この手の先に
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「あ……きら……くん……?」
戸惑うように視線をさまよわせる琴梨の頬をそっと撫でて、仙道は長年胸の奥にしまいこんでいた気持ちをゆっくりと口にした。
「好きだよ、琴梨」
ハッと琴梨の綺麗な瞳が仙道をとらえる。
心臓はもう限界のように激しく胸を叩いている。
なのに止まらない想い。
忘れた振りをしていたけれど、久々に琴梨と再会して、自分の気持ちをごまかしようがないくらいはっきりと思い知ってしまった。
好き。もうどこにも行かせたくない。
琴梨が焦った様に言葉を紡ぐ。
「あ、彰くん、いつもそんな風に言って女の子口説いてるの? もう、何もしないって最初に約束したでしょう? 幼なじみにまで手を出そうとするなんて、彰くんてばタチわる……い……」
震える声でなにかに急き立てられるように喋っていた琴梨の手をそっと握ると、琴梨がびくりと言葉を止めた。
怯えたような眼差しで、仙道をじっと見つめてくる。
「彰……くん?」
仙道は琴梨の手をつかんでいるのとは反対の手で、琴梨の頬に手を伸ばした。
仙道の触れたところから、琴梨の顔に波紋のように赤みが差して行く。
「ねえ、琴梨。どうしてオレが、女の子にいい加減だったんだと思う?」
真剣に琴梨を見つめると、慌てたように琴梨が仙道から視線を逸らせた。
顔をうつむけて、硬い声音で言う。
「そ、そんなのわからないわ……」
「ずっと、他の女に琴梨の面影を探してたからだよ。ほんとうは琴梨がずっと好きだった。ずっとずっと、琴梨だけを求めてた。だけど、幼いオレはバカみたいに照れちゃって、正直に琴梨に手を伸ばせなかったんだ」
「……っ。も、もういいよ。この話は終わりにしよう! あ、紅茶ありがとうね。これ、片付けてわたしもう帰るね」
途端、弾かれたように琴梨は立ち上がると、テーブルに置いたままで手をつけていなかった紅茶を一気に飲み干した。
そのまま逃げるように流しに向かう琴梨の背中に、仙道はゆっくりついていく。
「スポンジ、これでいいのかな? 洗って……っ、!」
無防備に仙道に背を向けて流しに立った琴梨を、仙道は後ろから抱き締めた。
琴梨の小さな唇から息を短く吸い込む音がして、その手からマグカップが落ちる。
がつんとシンクにそれが当たった音だけが、二人の間に響いた。
「あ、彰くん……! 離して!」
「……琴梨」
仙道は緊張でカラカラになった喉で琴梨の名前を囁くと、そのまま琴梨の後ろ髪を顔でよけて、露わになったうなじにキスをした。
腕の中で、琴梨がびくんと震える。
仙道はそのまま軽いリップ音を立てて、琴梨のうなじに何度かキスを繰り返した。
「……やっ」
震える体から、琴梨が絞り出すように拒絶の声をあげる。
「あき……らっ、くん……! やめ……!」
「好きだよ、琴梨」
キスをやめて、後ろから琴梨のからだに回した腕にきつく力を込める。
腕の中で琴梨が大きく身じろぎをした。
だけどそれは仙道にとっては微かな力でしかなくて、押さえつけるように腕にさらに力を込める。
「や……、彰くん……! なんで!?」
涙の混じった琴梨の声。