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言って、宗一郎が結花の肩を抱き寄せる。
彼らのやりとりを半ば傍観者の気分で呆れたように見ていた結花は、宗一郎のその行動に面食らった。
一気に体中が熱くなる。
「わ、ちょっと宗一郎!」
恥ずかしさでうろたえる結花とは対照的に、宗一郎が余裕さえ感じさせる笑みでクラスメイトに微笑む。
「そういうわけだから、俺が部活で忙しいからって結花には手を出さないでね」
「へいへい、わかってますよ」
クラスメイトが両手を挙げて降参のポーズでそう言うと、宗一郎がおかしそうにくつくつと笑った。
結花の肩から手を離して、結花の顔を覗き込む。
「じゃあ結花。俺は部活に行くから。いい子で勉強してるんだよ」
それだけ言って最後に結花の頭を撫でると、宗一郎は教室を出て行った。
結花はその背中を見送ると、机の上に英語の参考書を広げた。
英語と格闘すること早二時間。
そろそろ集中も切れてきた。
結花は凝り固まった筋肉をほぐすようにゆっくり首をまわすと、ふうと息を吐き出す。
今日は少しむずかしめの長文読解に挑んでいた。
埋まった解答欄をじっくりと見つめ、結花は答え合わせに取り掛かる。
「…………」
赤いペンでつけるバツ印が増えていくたびに、結花の胸が小さくざわついた。
一番試験の早いところで、受験まであと三ヶ月切っている。
それなのに、こんな正解率で果たしてほんとうに大丈夫なんだろうか。
また手が新しくバツを刻む。
足元が、首筋がざわざわする。
胃のあたりが不安でぐるぐるした。
刻まれていくバツ。そのたびに波立つ心臓。
ふいに、地面が足元から崩れていく感覚がして、おもわず結花が叫びそうになったそのとき。
からからと教室のドアがスライドする音がした。
(宗一郎……!?)
ホッと安堵の息を吐き出してそちらを振り返る。
「――っ」
けれどそこにいたのは思い描いていたその人ではなく、一年の頃から宗一郎のことを好きだというウワサの、同じクラスの高梨瑞穂だった。
結花は瑞穂の姿を認めると、そのまま何事もなかったかのようにからだを元に戻した。
高梨瑞穂は美人で頭も良い才色兼備を絵に描いたような人だ。
おまけに女子バスケ部のスリーポイントシューターで、それが大いに関係しているのか宗一郎と一年の頃からずっと仲が良い。
おまけに瑞穂は宗一郎と同じところに、同じく十月の頭にスポーツ推薦合格を決めていた。
結花よりも瑞穂のほうが宗一郎にお似合いだという声も、今までに何度耳にしたかわからない。
結花と瑞穂が同じクラスになったのは高校三年生からで、だからといって特に仲が良いわけでもなかった。
それどころか、滅多なことがないと会話も交わさない。
これまでも結花が瑞穂と交わした会話は片手で足りるくらい、しかもそのどれもが味気ない事務的なものばかりだった。
もちろん、結花は瑞穂が宗一郎のことを好きだと言うウワサを意識していたし、瑞穂のほうでも結花が宗一郎の彼女だということを意識していて、お互いが距離を取っていたからかもしれない。
彼らのやりとりを半ば傍観者の気分で呆れたように見ていた結花は、宗一郎のその行動に面食らった。
一気に体中が熱くなる。
「わ、ちょっと宗一郎!」
恥ずかしさでうろたえる結花とは対照的に、宗一郎が余裕さえ感じさせる笑みでクラスメイトに微笑む。
「そういうわけだから、俺が部活で忙しいからって結花には手を出さないでね」
「へいへい、わかってますよ」
クラスメイトが両手を挙げて降参のポーズでそう言うと、宗一郎がおかしそうにくつくつと笑った。
結花の肩から手を離して、結花の顔を覗き込む。
「じゃあ結花。俺は部活に行くから。いい子で勉強してるんだよ」
それだけ言って最後に結花の頭を撫でると、宗一郎は教室を出て行った。
結花はその背中を見送ると、机の上に英語の参考書を広げた。
英語と格闘すること早二時間。
そろそろ集中も切れてきた。
結花は凝り固まった筋肉をほぐすようにゆっくり首をまわすと、ふうと息を吐き出す。
今日は少しむずかしめの長文読解に挑んでいた。
埋まった解答欄をじっくりと見つめ、結花は答え合わせに取り掛かる。
「…………」
赤いペンでつけるバツ印が増えていくたびに、結花の胸が小さくざわついた。
一番試験の早いところで、受験まであと三ヶ月切っている。
それなのに、こんな正解率で果たしてほんとうに大丈夫なんだろうか。
また手が新しくバツを刻む。
足元が、首筋がざわざわする。
胃のあたりが不安でぐるぐるした。
刻まれていくバツ。そのたびに波立つ心臓。
ふいに、地面が足元から崩れていく感覚がして、おもわず結花が叫びそうになったそのとき。
からからと教室のドアがスライドする音がした。
(宗一郎……!?)
ホッと安堵の息を吐き出してそちらを振り返る。
「――っ」
けれどそこにいたのは思い描いていたその人ではなく、一年の頃から宗一郎のことを好きだというウワサの、同じクラスの高梨瑞穂だった。
結花は瑞穂の姿を認めると、そのまま何事もなかったかのようにからだを元に戻した。
高梨瑞穂は美人で頭も良い才色兼備を絵に描いたような人だ。
おまけに女子バスケ部のスリーポイントシューターで、それが大いに関係しているのか宗一郎と一年の頃からずっと仲が良い。
おまけに瑞穂は宗一郎と同じところに、同じく十月の頭にスポーツ推薦合格を決めていた。
結花よりも瑞穂のほうが宗一郎にお似合いだという声も、今までに何度耳にしたかわからない。
結花と瑞穂が同じクラスになったのは高校三年生からで、だからといって特に仲が良いわけでもなかった。
それどころか、滅多なことがないと会話も交わさない。
これまでも結花が瑞穂と交わした会話は片手で足りるくらい、しかもそのどれもが味気ない事務的なものばかりだった。
もちろん、結花は瑞穂が宗一郎のことを好きだと言うウワサを意識していたし、瑞穂のほうでも結花が宗一郎の彼女だということを意識していて、お互いが距離を取っていたからかもしれない。