「結花、どうしたの？」

呟いた彼の細く綺麗な指が頬に触れる。
男の人のものだなんてまるで信じられない、そのしなやかな指。
けれどよくよく見れば少し骨ばっていて、手の平も何度もマメがつぶれてかたくなったみたいにとても厚い。
ちゃんとした、男の人のそれ。

「好きだよ、宗一郎」

遠くを見つめたまま、微かに頬を緩める。
わたしの頬をすべっていた手は一瞬驚いたように動きを止めて、けれどすぐにまた動きを再開した。
さっきよりもやわらかくなったそれは、そこから彼の優しさが染み入ってくるようで、とても心地よい。

「はは。なに、それ？」

彼の、囁くような笑い声が好き。

「突然だね」

深く落ち着いたテノールの声が好き。

「いつも思ってるよ」
「……ありがとう」

優しく瞳を細めた微笑が好き。

「俺も好きだよ、結花。この世界のなによりも……」
「うん……」

彼の熱い手の平が、わたしの冷え切った手を覆うように包む。
その温かさにホッとしたとき、もっと熱いぬくもりが唇に落ちた。