不器用な二人
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意識した途端、心臓が爆発したように暴れ出す。
それはばくばくと息つく暇もなく血液を全身に送り続け、結花の頭を次第に真っ白に染めあげていく。
(ど、どうしよう……! 越野はなんとも思ってないみたいだけど、だけどでも……!)
越野が自分のスプーンを口に運ぶたびに、結花の心臓が熱くなった。
「結花? なんだ、食べないのか?」
越野が呑気にそんなことを聞いてきた。
人の気も知らないで。結花はその言葉をすんでのところで飲み込んで、キッと越野を睨みつける。
(わたしばっかり動揺しちゃって、悔しい!)
「た、食べるわよ!」
叫ぶと同時に、かっこむようにしてハロハロを食べた。
冷たさが一気に全身を貫いて、頭がキーンと痛くなった。
「……っ!」
悶える結花に、越野が呆れ顔になる。
「なにやってんだ、お前。ったくどこまで食い意地はってんだよ。んな急いで食わねぇでも、もう取ったりしねぇから安心しろよ」
(そういうことじゃないわよ、バカ~!)
どこまでも鈍感な越野に、結花は心の中だけで盛大に抗議した。
結花の気持ちを知っている仙道が、くつくつと肩を震わせて笑っているのがひどく恨めしかった。
それから数日後。体育館の割り当てが男子バスケ部と重なった日のことだった。
部活終了間際、突然男子側のフロアから、轟くような怒鳴り声が聞こえた。
驚いて振り返ると、鬼監督と名高い男子バスケ部の監督・田岡茂一に、越野が怒られているようだった。
(越野……?)
めずらしいこともあるものだ。マジメ一辺倒の彼が一体何をしたんだろう。
視線の先で越野は、監督に耳を引っ張られて体育館外へと連れ出されている。
「ありゃりゃ……。大丈夫かな」
結花は心配そうにそれを見送ると、後ろ髪を引かれながらも自分の部活に意識を戻した。
それから女子バスケ部の練習も終わり、結花は着替えていつものように部室棟の下で越野と仙道を待っていた。
ガンガンと荒く響いた靴音に視線をあげると、越野がひとりで階段を降りて来ていた。
「あれ、今日はひとり? 仙道は?」
開口一番にそう訊ねた結花に、越野は顔をしかめて首を振る。
「サボり」
「え、仙道また部活サボったの?」
どうやらさっき越野が怒られていたのは、そのことだったらしい。
仙道は男子バスケ部のエースだけれど、困ったことに少々サボり癖がある。
かわいそうなことに越野はそんな仙道のお目付け役に任命されていて、仙道がサボるたびに今回のように怒られている。
あまりにも不憫だ。
歩き始めた越野に続いて結花もその隣りに並んで歩きだす。
「仙道には困ったものだねー」
「まったくだぜ。なんっでオレが毎回毎回あいつのかわりに怒られなきゃなんねーんだよ! 冗談じゃねぇっつの!」