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「まあね」
昨日は結局あのまま伊織に逃げられてしまい、仙道は伊織と一緒に帰ることができなかった。
おまけにライバルの宗一郎には宣戦布告をし返されてしまうし、状況としてはもう最悪だ。
伊織はおそらく今は宗一郎が好きだ。悔しいがそれには仙道も気付いている。
だからこそ、宗一郎を牽制したというのに。
(神だったら、ひるんで諦めてくれると思ったのにな……)
とんだ計算違いだった。優男に見えて、意外に芯が強い。
もちろん宗一郎だって強豪校のレギュラーを勝ち取った男だ。優しいだけではやってられないとは思っていたが、あんなに根性があるとは……。
なにはともあれ、とにかく伊織の心を開かなければ自分にはどう考えても勝ち目はない。
一日でも早く普通に話せるようになれば、伊織の心を取り戻すことができるかもしれない。
自信があるわけではなかったが、せっかくまた逢えたのにこんなことで伊織のことを諦めるのだけは絶対に嫌だった。
「まあね、じゃねえだろ! いい加減部活に来いよ! 仙道はどうしたって監督に怒られる俺の身にもなってくれよな……」
越野が心底嫌そうに息を吐き出した。
そんな越野をすまなそうに見つめて、仙道が言う。
「ごめん、越野。明日はちゃんと部活に出るから、今日は行かせて」
いつも飄々としている仙道に真剣に頼み込まれて、越野は驚いたような表情を見せる。
しばらく根競べのように仙道を見つめたあと、越野は観念して大きく息を吐き出した。
「わかった。わかったよ。ったく、明日はちゃんと出ろよ!? ――そういえばお前、今まで遊んでた女たちもあれから全部手を切ったんだって? 本気の子ができたからごめんって言われたってそこらじゅうの女が嘆いてたぜ」
「はは。もともと伊織ちゃんがいなくなっちゃってヤケ起こしてただけだからね。彼女たちには悪いけど、伊織ちゃんがいてくれれば他に何もいらないから」
恥ずかしい事を臆面もなくさらりと言ってのける仙道に、ああそうかよと越野が呆れたように半眼した。
「そういや、あの子と連絡が取れなくなってからだもんな、お前の女遊び。ここだけの話、あの頃のお前、ほんと辛そうで見てらんなかったぜ……」
その当時のことを思い出して、越野は目を細めた。
入学してからずっと仙道と仲が良かった越野は、仙道に中学からの約束の女の子がいたことを知っていた。一年の秋頃に、その子と急に連絡がとれなくなってしまったことも。
あの頃の仙道はほんとうにひどかった。
いつも飄々として心のうちなんて滅多に見せないのに、無理をしているのが見え見えで行動のひとつひとつをとっても捨て鉢で。いつかこいつとんでもない事しでかすんじゃないだろうかと、越野は心配で片時も目を離せなかった。
渋い顔で黙り込む越野を見て、仙道が困ったように眉尻を下げる。
「はは、そっか」
「にしても、実際にその子を見たけど、そんなにお前が入れ込むような子かぁ? 容姿だってそんなに目を引くわけじゃないし。かわいさでいったら、あの三年のマネージャーとか、神の幼馴染みの方が上だと思うけどね」
「いいんだよ、伊織ちゃんの良さはオレだけがわかってれば。むしろお前わかっちゃダメ!」
「べっつにとらねえから安心しろよ。お前、ほんとうにあの子のことが好きなんだな。……まあ、お前が本気になってオトせない女なんていないだろ?」
「そんなことないよ」
越野のその言葉に、仙道はまいったような表情を浮かべて目を伏せる。
「いるんだよね、近くに強敵が」
「へえ? ……まあ、なんにせよせっかく逢えたんだろ? 今度は後悔しないように頑張れよ」
にっと笑って言う越野に、仙道が目を細めて笑った。
「はは、サンキュ! じゃ、行ってくる」
「おう。気をつけろよ」
気遣いの言葉をかけてくる越野に仙道は手を振って答えると、教室を出た。
