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夢小説設定
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伊織は沈鬱な気分で体育館へと向かっていた。
いや、信長に連れてこられていると言ってもいい。
信長にぐいぐい背中を押され、伊織は自分の意思に反して体育館へと進んでしまう体をとどめようと必死で両足を踏ん張った。
まりあはその様子を楽しそうに眺めながら、時折声を出して笑っている。
「いーやーだー! 行きたくないっ!」
「行きたくないじゃねえだろっ! いいか、こういうのは最初の一回が肝心なんだよ。今日を逃したら、どんどん来るのが怖くなるんだぞ!」
「そんなのわかってるけど、嫌なものは嫌なの!」
「いい歳してわがまま言うんじゃねえっ! ほら、踏ん張るのよせ!」
「いい歳じゃないもん、わたしまだぴちぴちの15歳だもん誕生日12月だもん!」
「うっせえ、そんなこと聞いてねえ! いい加減踏ん張るのやめねえと抱っこするぞっ!」
「ぎゃー、ヘンタイー!」
「あはは。でもまりあは伊織ちゃんが来ないほうがいいな。ね、伊織ちゃん! このまま部活やめちゃってもいいよ?」
天使の笑顔でにっこり笑ってそう言うまりあに、伊織と信長がふたりして疲れたような顔を向ける。
「「…………」」
伊織はしばらく黙ってまりあを見つめた後、はあと息を吐き出した。
「ああ、なんか抵抗がバカらしく思えてきた……。ごめんノブ。ちゃんと自分で歩く。部活行く」
「ええ! なんで!?」
まりあががーんという表情で声を上げる。
それを受けて、信長も盛大なため息をつく。
「だな。もうまりあちゃん置いていこうぜ。なんか部活する前からオレ一気に疲れた」
「同感。まりあちゃんって心を開くと悪魔100%になるのね」
「ちょっとなによそれ! 二人ともひどくない!? まりあは自分の心に正直なだけだもん!」
「「そうですね」」
伊織と信長はこれまた仲良くユニゾンで返すと、すたすたと歩く足を速めた。
その後をまりあがなにやら文句を言いながら、必死で着いて来る。
体育館の出入り口前に来て、伊織は体が緊張した。
隣りにいた信長がそれに気付いて、伊織の背中をばしんと力強く叩く。
「いたっ!」
「大丈夫だよ。なんか問い詰められて困ったらオレが助けてやるから呼べ! 大声で!」
「助けてー! パーマン2号ー!」
「おまえ、オレが先に東京湾に沈めるぞ」
「いやん、こわいノブくん!」
「……そんだけ元気なら大丈夫だろ。開けるぞ?」
言って体育館の扉に手をかける信長。その背中に向けて、伊織はポツリと呟く。
「……ごめん、ノブ。ほんとは感謝してる。ありがと」
伊織のその言葉に、信長はくるりと振り返った。
伊織の目尻に浮かぶ涙を見て、その顔にばしんと自身のタオルを投げつける。
「いいったぁ!」
タオルが目にはいった! と猛抗議する伊織に、信長が呆れたように言い返す。
「あのなあ! お前が感謝してんのなんか言われなくてもちゃんとわかってから、お前はそうやっておちゃらけて返して心を強く保ってればいいんだよ! お礼を言って涙ぐむとかナシなんだからな、ほんと! もう、いい加減開けるぞ? 今お前がたとえば滝のように涙を流しててもオレはこのドア開けるからな!」
一息でそこまで言うと、信長は照れて赤くなった顔を隠すように勢いよく前を向いてドアを開けた。
勇気づけるように、まりあが伊織の腕に巻きついてくる。
(まりあちゃん、さっきまで部活辞めていいなんて言ってたのに……!)
