恋に落ちて
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言ってその場を離れようとした結花の腕を、再び洋平に掴まれた。
「え、ちょ、ちょっと待って」
洋平がとまどいと驚きの入り混じった声をあげる。
「誰が、誰を好きだって?」
「だから、水戸くんが……」
「……俺が?」
「さっきの女の子を……」
「さっきの女の子……って、まさか、ハルコちゃん……?」
独り言のように呟くと、洋平が瞬間弾かれたように笑い声をあげた。
「!?」
状況についていけない結花を置き去りに、洋平はひぃひぃと苦しそうに腹を抱えて笑っている。
「え、えと……水戸……くん?」
どうしていいかわからずにおそるおそる声をかけると、洋平が切れ切れの息の合間から、慌てたように言った。
「あ、いや、わりぃ、笑ったりして……。いや、でも、そんなことでヤキモチ焼いてくれてたなんて、なんか思ったらかわいくて……」
「…………」
どういう意味だろう。
腕を掴まれて動けないまま、ひとしきり洋平が笑い終えるのを待っていると、ようやく落ち着いた洋平が、優しく微笑んで結花を見た。
そのまなざしに、結花の心臓が大きく跳ねる。
「え、あの、水戸く……ん!?」
戸惑う結花の体が、洋平の逞しく温かい腕に包まれる。
(!?)
体中の血が、沸騰したように熱くなった。
「あ、あ、あの、み、みと、くん!?」
動転する結花にはおかまいなしに、洋平が結花を抱く腕の力を強めてくる。
「オレも好きだぜ、柏木さん」
「――え?」
耳元で囁かれた低い呟きに、結花は目を見開いた。
「気づかなかった? オレがいつも柏木さん見てたこと」
「し、知らないっ」
あわてふためく結花の様子にくつくつと笑いながら、洋平がゆっくりと言う。
結花を落ち着かせるように頭を撫でてくれる洋平の手が、とても温かくて夢のようだった。
「弁当食ってる時の幸せそうな顔とか、友達と話してる時の楽しそうな笑顔とか、勉強してる時のしかめっつらとか、なんだかとても惹きつけられて、目が離せなかった。好きだよ、柏木さん。まさか、柏木さんのほうから告白してくれるなんて思ってもみなかった」
言って、洋平がくすぐったそうに小さく笑う。
まだ、これが現実だなんて信じられなかった。
でもからだの内側からうるさいくらいに聞こえてくる心臓の音も、からだに感じる洋平のぬくもりも、頭を撫でてくれるその優しい感触も、全部全部紛れもない本物で。
「ほん……とに……?」
「ほんと。安心しなよ。オレは、最初から柏木さんしか見てない。――大切にするよ。だから、オレと付き合おう」
「……うん!」
結花の頬を、あたたかな涙が伝った。
洋平がうれしそうに笑う声が彼の胸を通して伝わってきて、その奥から高鳴る鼓動が聞こえた。
自分のとあまり変わらないその速度に、結花の胸がくすぐったいような気持ちでいっぱいになる。
「水戸くん、大好き!」
「オレも」
恋に落ちて掴んだ幸せ。
明日から、二人の新しい日々が始まる。
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