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「ほとんど最初からここにいたのに、すぐに助けてあげなくてごめんね。早くから出て行くと、余計ややこしいことになるかもしれないと思って様子を見てたんだ。……そしたら、結花を泣かせるようなことになっちゃって……ほんとうにごめん」
「宗一郎……」

結花は、ふるふると首を横に振った。
宗一郎がやわらかく笑んで、ぎゅっと結花を包む腕の力を強める。

結花の不安も気づいてたのに、なんにも言ってやれなくてごめん。でも、どんなに結花の気持ちをわかったつもりでいても、結局俺と結花は違う人間だし、置かれた立場だって違うから、迂闊なこといって結花を傷つけたりしたくなかったんだ。結花の不安に思ってること、少しずつ、俺が態度で示して解消してやれば良いと思ってた。……でも、それでも言葉にしなくちゃ伝わらないことって、あるよな」

最後を自分に言い聞かせるみたいに呟くと、宗一郎はゆっくりと結花を体から離した。
結花の涙に濡れた瞳を見て、愛しそうに瞳を細めると、唇を優しく持ち上げる。

「だから、今はちゃんと言葉にするね」

そして再び結花を腕の中に納めた。
宗一郎の唇が、すぐ耳元で大切そうに言葉を紡いでいく。

「好きだよ、結花。なにも不安に思わなくていいよ。もしも大学が離れたとしても構わない。そんなこと、気にしなくて大丈夫なんだ。もしそうなったとしても俺がいつだって結花に会いに行くし、もちろん結花だって俺に会いに来てくれるでしょ?」

宗一郎の問いに、結花は力強く頷いた。
嬉しそうに宗一郎が吐息だけで笑う。

「うん。だから、大丈夫。それに、瑞穂は結花のことあんな風に言ってたけど、俺はちゃんと結花が俺の行く大学に手が届くところにいること、ちゃんと知ってる。がんばれば大丈夫だよ。つらくなったら俺が支えるから。だから、ひとりで不安にならなくていい。どうなるかわからない未来相手にひとりで震えなくていいんだ。――俺を呼んで」

願いのように、宗一郎が言う。

「俺が、いつでも支えてあげる。……ううん。支えさせて、結花のこと。俺も結花の力になりたい」
「宗一郎……!」

結花の胸が感動で震えた。
自分はこんなにもこの人に愛されているのに、どうして少しでも好かれていないかもしれないなどと思ったりしたのだろう。
宗一郎はそんなことを責めもせず、受験で不安定に揺れる結花の心さえも包み込んでくれて、安心させてくれる。

「好き……!」
「うん。俺も大好きだよ、結花

宗一郎の腕の力が強くなったかと思うと、ふいに体を離されて宗一郎の唇が結花のそれに合わさった。
一瞬だけ掠めるように触れて離れて行くと、宗一郎は悪戯っぽく肩を竦めて笑う。

「ふふ。学校だけど、誰も見てないし、いいよね」
「うん……。今だけは、いいよ……」

答えると、もう一度ゆっくり宗一郎の顔が近づいてきた。
今度は先ほどよりも深く、少しだけ長く口付けをして、そうして名残惜しそうに離れていく。

結花

宗一郎が、こつんと結花の額と自身の額を合わせながら結花の名を呼んだ。

「ん?」

満たされた気持ちで返事をする結花に、宗一郎が言う。

「英語の復習、しよっか」
「!!」

一気に地面に叩き落された気持ちになった。
なにその切り替えの早さ。全然ついていけない!
あんぐりと口を開ける結花を見て、宗一郎はおかしそうにくすくすと笑う。

「あはは、すごい顔。いや、ちゃんと気持ちを確かめあったわけだし、明るい未来に向けてがんばらないとね?」
「それは! そうなんだけど! でももう少しくらい勉強のこと忘れさせてくれたって……!」
「だめだよ」

結花の願いはばっさり切り捨てられた。
項垂れる結花の頭を、宗一郎が優しく撫でる。

「ここで現実逃避したって、どうせ結花は後で泣くでしょ」
「……はい」
「大丈夫。やることがたくさんあるように思って焦っちゃうかもしれないけど、きちんと落ち着いて目の前の問題をひとつひとつ確実に片付けていけば、気づいたときには全部自分のものになってるよ。だから一緒にがんばろう? 俺がついてるから」
「――うん!」

結花は元気良く頷いた。
宗一郎が側にいてくれれば、もうこわいものなしだ。

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