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どきりと、胸を刺された思いになる。
「あ、えと……」
答えに窮する伊織に、仙道が言葉を続ける。
「オレ、何かした?」
伊織は反射的に首を振った。
違う。仙道が悪いんじゃない。仙道は何もしてない。
(わたし……わたしが……っ!)
伊織は耳を塞いでぎゅっと目をつぶった。
よみがえってくる、あの時。
恐怖と絶望と混乱が、伊織の体を包み込む。
嫌だ。嫌。怖い。またあの時に戻りたくない。嫌。
「……やっ!」
伊織は拒絶するように小さく叫んだ。
そのとき、耳を塞いでいた手をぐっと掴まれた。
驚いて見上げると、そこには仙道の真剣な表情があった。
まっすぐに、伊織の内側を全て見透かしてしまうような瞳と視線がぶつかって、伊織は怯えたように顔を背ける。
「いやっ!」
「伊織ちゃん!」
仙道が震える伊織の体をぎゅっと抱きしめた。
がしゃんと自転車が倒れた音が、夜の静寂(しじま)に響き渡る。
「伊織ちゃん。お願い、ちゃんと考えて。逃げないで。どうしてオレを避けるの? 伊織ちゃん!」
「やっ、やだあ……!」
「オレが、オレが怖いんじゃないでしょ? オレを見ると……」
仙道がそこでぐっと言葉を詰まらせた。
次の言葉を言えば、伊織をどん底まで苦しめることになる。
でも。そうだとしても。
苦しそうに顔をゆがめると、仙道は唇を噛み締めた。
決意を固め、自分を奮い立たせるようにして再び口を開く。
伊織の体を抱きしめる腕に、力を込める。
「オレを見ると、テニスを思い出してつらいんでしょ? だから、オレを避けるんでしょ、伊織ちゃん」
「いやあっ!」
伊織が心から怯えきったような叫び声をあげた。
全身を震え上がらせて青ざめる伊織を、仙道は安心させるようにぎゅっと抱きしめる。
そのまま伊織の反応を待つように、仙道は強く瞳を閉じる。
腕の中ですすり泣く伊織に、仙道の表情が苦悶にゆがめられていく。
「伊織ちゃん……」
「違うの……彰さんは、悪くない……! だって、わたし、顔向けできない……! 約束も、まも、れなく……って。なん、にも……なく、なって……」
「うん」
しゃくりあげるたびに震える背中を、仙道は優しく撫でさする。
「こんなふ、に、あきらさんと……会う……はずじゃな、かったの……に! わたし、わ、たし……!」
「うん」
「テニ……スも、まだ、あきらめ……つか、なく……って」
「うん……!」
「あ、えと……」
答えに窮する伊織に、仙道が言葉を続ける。
「オレ、何かした?」
伊織は反射的に首を振った。
違う。仙道が悪いんじゃない。仙道は何もしてない。
(わたし……わたしが……っ!)
伊織は耳を塞いでぎゅっと目をつぶった。
よみがえってくる、あの時。
恐怖と絶望と混乱が、伊織の体を包み込む。
嫌だ。嫌。怖い。またあの時に戻りたくない。嫌。
「……やっ!」
伊織は拒絶するように小さく叫んだ。
そのとき、耳を塞いでいた手をぐっと掴まれた。
驚いて見上げると、そこには仙道の真剣な表情があった。
まっすぐに、伊織の内側を全て見透かしてしまうような瞳と視線がぶつかって、伊織は怯えたように顔を背ける。
「いやっ!」
「伊織ちゃん!」
仙道が震える伊織の体をぎゅっと抱きしめた。
がしゃんと自転車が倒れた音が、夜の静寂(しじま)に響き渡る。
「伊織ちゃん。お願い、ちゃんと考えて。逃げないで。どうしてオレを避けるの? 伊織ちゃん!」
「やっ、やだあ……!」
「オレが、オレが怖いんじゃないでしょ? オレを見ると……」
仙道がそこでぐっと言葉を詰まらせた。
次の言葉を言えば、伊織をどん底まで苦しめることになる。
でも。そうだとしても。
苦しそうに顔をゆがめると、仙道は唇を噛み締めた。
決意を固め、自分を奮い立たせるようにして再び口を開く。
伊織の体を抱きしめる腕に、力を込める。
「オレを見ると、テニスを思い出してつらいんでしょ? だから、オレを避けるんでしょ、伊織ちゃん」
「いやあっ!」
伊織が心から怯えきったような叫び声をあげた。
全身を震え上がらせて青ざめる伊織を、仙道は安心させるようにぎゅっと抱きしめる。
そのまま伊織の反応を待つように、仙道は強く瞳を閉じる。
腕の中ですすり泣く伊織に、仙道の表情が苦悶にゆがめられていく。
「伊織ちゃん……」
「違うの……彰さんは、悪くない……! だって、わたし、顔向けできない……! 約束も、まも、れなく……って。なん、にも……なく、なって……」
「うん」
しゃくりあげるたびに震える背中を、仙道は優しく撫でさする。
「こんなふ、に、あきらさんと……会う……はずじゃな、かったの……に! わたし、わ、たし……!」
「うん」
「テニ……スも、まだ、あきらめ……つか、なく……って」
「うん……!」