こうして勝負は始まった
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「ね、結花。学校生活はどう? もう慣れた?」
宗一郎は自分の部屋のベッドの上に座って読んでいたバスケ雑誌を閉じると、その下で一生懸命英語の勉強に取り組んでいる結花に声をかけた。
結花は隣りの家に住んでいるひとつ年下の幼馴染みだ。この春宗一郎と同じ海南大附属高校に進学したばかりで、夕飯後に宗一郎の部屋に来て次の日の予習をするのが、中学の頃からの日課になっている。
ちょうどわからない問題にとりかかっていたのか、眉間に皺を寄せたままの難しい顔で結花が振り返る。
その真剣な顔がなんとも愛らしい。
「はは、すごい顔。結花、皺寄ってるよ」
言いながらそこを人差し指で軽くつっつくと、結花がむうっと声をあげた。
「だってこの問題難しくって。宗ちゃん、これわかる?」
「どれ?」
宗一郎は結花の差した問題を見ようと、ベッドから身を乗り出した。
からだのすぐ下に結花の顔がある。結花の頭からふわりと香るシャンプーの甘い匂いにくらりとした。
高鳴る胸を押し隠して、宗一郎は平静を装って唇を持ち上げる。
「ああ、この問題はこうだよ。こっちの文がこのthatにかかって、こういう意味になるんだ」
「なるほど! やっぱり宗ちゃんあったまいい! がんばって宗ちゃんとおんなじ高校受けてよかったぁ!」
嬉しそうに笑う結花に、宗一郎も笑みを返す。
「俺も結花が同じ高校に来てくれて嬉しいよ」
「ほんと? 宗ちゃんにそう言ってもらえるなんて嬉しいなあ」
「どういたしまして」
結花の頭を優しく撫でると、宗一郎は体勢をもとに戻す。
「ところで、結花。さっきの質問だけど、学校にはもう慣れた?」
「あ、うん。もうだいぶ慣れてきたよ! だんだんと仲良い友達も増えてきたし、すっごく楽しい!」
「そっか。それはよかった。学校で迷子になったりしてない?」
「移動教室は友達としてるから大丈夫」
「はは。ひとりじゃ心配なんだ?」
「だって、学校無駄に広いんだもん……」
からかうように言うと、結花が拗ねたように唇を尖らせた。
その様があまりにかわいくて、宗一郎は小さく笑いを零す。
「はは、ごめんごめん。ちょっと意地悪だったかな。でも良い友達ができてよかったね」
「うん! 特に、隣りの席になった男の子とはすっごく気が合ってね、最近ではその子といることが多いんだー」
「……男の子?」
結花の口から出た単語に、宗一郎はつと形のいい眉を寄せた。
結花はそれに気づかずににこにこと楽しそうに喋り続ける。
「うん、そうなの。なんかね、すっごく元気いっぱいでお調子者で、お猿さんみたいな子なんだよ! 今度宗ちゃんにも紹介するね」
「ふうん……。なんか、どこかで聞いたことのあるような特徴のお猿さんだね」
結花の説明に、ふと今年バスケ部に入ってきた元気な後輩が頭に浮かんだ。
(まさかね……)
悪い予感を振り払うように、宗一郎は首を振る。
と。
「宗ちゃん?」
宗一郎の様子に結花が不思議そうに目をぱちくりさせた。
宗一郎はごまかすように微笑むと、結花の頭を優しく撫でる。
「なんでもないよ。結花が楽しそうでよかった」
「うん! 宗ちゃんありがとう!」
宗一郎は自分の部屋のベッドの上に座って読んでいたバスケ雑誌を閉じると、その下で一生懸命英語の勉強に取り組んでいる結花に声をかけた。
結花は隣りの家に住んでいるひとつ年下の幼馴染みだ。この春宗一郎と同じ海南大附属高校に進学したばかりで、夕飯後に宗一郎の部屋に来て次の日の予習をするのが、中学の頃からの日課になっている。
ちょうどわからない問題にとりかかっていたのか、眉間に皺を寄せたままの難しい顔で結花が振り返る。
その真剣な顔がなんとも愛らしい。
「はは、すごい顔。結花、皺寄ってるよ」
言いながらそこを人差し指で軽くつっつくと、結花がむうっと声をあげた。
「だってこの問題難しくって。宗ちゃん、これわかる?」
「どれ?」
宗一郎は結花の差した問題を見ようと、ベッドから身を乗り出した。
からだのすぐ下に結花の顔がある。結花の頭からふわりと香るシャンプーの甘い匂いにくらりとした。
高鳴る胸を押し隠して、宗一郎は平静を装って唇を持ち上げる。
「ああ、この問題はこうだよ。こっちの文がこのthatにかかって、こういう意味になるんだ」
「なるほど! やっぱり宗ちゃんあったまいい! がんばって宗ちゃんとおんなじ高校受けてよかったぁ!」
嬉しそうに笑う結花に、宗一郎も笑みを返す。
「俺も結花が同じ高校に来てくれて嬉しいよ」
「ほんと? 宗ちゃんにそう言ってもらえるなんて嬉しいなあ」
「どういたしまして」
結花の頭を優しく撫でると、宗一郎は体勢をもとに戻す。
「ところで、結花。さっきの質問だけど、学校にはもう慣れた?」
「あ、うん。もうだいぶ慣れてきたよ! だんだんと仲良い友達も増えてきたし、すっごく楽しい!」
「そっか。それはよかった。学校で迷子になったりしてない?」
「移動教室は友達としてるから大丈夫」
「はは。ひとりじゃ心配なんだ?」
「だって、学校無駄に広いんだもん……」
からかうように言うと、結花が拗ねたように唇を尖らせた。
その様があまりにかわいくて、宗一郎は小さく笑いを零す。
「はは、ごめんごめん。ちょっと意地悪だったかな。でも良い友達ができてよかったね」
「うん! 特に、隣りの席になった男の子とはすっごく気が合ってね、最近ではその子といることが多いんだー」
「……男の子?」
結花の口から出た単語に、宗一郎はつと形のいい眉を寄せた。
結花はそれに気づかずににこにこと楽しそうに喋り続ける。
「うん、そうなの。なんかね、すっごく元気いっぱいでお調子者で、お猿さんみたいな子なんだよ! 今度宗ちゃんにも紹介するね」
「ふうん……。なんか、どこかで聞いたことのあるような特徴のお猿さんだね」
結花の説明に、ふと今年バスケ部に入ってきた元気な後輩が頭に浮かんだ。
(まさかね……)
悪い予感を振り払うように、宗一郎は首を振る。
と。
「宗ちゃん?」
宗一郎の様子に結花が不思議そうに目をぱちくりさせた。
宗一郎はごまかすように微笑むと、結花の頭を優しく撫でる。
「なんでもないよ。結花が楽しそうでよかった」
「うん! 宗ちゃんありがとう!」
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