伊織が感動してまりあに視線をやると、まりあはしょうがないわねええという感情を前面に押し出してにっこり微笑んだ。
優しいやらイジワルなんだかわからないその態度に、伊織は自然と笑みがこぼれる。
まりあはそれにフンッと照れたように息を吐き出してそっぽを向くと、伊織の腕に巻きついたまま前へ足を踏み出した。
いや、信長に連れてこられていると言ってもいい。
信長にぐいぐい背中を押され、伊織は自分の意思に反して体育館へと進んでしまう体をとどめようと必死で両足を踏ん張った。
まりあはその様子を楽しそうに眺めながら、時折声を出して笑っている。
「いーやーだー! 行きたくないっ!」
「行きたくないじゃねえだろっ! いいか、こういうのは最初の一回が肝心なんだよ。今日を逃したら、どんどん来るのが怖くなるんだぞ!」
「そんなのわかってるけど、嫌なものは嫌なの!」
「いい歳してわがまま言うんじゃねえっ! ほら、踏ん張るのよせ!」
「いい歳じゃないもん、わたしまだぴちぴちの15歳だもん誕生日12月だもん!」
「うっせえ、そんなこと聞いてねえ! いい加減踏ん張るのやめねえと抱っこするぞっ!」
「ぎゃー、ヘンタイー!」
「あはは。でもまりあは伊織ちゃんが来ないほうがいいな。ね、伊織ちゃん! このまま部活やめちゃってもいいよ?」
天使の笑顔でにっこり笑ってそう言うまりあに、伊織と信長がふたりして疲れたような顔を向ける。
「「…………」」
伊織はしばらく黙ってまりあを見つめた後、はあと息を吐き出した。
「ああ、なんか抵抗がバカらしく思えてきた……。ごめんノブ。ちゃんと自分で歩く。部活行く」
「ええ! なんで!?」
まりあががーんという表情で声を上げる。
それを受けて、信長も盛大なため息をつく。
「だな。もうまりあちゃん置いていこうぜ。なんか部活する前からオレ一気に疲れた」
「同感。まりあちゃんって心を開くと悪魔100%になるのね」
「ちょっとなによそれ! 二人ともひどくない!? まりあは自分の心に正直なだけだもん!」
「「そうですね」」
伊織と信長はこれまた仲良くユニゾンで返すと、すたすたと歩く足を速めた。
その後をまりあがなにやら文句を言いながら、必死で着いて来る。
体育館の出入り口前に来て、伊織は体が緊張した。
隣りにいた信長がそれに気付いて、伊織の背中をばしんと力強く叩く。
「いたっ!」
「大丈夫だよ。なんか問い詰められて困ったらオレが助けてやるから呼べ! 大声で!」
「助けてー! パーマン2号ー!」
「おまえ、オレが先に東京湾に沈めるぞ」
「いやん、こわいノブくん!」
「……そんだけ元気なら大丈夫だろ。開けるぞ?」
言って体育館の扉に手をかける信長。その背中に向けて、伊織はポツリと呟く。
「……ごめん、ノブ。ほんとは感謝してる。ありがと」
伊織のその言葉に、信長はくるりと振り返った。
伊織の目尻に浮かぶ涙を見て、その顔にばしんと自身のタオルを投げつける。
「いいったぁ!」
タオルが目にはいった! と猛抗議する伊織に、信長が呆れたように言い返す。
「あのなあ! お前が感謝してんのなんか言われなくてもちゃんとわかってから、お前はそうやっておちゃらけて返して心を強く保ってればいいんだよ! お礼を言って涙ぐむとかナシなんだからな、ほんと! もう、いい加減開けるぞ? 今お前がたとえば滝のように涙を流しててもオレはこのドア開けるからな!」
一息でそこまで言うと、信長は照れて赤くなった顔を隠すように勢いよく前を向いてドアを開けた。
勇気づけるように、まりあが伊織の腕に巻きついてくる。
(まりあちゃん、さっきまで部活辞めていいなんて言ってたのに……!)
伊織が感動してまりあに視線をやると、まりあはしょうがないわねええという感情を前面に押し出してにっこり微笑んだ。
優しいやらイジワルなんだかわからないその態度に、伊織は自然と笑みがこぼれる。
まりあはそれにフンッと照れたように息を吐き出してそっぽを向くと、伊織の腕に巻きついたまま前へ足を踏み出した。