恋に落ちて
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
茶色く染めた長めの髪を揺らして、呆れたように春菜が言う。
お調子者の由美と、しっかり者の春菜、そして結花の三人は、入学当時席が近かったのがきっかけでできた仲良しグループだ。
二人とはとても気があって、席が離れたいまでもこうして仲良くお弁当を囲んでいる。
「ねえねえ。今日の朝の桜木くん、なんかすごい迫力でこわかったね」
巾着からお弁当を取り出しながら由美が言った。きっと洋平とのモーニングコールの件をうやむやにしてくれた花道の怒号のことだろう。確かにあれはすごい音量だった。
「あの人は図体だけじゃなくてなにからなにまでおっきいのよね。あの声、学校中に響いてたんじゃない?」
うんざりしたような声で同意する春菜に、結花は眉を下げて苦笑する。
「なんかとても大事な用があったみたいだよ? 水戸くんに起こしてもらう約束してたのに、起こしてもらえなかったみたい」
「ふうん。でも、そんな大事な用があるんだったら普通は自分で起きるでしょ? 他力本願なあたりがダメね。五点減点」
「おっ! 出ました、春菜の人間採点!」
由美がはやし立てるように言う。
「ちょっとやめてよその言い方。口癖なだけでしょ」
「いやいや、上から春菜。いつも楽しませてもらっておりますよ!」
「…………」
ぴしっと春菜の周りの空気が瞬間冷凍された。こういうときの春菜は怒っているしるしだ。ぎくりと由美が硬直する。
「な、なあ~んちゃって~」
ごまかすように引き攣った頬を無理矢理上げて、慌てて話題を切り替える。
「そ、そういえばさ! 桜木くんといえば、結花は今日も愛しの水戸くんとお話できたみたいじゃない」
助けを求めるように必死の眼差しで言う由美に、結花も元気よく答える。
焦った拍子に少し声が上ずってしまったけれど、この際それもご愛嬌だ。きっといいごまかしになるに違いない。
「う、うん、そうなの! 水戸くんの爽やかな笑顔に、今日もノックアウトされちゃった~!」
無理矢理なテンションが功を奏したのか、春菜も怒りの鎧を脱いで話に参戦してくる。
結花と由美は、春菜にバレないようにこっそりと安堵の息をついた。
「へえ、よかったわね。わたし、水戸くんに笑顔なんて向けられたことないわよ」
「というより、春菜は水戸くんと話したことないじゃん? まあ、かくいうわたしもだけどさ」
あははと由美と春菜が笑い合う。かと思えば、ふいに二人は顔を見合わせた。
何かを確かめあうようにうんと頷くと、ずいと結花に顔を寄せてくる。
「ね。そういえば結花はどうして水戸くんが好きなの?」
「え!?」
急に風向きが変わって、結花はぎょっと身を引いた。
この方向は、なんとなく嫌だ。
結花の気持ちなどお構いなしに、二人はにやにや笑いを浮かべて、さらに身を乗り出してくる。
「理由、聞いたことなかったわよね」
「だよね。結花と水戸くんってあんまり結びつかないし。なにか相当なきっかけでもないと、好きになんてならないよね」
「そ、そんなだいそれたきっかけなんてないよ。そんなことより二人とも、早くお弁当食べないと……」
なんとか煙に巻こうと必死になる結花の努力もむなしく、二人は鼻息も荒く畳み掛ける。
「でもあることにはあるんでしょ? きっかけ」
「ないわけないでしょ!?」
「黙ってたっていいことないんだから言っちゃいなさいよ、ほらほら」
「大人しく観念しろーい!」
お調子者の由美と、しっかり者の春菜、そして結花の三人は、入学当時席が近かったのがきっかけでできた仲良しグループだ。
二人とはとても気があって、席が離れたいまでもこうして仲良くお弁当を囲んでいる。
「ねえねえ。今日の朝の桜木くん、なんかすごい迫力でこわかったね」
巾着からお弁当を取り出しながら由美が言った。きっと洋平とのモーニングコールの件をうやむやにしてくれた花道の怒号のことだろう。確かにあれはすごい音量だった。
「あの人は図体だけじゃなくてなにからなにまでおっきいのよね。あの声、学校中に響いてたんじゃない?」
うんざりしたような声で同意する春菜に、結花は眉を下げて苦笑する。
「なんかとても大事な用があったみたいだよ? 水戸くんに起こしてもらう約束してたのに、起こしてもらえなかったみたい」
「ふうん。でも、そんな大事な用があるんだったら普通は自分で起きるでしょ? 他力本願なあたりがダメね。五点減点」
「おっ! 出ました、春菜の人間採点!」
由美がはやし立てるように言う。
「ちょっとやめてよその言い方。口癖なだけでしょ」
「いやいや、上から春菜。いつも楽しませてもらっておりますよ!」
「…………」
ぴしっと春菜の周りの空気が瞬間冷凍された。こういうときの春菜は怒っているしるしだ。ぎくりと由美が硬直する。
「な、なあ~んちゃって~」
ごまかすように引き攣った頬を無理矢理上げて、慌てて話題を切り替える。
「そ、そういえばさ! 桜木くんといえば、結花は今日も愛しの水戸くんとお話できたみたいじゃない」
助けを求めるように必死の眼差しで言う由美に、結花も元気よく答える。
焦った拍子に少し声が上ずってしまったけれど、この際それもご愛嬌だ。きっといいごまかしになるに違いない。
「う、うん、そうなの! 水戸くんの爽やかな笑顔に、今日もノックアウトされちゃった~!」
無理矢理なテンションが功を奏したのか、春菜も怒りの鎧を脱いで話に参戦してくる。
結花と由美は、春菜にバレないようにこっそりと安堵の息をついた。
「へえ、よかったわね。わたし、水戸くんに笑顔なんて向けられたことないわよ」
「というより、春菜は水戸くんと話したことないじゃん? まあ、かくいうわたしもだけどさ」
あははと由美と春菜が笑い合う。かと思えば、ふいに二人は顔を見合わせた。
何かを確かめあうようにうんと頷くと、ずいと結花に顔を寄せてくる。
「ね。そういえば結花はどうして水戸くんが好きなの?」
「え!?」
急に風向きが変わって、結花はぎょっと身を引いた。
この方向は、なんとなく嫌だ。
結花の気持ちなどお構いなしに、二人はにやにや笑いを浮かべて、さらに身を乗り出してくる。
「理由、聞いたことなかったわよね」
「だよね。結花と水戸くんってあんまり結びつかないし。なにか相当なきっかけでもないと、好きになんてならないよね」
「そ、そんなだいそれたきっかけなんてないよ。そんなことより二人とも、早くお弁当食べないと……」
なんとか煙に巻こうと必死になる結花の努力もむなしく、二人は鼻息も荒く畳み掛ける。
「でもあることにはあるんでしょ? きっかけ」
「ないわけないでしょ!?」
「黙ってたっていいことないんだから言っちゃいなさいよ、ほらほら」
「大人しく観念しろーい!」