snow magic
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昨日は、神奈川では珍しいくらいの大雪だった。
部屋の窓から見える外の景色は、はらはらと舞い落ちる純白な雪にほのかな月の光と、それから街灯の明りが反射して、とても幻想的な眺めだった。
どれほどの時間、窓に寄り添ってそれを見ていても飽きないくらいに、綺麗で儚い眺め。
そしてその結果が――。
「結花~!! いったい今何時だと思ってるの~!? いい加減、起きなさ~い!!」
今日の、この寝坊だった……。
「いってきまーす」
結花は光速で学校へ行く準備を済ませると、逃げるようにして家を飛び出した。
多分この記録は最短だろう。なにせ、音速じゃなくて光速だ。光の速さだ。ご近所のADSL回線のネットワークよりも速い。ギネスの認定員がいたら、きっと永遠に破られることのない記録としてその一ページを飾ったことだろう。
だけど、当然その場にギネスの認定員などいるはずもなく、結花の背中から飛んでくるのは、『早く行け!』という母の冷たい怒声のみ。
結花はちょっぴり拗ねた気持ちで唇を尖らせた。
だけどそれも一瞬で、すぐに目の前に広がる白銀の世界に、あっと息を呑む。
「雪……積もったんだ……!」
昨日の夜、儚くきらめきながら舞い落ちていた雪たちは、今では地面いっぱいに広がって、元気良く太陽の光を反射している。
その光が強くて、眩しいくらいだ。
神奈川では何年かに一度しか見れないこの景色。
わくわくと高揚する気持ちに結花はひとり頬を緩めた。
(よし、今日は遠回りをして学校に行こう。うん、決めた)
どうせ今から急いだって遅刻は確定なのだ。ならば何時に学校に着こうと同じだろう。
弾んだ心を押し隠してわざと厳かに胸中で呟くと、結花はにんまりと悪戯に笑った。
誰も踏んでいない道の端の雪に、そおっと足を下ろす。
さくりという耳当たりのいい音とともに、足の裏に返ってくる少し水分を含んだ雪の感触。
途端に心が童心に返る。
結花はふるふると心の底から湧きあがってくる喜びをためると、その頂点で両腕をあげて一気に喜びを爆発させた。
道行く人が驚いてこちらを振り返ったけれど、そんなの気にしない。
だって、今日は雪なのだ。
何年ぶりかに雪が積もったのだ。
これではしゃがずにいられる通行人の方が、結花には不自然に映る。
結花は心の中でゆきやこんこ、あられやこんこと歌いながら、わざと誰にも踏まれていない場所を選んで足を踏み降ろした。
雪はやっぱり一番乗りに限る。
そんなことをしながら学校への道のりをのんびりと歩いていると、ちょっと先の道路に見知ったシルエットを見つけた。
心臓が勝手にどきんと跳ねる。
寒そうに背中を丸めてはいるけれど、それではごまかしきれないほどの長身。とぼとぼと気だるそうに歩く姿。広い肩越しにのぞく特徴的なつんつんヘアー。
見間違えるはずがない。あれは、同じクラスの有名人で、おまけに結花の想い人である仙道彰だ。
なんでこんな時間にこんなところを歩いているんだろう。今日は確かバスケ部の朝練のある日なのに。
(……ま、いっか)
仙道のことだ。どうせ寝坊からの朝練サボりだろう。
これはきっと同じクラスの苦労人・越野宏明がうるさいんだろうな。そんなことを考えながら、結花はその場にしゃがみ込んだ。
とりあえず、仙道に朝の挨拶をしなくては。
鼻歌交じりに足元の雪をかき集めて、おにぎりの要領でこぶし大の大きさにそれを握ると、大きく振りかぶった。
「せんど~っ!」
名前を呼んで、
部屋の窓から見える外の景色は、はらはらと舞い落ちる純白な雪にほのかな月の光と、それから街灯の明りが反射して、とても幻想的な眺めだった。
どれほどの時間、窓に寄り添ってそれを見ていても飽きないくらいに、綺麗で儚い眺め。
そしてその結果が――。
「結花~!! いったい今何時だと思ってるの~!? いい加減、起きなさ~い!!」
今日の、この寝坊だった……。
「いってきまーす」
結花は光速で学校へ行く準備を済ませると、逃げるようにして家を飛び出した。
多分この記録は最短だろう。なにせ、音速じゃなくて光速だ。光の速さだ。ご近所のADSL回線のネットワークよりも速い。ギネスの認定員がいたら、きっと永遠に破られることのない記録としてその一ページを飾ったことだろう。
だけど、当然その場にギネスの認定員などいるはずもなく、結花の背中から飛んでくるのは、『早く行け!』という母の冷たい怒声のみ。
結花はちょっぴり拗ねた気持ちで唇を尖らせた。
だけどそれも一瞬で、すぐに目の前に広がる白銀の世界に、あっと息を呑む。
「雪……積もったんだ……!」
昨日の夜、儚くきらめきながら舞い落ちていた雪たちは、今では地面いっぱいに広がって、元気良く太陽の光を反射している。
その光が強くて、眩しいくらいだ。
神奈川では何年かに一度しか見れないこの景色。
わくわくと高揚する気持ちに結花はひとり頬を緩めた。
(よし、今日は遠回りをして学校に行こう。うん、決めた)
どうせ今から急いだって遅刻は確定なのだ。ならば何時に学校に着こうと同じだろう。
弾んだ心を押し隠してわざと厳かに胸中で呟くと、結花はにんまりと悪戯に笑った。
誰も踏んでいない道の端の雪に、そおっと足を下ろす。
さくりという耳当たりのいい音とともに、足の裏に返ってくる少し水分を含んだ雪の感触。
途端に心が童心に返る。
結花はふるふると心の底から湧きあがってくる喜びをためると、その頂点で両腕をあげて一気に喜びを爆発させた。
道行く人が驚いてこちらを振り返ったけれど、そんなの気にしない。
だって、今日は雪なのだ。
何年ぶりかに雪が積もったのだ。
これではしゃがずにいられる通行人の方が、結花には不自然に映る。
結花は心の中でゆきやこんこ、あられやこんこと歌いながら、わざと誰にも踏まれていない場所を選んで足を踏み降ろした。
雪はやっぱり一番乗りに限る。
そんなことをしながら学校への道のりをのんびりと歩いていると、ちょっと先の道路に見知ったシルエットを見つけた。
心臓が勝手にどきんと跳ねる。
寒そうに背中を丸めてはいるけれど、それではごまかしきれないほどの長身。とぼとぼと気だるそうに歩く姿。広い肩越しにのぞく特徴的なつんつんヘアー。
見間違えるはずがない。あれは、同じクラスの有名人で、おまけに結花の想い人である仙道彰だ。
なんでこんな時間にこんなところを歩いているんだろう。今日は確かバスケ部の朝練のある日なのに。
(……ま、いっか)
仙道のことだ。どうせ寝坊からの朝練サボりだろう。
これはきっと同じクラスの苦労人・越野宏明がうるさいんだろうな。そんなことを考えながら、結花はその場にしゃがみ込んだ。
とりあえず、仙道に朝の挨拶をしなくては。
鼻歌交じりに足元の雪をかき集めて、おにぎりの要領でこぶし大の大きさにそれを握ると、大きく振りかぶった。
「せんど~っ!」
名前を呼んで、
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