11
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
そんな伊織を知ってか知らずか、宗一郎は余裕の笑みを浮かべて赤くなった伊織の鼻の頭をチョンとつつく。
「ほら、ここ真っ赤だよ。練習中によそ見しちゃ危ないよ、気をつけないと。赤みが引くまで、ちゃんとそのタオルで冷やしな」
「あ、ありがとうございます」
伊織はおとなしく宗一郎から受け取ったタオルを持って体育館出入り口横の隅へ移動すると、しゃがみこんで強打した顔全体を覆うようにタオルを乗っけた。
(やっぱり宗先輩は優しいな)
ぼんやりとそんな事を思って、伊織はタオルの下で小さく微笑む。
と、そのとき。
「いーおーりちゃん! かーえりましょっ、てあれ?」
仙道の声が体育館に響き渡った。
伊織がぎくりと体を強張らせるのと同時に、顔に乗せていたタオルが外される。
「わっ」
驚いて声をあげた伊織の目と、上から覗き込むようにしていた仙道の目がばっちり合った。
伊織は口許に苦笑を浮かべながら、視線をふいっと外す。
「あ、あきらさん……」
「わ、伊織ちゃん! 鼻のあたま赤いよ? どうしたの?」
「……なんでもありません」
伊織はすっくと立ち上がると仙道の手からタオルを奪い取り、練習中の信長の腕を引っ張ってばたばたと部室へと消えていった。
「あらら」
仙道は部室に駆け込む伊織の背中を残念そうに目で見送った。
その過程で宗一郎とまりあを見つけて、仙道はまりあに声をかける。
「まりあちゃんまりあちゃん。ちょっとちょっと」
来い来いと手招きすると、まりあは小動物のように小首をかしげてこちらへやってくる。
「どうしたんですか、仙道さん」
「伊織ちゃん、どうしたの? 鼻の頭っていうか顔が赤くなってたけど」
「ああ。よそ見しててノブくんの投げたボールが顔に直撃したんです」
「ええ!?」
仙道はぎょっと声を上げる。
「え、それで伊織ちゃん大丈夫なの!?」
「んー。仙道さんから元気に逃げたところを見ると、大丈夫なんだと思いますよ。伊織ちゃんってまりあと違ってけっこう頑丈だし」
「なるほど。まりあちゃんは見かけと違ってけっこう性格悪い?」
「あはは、会って間もないのにそんなこという仙道さんよりはいい子です」
「うーん、なるほどね……」
「ふふ」
まりあはつぼみが花開くかのようにふわりと笑う。
しかしその奥に隠された見えない棘を感じ取りながら、仙道もにこりと微笑み返す。
「まりあね、仙道さんには頑張ってもらわないと困るんです。だから、しっかりしてもらいたいなーって」
にっこり笑うまりあの後ろのほう、こちらをじっと見ている宗一郎の姿を瞳にいれ、仙道は得心がいった。
「利害が一致するってわけね」
「ほら、ここ真っ赤だよ。練習中によそ見しちゃ危ないよ、気をつけないと。赤みが引くまで、ちゃんとそのタオルで冷やしな」
「あ、ありがとうございます」
伊織はおとなしく宗一郎から受け取ったタオルを持って体育館出入り口横の隅へ移動すると、しゃがみこんで強打した顔全体を覆うようにタオルを乗っけた。
(やっぱり宗先輩は優しいな)
ぼんやりとそんな事を思って、伊織はタオルの下で小さく微笑む。
と、そのとき。
「いーおーりちゃん! かーえりましょっ、てあれ?」
仙道の声が体育館に響き渡った。
伊織がぎくりと体を強張らせるのと同時に、顔に乗せていたタオルが外される。
「わっ」
驚いて声をあげた伊織の目と、上から覗き込むようにしていた仙道の目がばっちり合った。
伊織は口許に苦笑を浮かべながら、視線をふいっと外す。
「あ、あきらさん……」
「わ、伊織ちゃん! 鼻のあたま赤いよ? どうしたの?」
「……なんでもありません」
伊織はすっくと立ち上がると仙道の手からタオルを奪い取り、練習中の信長の腕を引っ張ってばたばたと部室へと消えていった。
「あらら」
仙道は部室に駆け込む伊織の背中を残念そうに目で見送った。
その過程で宗一郎とまりあを見つけて、仙道はまりあに声をかける。
「まりあちゃんまりあちゃん。ちょっとちょっと」
来い来いと手招きすると、まりあは小動物のように小首をかしげてこちらへやってくる。
「どうしたんですか、仙道さん」
「伊織ちゃん、どうしたの? 鼻の頭っていうか顔が赤くなってたけど」
「ああ。よそ見しててノブくんの投げたボールが顔に直撃したんです」
「ええ!?」
仙道はぎょっと声を上げる。
「え、それで伊織ちゃん大丈夫なの!?」
「んー。仙道さんから元気に逃げたところを見ると、大丈夫なんだと思いますよ。伊織ちゃんってまりあと違ってけっこう頑丈だし」
「なるほど。まりあちゃんは見かけと違ってけっこう性格悪い?」
「あはは、会って間もないのにそんなこという仙道さんよりはいい子です」
「うーん、なるほどね……」
「ふふ」
まりあはつぼみが花開くかのようにふわりと笑う。
しかしその奥に隠された見えない棘を感じ取りながら、仙道もにこりと微笑み返す。
「まりあね、仙道さんには頑張ってもらわないと困るんです。だから、しっかりしてもらいたいなーって」
にっこり笑うまりあの後ろのほう、こちらをじっと見ている宗一郎の姿を瞳にいれ、仙道は得心がいった。
「利害が一致するってわけね」