11
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
伊織は一気にそこまで言い切ると、荒くなった息を整えるように肩を大きく上下させた。
その拍子に涙が一滴瞳から零れ落ちたのを、伊織は乱暴に手の平で拭う。
自分なんかのために、仙道に貴重な時間を使って欲しくなかった。
仙道は、自分とは違うのに。今も将来を期待されるバスケ選手なのに……!
伊織は興奮して真っ赤な顔でキッと仙道を見た。
静まり返った体育館の中、息がつまるような睨み合いを続ける二人。
ふいに、仙道が笑い声を上げた。
今度は伊織がそれに驚いてぎょっと身を引いた。
「な、なにがおかしいんですか」
「ああ、違う違う、ごめん伊織ちゃん、そうじゃないんだ。おかしいんじゃなくて、嬉しくて」
仙道は目尻に浮かんだ涙を拭いながら、慌てたように謝った。
その言葉に、伊織が眉間にしわを寄せる。
「嬉しい……?」
「うん。伊織ちゃん、なんか初めてオレとまともにしゃべってくれた気がする」
「しゃべるっていうか、怒ってるんですけど」
「わかってるよ。でも嬉しくって……はは!」
「…………」
まだ笑いやまない仙道に、伊織が難しい顔で黙り込んだ。
仙道はそれをみて、にこりと微笑む。
「伊織ちゃん大丈夫だよ、安心して? オレ、ちゃんと練習してるから」
「え?」
伊織が驚いたように顔を上げた。
練習してる? いったいいつ?
とても仙道にそんな時間があるようには思えない。
ますます顔をしかめる伊織に、仙道は目を細めて微笑んだ。
「ほんとうだよ。昨日も一昨日もその前の日も、ここに来てるときはいつもちゃんと練習してる。……だって、オレがバスケをないがしろにしたら、伊織ちゃん悲しむでしょ?」
「そ、れは……そうですけど……」
その言葉に、伊織は一瞬虚を衝かれたようにうろたえた。
が、すぐに自分を取り戻して、拗ねたように反論する。
「じゃあいったいいつどこで練習してるって言うんですか!」
「途中駅で近くにコートがある場所があってさ。そこでここに来る前と、来た後にやってるよ」
今日はやって来なかったけどね、なんて笑いながら言う仙道に、伊織は呆気に取られた。
ここに来る前と、来た後……!?
来る前はともかく、来た後だなんて確実に二十時以降だ。少なく見積もって一時間練習したとしても二十一時。それから家に帰って寝て朝練に間に合うように起きて学校に行って、じゃあろくに睡眠時間もとれていない。
それに思い至って、伊織は心配げに声をあげる。
「なっ! それじゃあ、彰さん体壊しちゃうじゃないですか!」
「はは。オレ、そんなにやわじゃないよ」
言って、仙道は膝を曲げて伊織の目線に自分の目線を合わせる。
「でもさ、伊織ちゃん。そんなに力いっぱいオレのこと嫌がってるのに、そんなにオレのこと心配してくれるなんて、やっぱり優しいね。好きだよ」
唐突なその言葉に、伊織の全身が真っ赤に染まる。
「なっ!」
「あ、赤くなった! あーもー、やっぱりかわいいなーもー! 抱きしめていい?」
「だ、だめだめだめ! 何言ってるんですか! それに大体、ひとりじゃろくな練習なんてできないじゃないですか」
「うん。だから明日はちゃんと部活出るつもりだから、今日は一緒に帰ろう、伊織ちゃん」
仙道の真剣な瞳が、まっすぐに伊織の体を射抜く。
伊織は居心地が悪くなって、視線をそらした。
その拍子に涙が一滴瞳から零れ落ちたのを、伊織は乱暴に手の平で拭う。
自分なんかのために、仙道に貴重な時間を使って欲しくなかった。
仙道は、自分とは違うのに。今も将来を期待されるバスケ選手なのに……!
伊織は興奮して真っ赤な顔でキッと仙道を見た。
静まり返った体育館の中、息がつまるような睨み合いを続ける二人。
ふいに、仙道が笑い声を上げた。
今度は伊織がそれに驚いてぎょっと身を引いた。
「な、なにがおかしいんですか」
「ああ、違う違う、ごめん伊織ちゃん、そうじゃないんだ。おかしいんじゃなくて、嬉しくて」
仙道は目尻に浮かんだ涙を拭いながら、慌てたように謝った。
その言葉に、伊織が眉間にしわを寄せる。
「嬉しい……?」
「うん。伊織ちゃん、なんか初めてオレとまともにしゃべってくれた気がする」
「しゃべるっていうか、怒ってるんですけど」
「わかってるよ。でも嬉しくって……はは!」
「…………」
まだ笑いやまない仙道に、伊織が難しい顔で黙り込んだ。
仙道はそれをみて、にこりと微笑む。
「伊織ちゃん大丈夫だよ、安心して? オレ、ちゃんと練習してるから」
「え?」
伊織が驚いたように顔を上げた。
練習してる? いったいいつ?
とても仙道にそんな時間があるようには思えない。
ますます顔をしかめる伊織に、仙道は目を細めて微笑んだ。
「ほんとうだよ。昨日も一昨日もその前の日も、ここに来てるときはいつもちゃんと練習してる。……だって、オレがバスケをないがしろにしたら、伊織ちゃん悲しむでしょ?」
「そ、れは……そうですけど……」
その言葉に、伊織は一瞬虚を衝かれたようにうろたえた。
が、すぐに自分を取り戻して、拗ねたように反論する。
「じゃあいったいいつどこで練習してるって言うんですか!」
「途中駅で近くにコートがある場所があってさ。そこでここに来る前と、来た後にやってるよ」
今日はやって来なかったけどね、なんて笑いながら言う仙道に、伊織は呆気に取られた。
ここに来る前と、来た後……!?
来る前はともかく、来た後だなんて確実に二十時以降だ。少なく見積もって一時間練習したとしても二十一時。それから家に帰って寝て朝練に間に合うように起きて学校に行って、じゃあろくに睡眠時間もとれていない。
それに思い至って、伊織は心配げに声をあげる。
「なっ! それじゃあ、彰さん体壊しちゃうじゃないですか!」
「はは。オレ、そんなにやわじゃないよ」
言って、仙道は膝を曲げて伊織の目線に自分の目線を合わせる。
「でもさ、伊織ちゃん。そんなに力いっぱいオレのこと嫌がってるのに、そんなにオレのこと心配してくれるなんて、やっぱり優しいね。好きだよ」
唐突なその言葉に、伊織の全身が真っ赤に染まる。
「なっ!」
「あ、赤くなった! あーもー、やっぱりかわいいなーもー! 抱きしめていい?」
「だ、だめだめだめ! 何言ってるんですか! それに大体、ひとりじゃろくな練習なんてできないじゃないですか」
「うん。だから明日はちゃんと部活出るつもりだから、今日は一緒に帰ろう、伊織ちゃん」
仙道の真剣な瞳が、まっすぐに伊織の体を射抜く。
伊織は居心地が悪くなって、視線をそらした。