監督にどんなに怒られたとしても、今は伊織が最優先だ。これだけは譲ることはできない。
昨日は結局あのまま伊織に逃げられてしまい、仙道は伊織と一緒に帰ることができなかった。
おまけにライバルの宗一郎には宣戦布告をし返されてしまうし、状況としてはもう最悪だ。
伊織はおそらく今は宗一郎が好きだ。悔しいがそれには仙道も気付いている。
だからこそ、宗一郎を牽制したというのに。
(神だったら、ひるんで諦めてくれると思ったのにな……)
とんだ計算違いだった。優男に見えて、意外に芯が強い。
もちろん宗一郎だって強豪校のレギュラーを勝ち取った男だ。優しいだけではやってられないとは思っていたが、あんなに根性があるとは……。
なにはともあれ、とにかく伊織の心を開かなければ自分にはどう考えても勝ち目はない。
一日でも早く普通に話せるようになれば、伊織の心を取り戻すことができるかもしれない。
自信があるわけではなかったが、せっかくまた逢えたのにこんなことで伊織のことを諦めるのだけは絶対に嫌だった。
「まあね、じゃねえだろ! いい加減部活に来いよ! 仙道はどうしたって監督に怒られる俺の身にもなってくれよな……」
越野が心底嫌そうに息を吐き出した。
そんな越野をすまなそうに見つめて、仙道が言う。
「ごめん、越野。明日はちゃんと部活に出るから、今日は行かせて」
いつも飄々としている仙道に真剣に頼み込まれて、越野は驚いたような表情を見せる。
しばらく根競べのように仙道を見つめたあと、越野は観念して大きく息を吐き出した。
「わかった。わかったよ。ったく、明日はちゃんと出ろよ!? ――そういえばお前、今まで遊んでた女たちもあれから全部手を切ったんだって? 本気の子ができたからごめんって言われたってそこらじゅうの女が嘆いてたぜ」
「はは。もともと伊織ちゃんがいなくなっちゃってヤケ起こしてただけだからね。彼女たちには悪いけど、伊織ちゃんがいてくれれば他に何もいらないから」
恥ずかしい事を臆面もなくさらりと言ってのける仙道に、ああそうかよと越野が呆れたように半眼した。
「そういや、あの子と連絡が取れなくなってからだもんな、お前の女遊び。ここだけの話、あの頃のお前、ほんと辛そうで見てらんなかったぜ……」
その当時のことを思い出して、越野は目を細めた。
入学してからずっと仙道と仲が良かった越野は、仙道に中学からの約束の女の子がいたことを知っていた。一年の秋頃に、その子と急に連絡がとれなくなってしまったことも。
あの頃の仙道はほんとうにひどかった。
いつも飄々として心のうちなんて滅多に見せないのに、無理をしているのが見え見えで行動のひとつひとつをとっても捨て鉢で。いつかこいつとんでもない事しでかすんじゃないだろうかと、越野は心配で片時も目を離せなかった。
渋い顔で黙り込む越野を見て、仙道が困ったように眉尻を下げる。
「はは、そっか」
「にしても、実際にその子を見たけど、そんなにお前が入れ込むような子かぁ? 容姿だってそんなに目を引くわけじゃないし。かわいさでいったら、あの三年のマネージャーとか、神の幼馴染みの方が上だと思うけどね」
「いいんだよ、伊織ちゃんの良さはオレだけがわかってれば。むしろお前わかっちゃダメ!」
「べっつにとらねえから安心しろよ。お前、ほんとうにあの子のことが好きなんだな。……まあ、お前が本気になってオトせない女なんていないだろ?」
「そんなことないよ」
越野のその言葉に、仙道はまいったような表情を浮かべて目を伏せる。
「いるんだよね、近くに強敵が」
「へえ? ……まあ、なんにせよせっかく逢えたんだろ? 今度は後悔しないように頑張れよ」
にっと笑って言う越野に、仙道が目を細めて笑った。
「はは、サンキュ! じゃ、行ってくる」
「おう。気をつけろよ」
気遣いの言葉をかけてくる越野に仙道は手を振って答えると、教室を出た。
監督にどんなに怒られたとしても、今は伊織が最優先だ。これだけは譲ることはできない。