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背後で瑞穂が動き、ロッカーを探っている気配がする。
そういえば、瑞穂と二人きりになるのはこれが初めてだ。
(なにか言われたりしたらどうしよう……)
受験勉強でストレスがたまっているからなのか、なんとなく自意識過剰になってしまう。
被害妄想を振り切って採点に戻ろうと参考書に目を落とすけれど、どうしても瑞穂が気になってしまって集中できなかった。
瑞穂のいる背中が強張る。
教科書を出し入れする音。ロッカーを閉める音。
まるで瑞穂を監視でもしているかのように、勝手に神経が瑞穂の動きを探ってしまう。
カバンを閉じる音が聞こえたと思うと、瑞穂が立ち上がる気配がした。
そのまま教室の出口へと足音が近づいていく。
(よかった……。何事もなかった……)
そうホッと胸を撫で下ろしたとき。
「こんな時間までひとりで勉強して……まさか宗一郎のこと待ってるの?」
瑞穂の冷たい声音が教室に響いた。
「……え?」
すっかり気を緩めていた結花は驚いて瑞穂を振り返るものの、咄嗟のことに二の句を継げなかった。
呆然としている結花を見て、瑞穂が重ねて問いかける。
「ウワサで聞いたんだけど、あなたの志望校ってわたしたちと同じ大学なんですって?」
わたしたち。その言葉が宗一郎と瑞穂を指す言葉だと気づいて、結花の心に不快感が芽生える。
どうして宗一郎が瑞穂と一緒くたに表現されなくちゃいけないんだろう。
なんとなく、暗に宗一郎は瑞穂のものだと示されたようで、とてもおもしろくない。
「……そうだけど」
不愉快さを全面に押し出して答えると、瑞穂がすっと無表情になった。
顔が整っている分、無表情になるととても迫力がある。
思わず気圧される結花に、瑞穂の綺麗な声が抑揚なく紡がれる。
「ふうん。無駄なのに」
「え?」
「ねえ、どうして気づかないの? あなたと宗一郎、全然釣り合いが取れてない」
「! そ、そんなこと……っ!」
言われなくてもわかってる。
その言葉は結花の喉の奥で引っかかって音にならなかった。
釣り合いがとれていない。宗一郎には似合わない。
何度となく言われてきた言葉。
それを自分で言ってしまったら、まるでその言葉を認めてしまうような気がして、絶対に言いたくなかった。
特に進路がどうなるかもわからない、未来のわからない今は、絶対に自分でそんなことを言いたくない。
唇を噛む結花に、瑞穂がさらに言葉を続ける。
「わたし、いっつも思ってた。どうして宗一郎の隣りにあなたがいるんだろうって」
瑞穂が一言一言ゆっくりと噛み締めるように言う。
「あなたはわたしよりも宗一郎のこと全然知らないじゃない。わたしは、一年生の頃からずっと彼のことを見てきた。彼が苦しんでる時も楽しんでる時も、わたしはいつだって彼の隣りにいたし、彼を支えてきたと思ってる。それなのに、どうして彼の隣りにいるのは、わたしじゃなくあなたなの?」
瑞穂の冷たいまなざしが結花を射抜く。
「それ……は……っ」
なんとか反論を試みようと結花は口を開いたけれど、なにも言葉が出てこなかった。
そういえば、瑞穂と二人きりになるのはこれが初めてだ。
(なにか言われたりしたらどうしよう……)
受験勉強でストレスがたまっているからなのか、なんとなく自意識過剰になってしまう。
被害妄想を振り切って採点に戻ろうと参考書に目を落とすけれど、どうしても瑞穂が気になってしまって集中できなかった。
瑞穂のいる背中が強張る。
教科書を出し入れする音。ロッカーを閉める音。
まるで瑞穂を監視でもしているかのように、勝手に神経が瑞穂の動きを探ってしまう。
カバンを閉じる音が聞こえたと思うと、瑞穂が立ち上がる気配がした。
そのまま教室の出口へと足音が近づいていく。
(よかった……。何事もなかった……)
そうホッと胸を撫で下ろしたとき。
「こんな時間までひとりで勉強して……まさか宗一郎のこと待ってるの?」
瑞穂の冷たい声音が教室に響いた。
「……え?」
すっかり気を緩めていた結花は驚いて瑞穂を振り返るものの、咄嗟のことに二の句を継げなかった。
呆然としている結花を見て、瑞穂が重ねて問いかける。
「ウワサで聞いたんだけど、あなたの志望校ってわたしたちと同じ大学なんですって?」
わたしたち。その言葉が宗一郎と瑞穂を指す言葉だと気づいて、結花の心に不快感が芽生える。
どうして宗一郎が瑞穂と一緒くたに表現されなくちゃいけないんだろう。
なんとなく、暗に宗一郎は瑞穂のものだと示されたようで、とてもおもしろくない。
「……そうだけど」
不愉快さを全面に押し出して答えると、瑞穂がすっと無表情になった。
顔が整っている分、無表情になるととても迫力がある。
思わず気圧される結花に、瑞穂の綺麗な声が抑揚なく紡がれる。
「ふうん。無駄なのに」
「え?」
「ねえ、どうして気づかないの? あなたと宗一郎、全然釣り合いが取れてない」
「! そ、そんなこと……っ!」
言われなくてもわかってる。
その言葉は結花の喉の奥で引っかかって音にならなかった。
釣り合いがとれていない。宗一郎には似合わない。
何度となく言われてきた言葉。
それを自分で言ってしまったら、まるでその言葉を認めてしまうような気がして、絶対に言いたくなかった。
特に進路がどうなるかもわからない、未来のわからない今は、絶対に自分でそんなことを言いたくない。
唇を噛む結花に、瑞穂がさらに言葉を続ける。
「わたし、いっつも思ってた。どうして宗一郎の隣りにあなたがいるんだろうって」
瑞穂が一言一言ゆっくりと噛み締めるように言う。
「あなたはわたしよりも宗一郎のこと全然知らないじゃない。わたしは、一年生の頃からずっと彼のことを見てきた。彼が苦しんでる時も楽しんでる時も、わたしはいつだって彼の隣りにいたし、彼を支えてきたと思ってる。それなのに、どうして彼の隣りにいるのは、わたしじゃなくあなたなの?」
瑞穂の冷たいまなざしが結花を射抜く。
「それ……は……っ」
なんとか反論を試みようと結花は口を開いたけれど、なにも言葉が出てこなかった。