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口もとに自嘲を浮かべると、すぐにそれを隠してさっとドアをひき開ける。
「おまたせ」
言葉と共に、からだを運転席に滑り込ませた。
琴梨がふわりと笑う。
「ううん、だいじょうぶ」
さっきよりもぐんと近くなった琴梨との距離に、めまいがした。
甘い香りが車内に漂う。
仙道は高鳴る胸を必死に宥めながら、ブレーキに足をかけた。
ギアをパーキングからドライブにして、ハンドブレーキを下げると、ブレーキから足を離した。
車が動きだすにつれて、仙道の心も次第に落ち着きを取り戻していく。
「ふふ、ほんとうに彰くん車運転できるんだね。なんか変な感じ」
琴梨の言葉に、仙道は横目でちらりと視線をやって、楽しげに唇を持ち上げた。
「はは。その感覚はわかるよ。オレも、初めて越野の車に乗ったときはなんか違和感だったから」
「越野くん?」
「あ、ごめん。高校の時の部活仲間。すっげえ世話焼きなやつでさ、今でも時々面倒みてもらってる」
「あはは、面倒見てもらってるの? それは越野くんも大変だなぁ」
琴梨がくすくすとおかしそうに笑い声をあげた。
琴梨の唇が越野の名前を呼んだというだけで少し胸の奥がもやもやするなんて、重症だなと自分でも思う。
「彰くん、運転上手だね。ブレーキがスムーズ」
しばらく無言で走っていると、ふいに琴梨が感心したように呟いた。
仙道は一瞬だけ目線を琴梨に転じると、すぐにまた正面に視線を戻して言う。
「そう? 普通だと思うけど」
「そんなことないよ。わたし、ブレーキいっつもがくんがくんなっちゃうもん。彰くんみたいに、スーッと自然に止まれない」
「え!? 琴梨、運転するの!?」
「……ちょっと、なにその反応? わたし、これでもゴールド免許なんだよ?」
「ああ。あんまり運転してないから?」
「むー、失礼な! ちゃんと運転したうえでのゴールド免許です!」
拗ねたように言う琴梨に、仙道はくつくつと喉の奥を震わせた。
むうっと唸るような声が、隣りの席から聞こえてくる。
「わかってるって。ごめんごめん琴梨。冗談だよ」
「幾分本気だったような気もするけど」
「はは。だって、琴梨はしっかりしてるようで、意外におっちょこちょいなところがあるから。オレとしてはちょっと心配だっただけだよ」
「……あ、ありがと」
「どういたしまして」
照れたような琴梨の言葉に、仙道は弾む胸を抑えられずに小さく笑った。
なにようと、肩を小突く琴梨の存在が、愛しくてたまらない。
仙道は、いいやと軽く呟いた。
車内に心地いい沈黙が落ちる。
久々の落ち着いた空間に、仙道の心がふんわりと温かくなった。
「なんか飲む? 入れるよ。琴梨は、紅茶派だよね?」
家に着くと、仙道と琴梨はしばらくとりとめのない話をして過ごした。
昔の話や高校のときの話、今の近況や好きなテレビの番組まで、これまで疎遠だった時間を埋めるかのように、話題は尽きない。
仙道が立ち上がると、琴梨は嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう。覚えててくれたんだ」
「もちろん」
「おまたせ」
言葉と共に、からだを運転席に滑り込ませた。
琴梨がふわりと笑う。
「ううん、だいじょうぶ」
さっきよりもぐんと近くなった琴梨との距離に、めまいがした。
甘い香りが車内に漂う。
仙道は高鳴る胸を必死に宥めながら、ブレーキに足をかけた。
ギアをパーキングからドライブにして、ハンドブレーキを下げると、ブレーキから足を離した。
車が動きだすにつれて、仙道の心も次第に落ち着きを取り戻していく。
「ふふ、ほんとうに彰くん車運転できるんだね。なんか変な感じ」
琴梨の言葉に、仙道は横目でちらりと視線をやって、楽しげに唇を持ち上げた。
「はは。その感覚はわかるよ。オレも、初めて越野の車に乗ったときはなんか違和感だったから」
「越野くん?」
「あ、ごめん。高校の時の部活仲間。すっげえ世話焼きなやつでさ、今でも時々面倒みてもらってる」
「あはは、面倒見てもらってるの? それは越野くんも大変だなぁ」
琴梨がくすくすとおかしそうに笑い声をあげた。
琴梨の唇が越野の名前を呼んだというだけで少し胸の奥がもやもやするなんて、重症だなと自分でも思う。
「彰くん、運転上手だね。ブレーキがスムーズ」
しばらく無言で走っていると、ふいに琴梨が感心したように呟いた。
仙道は一瞬だけ目線を琴梨に転じると、すぐにまた正面に視線を戻して言う。
「そう? 普通だと思うけど」
「そんなことないよ。わたし、ブレーキいっつもがくんがくんなっちゃうもん。彰くんみたいに、スーッと自然に止まれない」
「え!? 琴梨、運転するの!?」
「……ちょっと、なにその反応? わたし、これでもゴールド免許なんだよ?」
「ああ。あんまり運転してないから?」
「むー、失礼な! ちゃんと運転したうえでのゴールド免許です!」
拗ねたように言う琴梨に、仙道はくつくつと喉の奥を震わせた。
むうっと唸るような声が、隣りの席から聞こえてくる。
「わかってるって。ごめんごめん琴梨。冗談だよ」
「幾分本気だったような気もするけど」
「はは。だって、琴梨はしっかりしてるようで、意外におっちょこちょいなところがあるから。オレとしてはちょっと心配だっただけだよ」
「……あ、ありがと」
「どういたしまして」
照れたような琴梨の言葉に、仙道は弾む胸を抑えられずに小さく笑った。
なにようと、肩を小突く琴梨の存在が、愛しくてたまらない。
仙道は、いいやと軽く呟いた。
車内に心地いい沈黙が落ちる。
久々の落ち着いた空間に、仙道の心がふんわりと温かくなった。
「なんか飲む? 入れるよ。琴梨は、紅茶派だよね?」
家に着くと、仙道と琴梨はしばらくとりとめのない話をして過ごした。
昔の話や高校のときの話、今の近況や好きなテレビの番組まで、これまで疎遠だった時間を埋めるかのように、話題は尽きない。
仙道が立ち上がると、琴梨は嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう。覚えててくれたんだ」
「もちろん」