この手の先に
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ホッと胸を撫で下ろして、仙道は隣りを歩く琴梨に顔を向ける。
自分の胸の辺りで揺れている琴梨の頭からほのかに香る甘いシャンプーの匂いに、とくとくと心臓が速いリズムを刻む。
「ね、琴梨。お茶なんだけど……さ。よかったらウチに来ない?」
「彰くんち?」
「そう。オレ、この近くのマンション借りてるんだ。車で来てるから、ちょっとドライブして遠回りがてら。……どう?」
「え、そう……だなぁ……」
それまでやわらかな笑顔を浮かべていた琴梨の表情に、さっと迷いが走った。
仙道はそれを目ざとく見つけて、からかうように口の端を持ち上げる。
「あ、もしかしてオレのこと警戒してる?」
「え!?」
「はは、図星だ。だいじょうぶだよ、琴梨。まさか、久々に再会した幼馴染みを襲ったりなんてしないから」
「……ほんとう? 彰くん、結構女の子に手が早いってウワサだけど」
疑うような眼差しで発された言葉に、ぎくりと仙道のからだが強張った。
だれだ、そんなウワサを流したやつは。……あながち、間違いでもないけれど。
「……それ、誰に聞いたの? というか、いつのウワサ?」
「高校の時に、風のウワサで。神奈川に行っても、彰くんはやっぱり有名人だったから」
「…………」
なるほど。有名人とはつらい。よりにもよって一番知られたくない人の耳にまで、しっかり届いているとは。
仙道は嘆息した。
「まあ、そのウワサも間違ってないけど」
「やっぱり!」
仙道のせりふを遮るように声をあげた琴梨に、仙道は苦笑する。
「でも、ほんとに琴梨には手を出さないよ。最近はオレも落ち着いてるし」
琴梨が戸惑うように瞳を揺らして仙道をじっと見つめる。
仙道は大丈夫というように微笑んだ。
「それに、親同士は今も交流あるみたいだし、オレが琴梨に変なことしたらすぐ筒抜けだろ? そんな危険はおかさないって」
「うーん、そうだよね……。うん、いいよ。じゃあ彰くんを信じるね。だけど、変なことしたらすぐに彰くんのお母さんに言いつけるからね」
「はは。了解しました」
お手上げのポーズで仙道は承諾すると、にっこりと微笑んだ。
ジーンズのポケットを探って、そこから車のキーを取り出すと、ちゃりんと琴梨の目の前にかざしてみせる。
「では、早速車を取りに行きますか」
駐車場はすぐ近くだった。
都会では珍しい、12時間1000円のパーキング。
仙道は先に琴梨を車の助手席に座らせると、自分は駐車番号を確認して、精算機に向かった。
機械の案内にしたがって、お金を挿入口に滑り込ませる。
ウイーンという無機質な音を耳にいれながら、そっと自分の車にいる琴梨に目を向けた。
カバンの中身を探っているのか、俯いている横顔もほんとうに綺麗で、琴梨のまわりだけ世界が違ってしまっているようだ。
しばらくその横顔に見とれていると、『精算が完了しました』という機械音声のアナウンスが耳に飛び込んで来た。
仙道はハッと我に返ると、大きく深呼吸して車へと取って返した。
ドアにかけた手が、緊張して少し震えている。
(やれやれ。ほんとう、情けないな)
自分の胸の辺りで揺れている琴梨の頭からほのかに香る甘いシャンプーの匂いに、とくとくと心臓が速いリズムを刻む。
「ね、琴梨。お茶なんだけど……さ。よかったらウチに来ない?」
「彰くんち?」
「そう。オレ、この近くのマンション借りてるんだ。車で来てるから、ちょっとドライブして遠回りがてら。……どう?」
「え、そう……だなぁ……」
それまでやわらかな笑顔を浮かべていた琴梨の表情に、さっと迷いが走った。
仙道はそれを目ざとく見つけて、からかうように口の端を持ち上げる。
「あ、もしかしてオレのこと警戒してる?」
「え!?」
「はは、図星だ。だいじょうぶだよ、琴梨。まさか、久々に再会した幼馴染みを襲ったりなんてしないから」
「……ほんとう? 彰くん、結構女の子に手が早いってウワサだけど」
疑うような眼差しで発された言葉に、ぎくりと仙道のからだが強張った。
だれだ、そんなウワサを流したやつは。……あながち、間違いでもないけれど。
「……それ、誰に聞いたの? というか、いつのウワサ?」
「高校の時に、風のウワサで。神奈川に行っても、彰くんはやっぱり有名人だったから」
「…………」
なるほど。有名人とはつらい。よりにもよって一番知られたくない人の耳にまで、しっかり届いているとは。
仙道は嘆息した。
「まあ、そのウワサも間違ってないけど」
「やっぱり!」
仙道のせりふを遮るように声をあげた琴梨に、仙道は苦笑する。
「でも、ほんとに琴梨には手を出さないよ。最近はオレも落ち着いてるし」
琴梨が戸惑うように瞳を揺らして仙道をじっと見つめる。
仙道は大丈夫というように微笑んだ。
「それに、親同士は今も交流あるみたいだし、オレが琴梨に変なことしたらすぐ筒抜けだろ? そんな危険はおかさないって」
「うーん、そうだよね……。うん、いいよ。じゃあ彰くんを信じるね。だけど、変なことしたらすぐに彰くんのお母さんに言いつけるからね」
「はは。了解しました」
お手上げのポーズで仙道は承諾すると、にっこりと微笑んだ。
ジーンズのポケットを探って、そこから車のキーを取り出すと、ちゃりんと琴梨の目の前にかざしてみせる。
「では、早速車を取りに行きますか」
駐車場はすぐ近くだった。
都会では珍しい、12時間1000円のパーキング。
仙道は先に琴梨を車の助手席に座らせると、自分は駐車番号を確認して、精算機に向かった。
機械の案内にしたがって、お金を挿入口に滑り込ませる。
ウイーンという無機質な音を耳にいれながら、そっと自分の車にいる琴梨に目を向けた。
カバンの中身を探っているのか、俯いている横顔もほんとうに綺麗で、琴梨のまわりだけ世界が違ってしまっているようだ。
しばらくその横顔に見とれていると、『精算が完了しました』という機械音声のアナウンスが耳に飛び込んで来た。
仙道はハッと我に返ると、大きく深呼吸して車へと取って返した。
ドアにかけた手が、緊張して少し震えている。
(やれやれ。ほんとう、情けないな)