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放課後。
午後練習も終わり、体育館には伊織、信長、宗一郎、まりあ、牧、小百合のお決まりのメンバーと、それからレギュラー陣少数が残っていた。
伊織は信長にパス出しをして、その練習に付き合っていた。
しかし、その心はもやもやと黒く沈んでいる。
その原因は仙道だった。
月曜日に仙道が学校に現れてからというもの、伊織はあれから毎日毎日部活終わりに待ち伏せをされていた。
もちろん、メールだって毎日送られてきている。一日五通はくだらない。
(ほんとうにもう、勘弁して欲しい……)
今日は木曜日。もし今日も仙道が現れたら、今日で四日目だ。
いくら会いに来ても、伊織は仙道と帰る気などさらさらない。
ないのだけれど、だからこそ余計に伊織は胸が痛んだ。
その理由は二つある。
まず一つ目は移動時間だ。
陵南から海南までの距離はそんなに遠くはないが、そこを結ぶ交通の便が悪いため、だいたい片道平均一時間はかかる。乗り合わせがうまくいったとしてもそれでも最低四十分。時間のサイクルが早い高校生にとっては、とてもじゃないが短いとはいえない所要時間だ。
そして二つ目。
むしろこっちが主な心痛の原因といってもいい。それは移動時間を考えても明らかな事実。
仙道は大切な部活の練習をつぶして伊織に会いに来ている。
それが伊織にとっては一番ダメージが大きかった。
伊織にとってテニスが大切だったように、仙道にとってバスケがどれほど大切であるのか、伊織には嫌というほどよくわかっている。
そんな仙道にバスケを犠牲にさせているというこの現状が、伊織の胸を締め付けてならなかった。
(彰さんには、一生懸命バスケを頑張って欲しいのに……)
はぁああと、伊織が盛大なため息をついたそのとき。
信長があぶないっと叫ぶ声が耳に届いた。
「え?」
顔を上げたときには遅かった。
視界がなんだかぶつぶつしたものでいっぱいになったかと思うと、バィンという音と共に、物凄い衝撃が顔面を襲った。
「~~~~!」
伊織は声もなく顔を押さえてその場にうずくまる。
「うわあああ、大丈夫か伊織!? すまん!!」
「だ、だいじょうぶ……」
左手は顔を押さえたまま、よろよろと右手をあげて答えてやると、慌てて駆け寄ってきた信長にがしっとそれを掴まれた。
切羽詰ったように必死にごめんごめんごめんと謝罪の言葉を繰り返す信長。
そのテンションに、残って自主練をしていたメンツがくすくすと笑い声を上げる。
「悪い伊織~! まさかよそ見してるなんて思ってなくて、思いっきり投げちまった! 大丈夫か!? 鼻もげてないか!? 目取れてないか!? 死ぬな~伊織~!!」
「これくらいで死ぬかっ!」
立ち上がって、大げさに叫ぶ信長の頭に伊織はゲンコツをお見舞いする。
「いてっ!」
「今のは余所見してたわたしが悪いのっ!」
「じゃあなんで殴るんだよ!」
「ノブが大げさだからでしょっ!」
「だってお前だってなんの間違いか一応女なんだから、顔に傷でも作ったら大変だろ!?」
「ちょっとなによそのいいか……ブッ!」
「その通りだよ、伊織ちゃん」
そんな声とともに、今度は伊織の顔になにか冷たいものが押し当てられた。
それを顔からどけて声の主を確認すると、宗一郎がやれやれといった表情で立っていた。
「そ、宗先輩!」
脳裏に公園で抱きしめられた映像が瞬時にフラッシュバックして、伊織のからだが途端に熱くなる。
午後練習も終わり、体育館には伊織、信長、宗一郎、まりあ、牧、小百合のお決まりのメンバーと、それからレギュラー陣少数が残っていた。
伊織は信長にパス出しをして、その練習に付き合っていた。
しかし、その心はもやもやと黒く沈んでいる。
その原因は仙道だった。
月曜日に仙道が学校に現れてからというもの、伊織はあれから毎日毎日部活終わりに待ち伏せをされていた。
もちろん、メールだって毎日送られてきている。一日五通はくだらない。
(ほんとうにもう、勘弁して欲しい……)
今日は木曜日。もし今日も仙道が現れたら、今日で四日目だ。
いくら会いに来ても、伊織は仙道と帰る気などさらさらない。
ないのだけれど、だからこそ余計に伊織は胸が痛んだ。
その理由は二つある。
まず一つ目は移動時間だ。
陵南から海南までの距離はそんなに遠くはないが、そこを結ぶ交通の便が悪いため、だいたい片道平均一時間はかかる。乗り合わせがうまくいったとしてもそれでも最低四十分。時間のサイクルが早い高校生にとっては、とてもじゃないが短いとはいえない所要時間だ。
そして二つ目。
むしろこっちが主な心痛の原因といってもいい。それは移動時間を考えても明らかな事実。
仙道は大切な部活の練習をつぶして伊織に会いに来ている。
それが伊織にとっては一番ダメージが大きかった。
伊織にとってテニスが大切だったように、仙道にとってバスケがどれほど大切であるのか、伊織には嫌というほどよくわかっている。
そんな仙道にバスケを犠牲にさせているというこの現状が、伊織の胸を締め付けてならなかった。
(彰さんには、一生懸命バスケを頑張って欲しいのに……)
はぁああと、伊織が盛大なため息をついたそのとき。
信長があぶないっと叫ぶ声が耳に届いた。
「え?」
顔を上げたときには遅かった。
視界がなんだかぶつぶつしたものでいっぱいになったかと思うと、バィンという音と共に、物凄い衝撃が顔面を襲った。
「~~~~!」
伊織は声もなく顔を押さえてその場にうずくまる。
「うわあああ、大丈夫か伊織!? すまん!!」
「だ、だいじょうぶ……」
左手は顔を押さえたまま、よろよろと右手をあげて答えてやると、慌てて駆け寄ってきた信長にがしっとそれを掴まれた。
切羽詰ったように必死にごめんごめんごめんと謝罪の言葉を繰り返す信長。
そのテンションに、残って自主練をしていたメンツがくすくすと笑い声を上げる。
「悪い伊織~! まさかよそ見してるなんて思ってなくて、思いっきり投げちまった! 大丈夫か!? 鼻もげてないか!? 目取れてないか!? 死ぬな~伊織~!!」
「これくらいで死ぬかっ!」
立ち上がって、大げさに叫ぶ信長の頭に伊織はゲンコツをお見舞いする。
「いてっ!」
「今のは余所見してたわたしが悪いのっ!」
「じゃあなんで殴るんだよ!」
「ノブが大げさだからでしょっ!」
「だってお前だってなんの間違いか一応女なんだから、顔に傷でも作ったら大変だろ!?」
「ちょっとなによそのいいか……ブッ!」
「その通りだよ、伊織ちゃん」
そんな声とともに、今度は伊織の顔になにか冷たいものが押し当てられた。
それを顔からどけて声の主を確認すると、宗一郎がやれやれといった表情で立っていた。
「そ、宗先輩!」
脳裏に公園で抱きしめられた映像が瞬時にフラッシュバックして、伊織のからだが途端に熱くなる。