不器用な二人
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放課後の陵南高校体育館。
部活終了の合図を聞いた結花は、フロアに転がったバスケットボールを拾い集めてカゴへと収めていた。
結花の所属している女子バスケ部は、男子と並んでなかなかの強豪だ。
毎日の練習もそれなりにハードで厳しく、充実している。
「よお。そっちももう終わりか?」
のんびりボールを拾い集めていると、すぐ近くからそんな声がした。
その聞きなれた声音に、結花の心臓がどきんと跳ねる。
同じクラスで男子バスケ部、結花の想い人でもある越野宏明だ。体育館を二分するネット越しにこちらを見つめている。
「ん、そう。そっちも?」
結花が平静を装いながらひょいと足元のボールを拾い上げて答えると、越野が肩を竦めた。
その大人っぽいしぐさが、どこか少年のような越野には背伸びして見えて、とてもかわいらしい。
「そ。今日の練習も相変わらずハードだったぜ」
「あはは、知ってる。ここから見えてたもん」
陵南高校には体育館がひとつしかなく、体育館を使う部活は仲良く順番に体育館を使用している。
今日は男子バスケ部と女子バスケ部が体育館の割り当てだ。
当然、お互いの部活の様子がよく見えるというわけである。
「なあ、今日帰りいつものコンビニ寄って帰ろうぜ。今日からハロハロ発売だろ? オレ、毎年あれ楽しみにしてんだよなー」
「そうなの? 越野のおごりならいいよ」
わざとからかうように言うと、越野がいやそうに片眉をあげた。
唇を少し尖らせて、ぶうぶうと文句を言う。
「なんでオレがお前におごらなきゃなんないんだよ」
「だってわたしお金ないもん」
「バーカ。オレだってねぇよ」
「えー」
「じゃあ、オレがふたりにおごってあげるよ」
そんなやり取りをしていると、新たに飄々とした声が割り込んできた。
これまた同じクラスで男子バスケ部の仙道彰だ。
結花たち三人はとても仲が良い。部活終わりに一緒に寄り道をしながら帰る事もしょっちゅうだった。
気前の良い仙道の発言に、越野が訝しそうに眉をひそめる。
「おごってやるって……。仙道、お前もこの前金ねぇって騒いでたじゃねぇか」
「んー? でも臨時収入はいったからさ」
「「臨時収入?」」
そのあやしい響きに、結花と越野の二人が同時に顔を見合わせた。
「ちょっと聞きましたか、越野さん。臨時収入ってあれですよ。きっといかがわし系ですよ」
「だよな、絶対そうだよな! まさかあいつ、女に貢がせてんのか!?」
「うぅわ、似合いすぎ! 否定できない!」
「…………ちょっと」
ネット越しにこそこそと囁きあっていると、仙道が不機嫌に鼻を鳴らす。
「二人して盛り上がってるようだけど、別にいかがわしいお金じゃないからね。たまたま親戚のおばさんが来てお小遣いくれたんだよ」
「あ、なんだそうなの? なんか拍子抜け」
「へー。小遣いもらうとか、仙道もやっぱりちゃんと高校生なんだな!」
「あのね、二人ともいったいオレのことなんだと思ってんの……」
二人の言葉に、仙道が疲れたように肩を落とす。
「あっはは、ごめんごめん仙道! 冗談だって!」
「そうそう! だからオレにもおごれよな!」
「……別にいいけど……」
越野が仙道の背中をバシバシ叩いているのを笑って見ていると、後方で結花を呼ぶ声が聞こえた。
部活終了の合図を聞いた結花は、フロアに転がったバスケットボールを拾い集めてカゴへと収めていた。
結花の所属している女子バスケ部は、男子と並んでなかなかの強豪だ。
毎日の練習もそれなりにハードで厳しく、充実している。
「よお。そっちももう終わりか?」
のんびりボールを拾い集めていると、すぐ近くからそんな声がした。
その聞きなれた声音に、結花の心臓がどきんと跳ねる。
同じクラスで男子バスケ部、結花の想い人でもある越野宏明だ。体育館を二分するネット越しにこちらを見つめている。
「ん、そう。そっちも?」
結花が平静を装いながらひょいと足元のボールを拾い上げて答えると、越野が肩を竦めた。
その大人っぽいしぐさが、どこか少年のような越野には背伸びして見えて、とてもかわいらしい。
「そ。今日の練習も相変わらずハードだったぜ」
「あはは、知ってる。ここから見えてたもん」
陵南高校には体育館がひとつしかなく、体育館を使う部活は仲良く順番に体育館を使用している。
今日は男子バスケ部と女子バスケ部が体育館の割り当てだ。
当然、お互いの部活の様子がよく見えるというわけである。
「なあ、今日帰りいつものコンビニ寄って帰ろうぜ。今日からハロハロ発売だろ? オレ、毎年あれ楽しみにしてんだよなー」
「そうなの? 越野のおごりならいいよ」
わざとからかうように言うと、越野がいやそうに片眉をあげた。
唇を少し尖らせて、ぶうぶうと文句を言う。
「なんでオレがお前におごらなきゃなんないんだよ」
「だってわたしお金ないもん」
「バーカ。オレだってねぇよ」
「えー」
「じゃあ、オレがふたりにおごってあげるよ」
そんなやり取りをしていると、新たに飄々とした声が割り込んできた。
これまた同じクラスで男子バスケ部の仙道彰だ。
結花たち三人はとても仲が良い。部活終わりに一緒に寄り道をしながら帰る事もしょっちゅうだった。
気前の良い仙道の発言に、越野が訝しそうに眉をひそめる。
「おごってやるって……。仙道、お前もこの前金ねぇって騒いでたじゃねぇか」
「んー? でも臨時収入はいったからさ」
「「臨時収入?」」
そのあやしい響きに、結花と越野の二人が同時に顔を見合わせた。
「ちょっと聞きましたか、越野さん。臨時収入ってあれですよ。きっといかがわし系ですよ」
「だよな、絶対そうだよな! まさかあいつ、女に貢がせてんのか!?」
「うぅわ、似合いすぎ! 否定できない!」
「…………ちょっと」
ネット越しにこそこそと囁きあっていると、仙道が不機嫌に鼻を鳴らす。
「二人して盛り上がってるようだけど、別にいかがわしいお金じゃないからね。たまたま親戚のおばさんが来てお小遣いくれたんだよ」
「あ、なんだそうなの? なんか拍子抜け」
「へー。小遣いもらうとか、仙道もやっぱりちゃんと高校生なんだな!」
「あのね、二人ともいったいオレのことなんだと思ってんの……」
二人の言葉に、仙道が疲れたように肩を落とす。
「あっはは、ごめんごめん仙道! 冗談だって!」
「そうそう! だからオレにもおごれよな!」
「……別にいいけど……」
越野が仙道の背中をバシバシ叩いているのを笑って見ていると、後方で結花を呼ぶ声が聞こえた。
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