恋に落ちて
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だけどまったく現実感がなくて、自分と洋平とその子だけが世界から切り離されて、自分ひとり、どこか違うところからその二人を眺めているみたいだった。
(仲、良いな……)
ぼんやりとそんなことを思って、ふいに胸の奥が熱くなった。
そこからなにか激しいものが押し寄せてきて、結花は歯を食いしばってその衝動を我慢する。
こんなところで泣いたりなんてしたくない。
これ以上あの二人の仲良いところを見たくなんてないのに、でも視線がぬいつけられてしまったように目を離すことができなかった。
洋平の優しい笑顔。今はそれが心に痛い。
と、その時、向かいにいる洋平と目が合った。
「!」
結花は咄嗟に目を逸らす。
それまで三人きりだった世界に突然全てが戻ってきて、結花は周りの空気に溶け込むようにして、必死に自分の存在を隠そうとした。
きっと洋平に気づかれていないということを祈りながら、
「ゆ、由美。わたし、帰るね」
それだけ投げるように言って、返事も待たずに足早にその場を離れた。
もうひと時だってここにいたくなかった。
少しでも早く体育館から離れようと、どんどん足が速度をあげる。
校門を出たところで、ほとんど駆け足になっていた足をやっと緩めることが出来た。
ふうと息を落ち着けて、とぼとぼと歩き出す。
次第に、それまではっきり見えていた自分のつま先が段々滲み始めた。
「うえ……っ」
再び胸にせまる熱い衝動を、今度は抵抗することなく受け入れる。
胸が痛い。
引き裂かれてしまいそうだ。
脳裏に、先ほどの洋平の表情がひらめく。
きっと洋平はさっきの女の子のことが好きなんだろう。
思うと、さらに視界が揺れた。
と、そこへ、
「待ってよ、柏木さん!」
周りの空気を裂くようにして洋平の声が耳に飛び込んできた。
(えっ!?)
ぎょっとして振り返ると、洋平がこちらに向かって走ってきていた。
瞬間、結花の頭が真っ白になる。
(どうして水戸くんが……)
呆然と立ち尽くす結花の前に、洋平がおいついて立ち止まる。
「はあ、はあ……。――ハハ、驚いた。柏木さん、結構足はえぇな」
呼吸を整えて、洋平がにこりと笑う。
その笑顔でハッと我に返って、結花は身を翻すと再び走り出した。
「えっ!?」
背後で洋平の驚いたような声が聞こえたけれど、足を止めるわけにはいかない。
もう今日はどうしても洋平と話したくなんてなかった。
きっとさっき目があったときよりも、もっとひどい顔をしている。そんな顔を洋平に見られたくなんてないし、なによりも顔を見てしまえば、今度こそ泣き出してしまいそうな気がした。
涙の理由なんて、到底説明できるわけがない。
それなのに。
「ちょ、待ってって、柏木さん! なんで逃げ……ああ、もう!」
重い革靴の音が響いて、洋平が再び後を追いかけてくる。
どうして洋平は結花を追いかけてくるのだろう。せっかくあの子と話が出来ていたのに。
(仲、良いな……)
ぼんやりとそんなことを思って、ふいに胸の奥が熱くなった。
そこからなにか激しいものが押し寄せてきて、結花は歯を食いしばってその衝動を我慢する。
こんなところで泣いたりなんてしたくない。
これ以上あの二人の仲良いところを見たくなんてないのに、でも視線がぬいつけられてしまったように目を離すことができなかった。
洋平の優しい笑顔。今はそれが心に痛い。
と、その時、向かいにいる洋平と目が合った。
「!」
結花は咄嗟に目を逸らす。
それまで三人きりだった世界に突然全てが戻ってきて、結花は周りの空気に溶け込むようにして、必死に自分の存在を隠そうとした。
きっと洋平に気づかれていないということを祈りながら、
「ゆ、由美。わたし、帰るね」
それだけ投げるように言って、返事も待たずに足早にその場を離れた。
もうひと時だってここにいたくなかった。
少しでも早く体育館から離れようと、どんどん足が速度をあげる。
校門を出たところで、ほとんど駆け足になっていた足をやっと緩めることが出来た。
ふうと息を落ち着けて、とぼとぼと歩き出す。
次第に、それまではっきり見えていた自分のつま先が段々滲み始めた。
「うえ……っ」
再び胸にせまる熱い衝動を、今度は抵抗することなく受け入れる。
胸が痛い。
引き裂かれてしまいそうだ。
脳裏に、先ほどの洋平の表情がひらめく。
きっと洋平はさっきの女の子のことが好きなんだろう。
思うと、さらに視界が揺れた。
と、そこへ、
「待ってよ、柏木さん!」
周りの空気を裂くようにして洋平の声が耳に飛び込んできた。
(えっ!?)
ぎょっとして振り返ると、洋平がこちらに向かって走ってきていた。
瞬間、結花の頭が真っ白になる。
(どうして水戸くんが……)
呆然と立ち尽くす結花の前に、洋平がおいついて立ち止まる。
「はあ、はあ……。――ハハ、驚いた。柏木さん、結構足はえぇな」
呼吸を整えて、洋平がにこりと笑う。
その笑顔でハッと我に返って、結花は身を翻すと再び走り出した。
「えっ!?」
背後で洋平の驚いたような声が聞こえたけれど、足を止めるわけにはいかない。
もう今日はどうしても洋平と話したくなんてなかった。
きっとさっき目があったときよりも、もっとひどい顔をしている。そんな顔を洋平に見られたくなんてないし、なによりも顔を見てしまえば、今度こそ泣き出してしまいそうな気がした。
涙の理由なんて、到底説明できるわけがない。
それなのに。
「ちょ、待ってって、柏木さん! なんで逃げ……ああ、もう!」
重い革靴の音が響いて、洋平が再び後を追いかけてくる。
どうして洋平は結花を追いかけてくるのだろう。せっかくあの子と話が出来ていたのに。