君の速度で
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ぼんやりと教室前方入り口を見つめていると、いつのまにか横に来ていた祥子がぽつりと言った。
「うん」
結花が口先だけでそれに返事をすると、祥子が仕方ないなぁというように嘆息した。
「なんかあった?」
「……うん。あったといえば、あった……かな……」
歯切れ悪くそう返す。と、突然祥子が上ずった声をあげた。
「え!? ちょ、ちょっと結花大丈夫!? 泣きそうな顔してるじゃない!」
「え?」
言われてみると、視界が不自然に揺れていた。
祥子はそんな結花の様子を見て表情を引き締めると、唐突に結花の腕を取った。
「え、しょ、祥子!?」
うろたえる結花を引っ張って、どこかへと勢い良く駆け出す。
「ちょ、HRはじまっちゃう!」
「今日はもうサボり! とりあえず屋上にでも行こう!」
ほとんど祥子に引きずられるようにして屋上にたどり着くと、祥子がふっと足を止めて結花を振り返った。
「ほら、話してみなよ」
「う、うん……」
祥子の優しい笑顔に促されるようにして、結花はこれまでのことをぽつぽつと話しだした。
仙道に誘われて、はじめて部活を見に行ったこと。
その時に、なぜだか胸が落ち着かなくなって仙道を直視できなくなったこと。
その日の帰りに仙道に告白されたこと。
それから仙道のことを考えると胸が苦しくなること。
けれど、その日を境に、仙道が結花の前に姿を現さなくなったこと。
全て話し終えた結花の胸に、ぽっかりと大きな穴が空く。
自分の大事なものが抜け落ちてしまったみたいで、ひどくさびしかった。
「そっか……」
それまで黙って話を聞いていた祥子が、納得したように腕を組む。
「そっか。結花にははじめての感情なんだもんね」
「――え?」
「それはね、結花。立派な恋だよ」
「……恋?」
呆けたように同じ言葉を繰り返す結花に、祥子がまるで母のような温かさで微笑んだ。
「そう。誰かのことを考えて胸がどきどきしたり、切なくなったりするのは、もうその人につかまってる証拠。結花は、仙道先輩のことが好きなんだよ」
「好き……」
その言葉が、大きく空いた胸の穴にすっぽりとおさまった。
「好き……」
じんわりとその言葉がからだに浸透する。
と、今度は結花の胸が切なく締め付けられた。
好き。そうはっきり理解すると同時に、あの日の仙道の傷ついた表情がまぶたによみがえる。
「どうしよう……!」
ぽろぽろと涙が溢れた。
「どうしよう祥子……! わたし、仙道先輩をひどく傷つけちゃった……」
顔を覆ってむせび泣くと、祥子がおおよしよしと結花を抱きしめてくれた。
小さい子をあやすように、優しく頭を撫でられる。
「んー。とりあえず、思いっきり泣く。そんでもって泣き止む。そしたら、仙道先輩に謝って、それから気持ちを伝える! これで決まりじゃない?」
「うん」
結花が口先だけでそれに返事をすると、祥子が仕方ないなぁというように嘆息した。
「なんかあった?」
「……うん。あったといえば、あった……かな……」
歯切れ悪くそう返す。と、突然祥子が上ずった声をあげた。
「え!? ちょ、ちょっと結花大丈夫!? 泣きそうな顔してるじゃない!」
「え?」
言われてみると、視界が不自然に揺れていた。
祥子はそんな結花の様子を見て表情を引き締めると、唐突に結花の腕を取った。
「え、しょ、祥子!?」
うろたえる結花を引っ張って、どこかへと勢い良く駆け出す。
「ちょ、HRはじまっちゃう!」
「今日はもうサボり! とりあえず屋上にでも行こう!」
ほとんど祥子に引きずられるようにして屋上にたどり着くと、祥子がふっと足を止めて結花を振り返った。
「ほら、話してみなよ」
「う、うん……」
祥子の優しい笑顔に促されるようにして、結花はこれまでのことをぽつぽつと話しだした。
仙道に誘われて、はじめて部活を見に行ったこと。
その時に、なぜだか胸が落ち着かなくなって仙道を直視できなくなったこと。
その日の帰りに仙道に告白されたこと。
それから仙道のことを考えると胸が苦しくなること。
けれど、その日を境に、仙道が結花の前に姿を現さなくなったこと。
全て話し終えた結花の胸に、ぽっかりと大きな穴が空く。
自分の大事なものが抜け落ちてしまったみたいで、ひどくさびしかった。
「そっか……」
それまで黙って話を聞いていた祥子が、納得したように腕を組む。
「そっか。結花にははじめての感情なんだもんね」
「――え?」
「それはね、結花。立派な恋だよ」
「……恋?」
呆けたように同じ言葉を繰り返す結花に、祥子がまるで母のような温かさで微笑んだ。
「そう。誰かのことを考えて胸がどきどきしたり、切なくなったりするのは、もうその人につかまってる証拠。結花は、仙道先輩のことが好きなんだよ」
「好き……」
その言葉が、大きく空いた胸の穴にすっぽりとおさまった。
「好き……」
じんわりとその言葉がからだに浸透する。
と、今度は結花の胸が切なく締め付けられた。
好き。そうはっきり理解すると同時に、あの日の仙道の傷ついた表情がまぶたによみがえる。
「どうしよう……!」
ぽろぽろと涙が溢れた。
「どうしよう祥子……! わたし、仙道先輩をひどく傷つけちゃった……」
顔を覆ってむせび泣くと、祥子がおおよしよしと結花を抱きしめてくれた。
小さい子をあやすように、優しく頭を撫でられる。
「んー。とりあえず、思いっきり泣く。そんでもって泣き止む。そしたら、仙道先輩に謝って、それから気持ちを伝える! これで決まりじゃない?」