれたように振り返る。
しばらく声が出ない様子で結花を見つめた後、
「結花ちゃん……」
仙道が、それだけ呟いた。
名前を呼んだきり見上げることしかできない結花に眉尻を下げて微笑んで、仙道が少し不安のかげる表情で優しく笑う。
「もし……うまくいけば、そろそろ来る頃かなって思ってた」
仙道は静かに結花の前まで来ると、そっと手を伸ばして結花の頬に触れた。
壊れ物に触るような優しいその触れ方に、結花の胸がぎゅっと苦しくなった。